秋は新そばの季節です!
農林水産省の調査によると、日本ではそばは年間約12~14万トン消費されており、寿司、天ぷらと並ぶ代表的な日本料理です。季節問わず食べられていることから、そばは日本の食生活には欠かせないと言ってよいでしょう。
そこで本記事では、そばにまつわる豆知識や日本三大蕎麦のお膝元ほかで開催される、新そば祭りについて解説します。
そばの歴史
そばは、中国の三江地域(雲南省・四川省・東チベットの境界領域)から世界各地へ広まったとの説が有力です。
日本でそばの栽培が始まったのは縄文時代。高知県佐川町の遺跡の地層では、9000年以上前のそばの花粉が見つかっており、当時からそばが栽培されていたようです。
しかし、今日のように麺にして食べるようになったのは、江戸時代頃からとされています。それまでは、粒のまま粥として食べたり、粉をそばがきや饅頭にするなどして食べられていました。
麺状のそばが登場するのがいつかははっきりしていませんが、長野県の古刹・定勝寺に残された『定勝寺文書』に1574(天正2)年、仏殿の改修工事の際に「そばきり」を振る舞ったという記述があり、これが最古の記録です。
そばが寺社門前の名物なのはなぜ?
前述の定勝寺でそばが振舞われたというエピソードも物語っていますが、寺社とそばは古くから深い関係にあります。そばは五穀に含まれないため、僧侶にとっては精進料理として親しまれていたのです。
大衆がその味に親しむようになったのは、1467年の応仁の乱以降との説が有力です。京都禅林(臨済宗)の禅僧たちが疎開先の寺社で作ったそばは、やがて参拝客へ振る舞う「門前そば」と呼ばれるようになり人気になりました。現在でもお寺の近くには、そばの名店が多いと思いませんか?
例えば東京・調布の深大寺そば。深大寺に寄進されたそばを参拝客に振舞ったのが最初とされ、良質のそばと豊かな湧き水の得られる調布の土地柄から、うまいそばとの評判がたち、将軍家にもおさめられていたそうです。
深大寺そばまつり
この投稿をInstagramで見る
深大寺では新そばの季節に、毎年「深大寺そばまつり」が開かれています。そば職人が腕を振るったそばが奉納され、日本唯一の「そば守観音」の供養式なども行われます。市内ではそばの食べ歩きイベントも開かれています。
日時:2023年未定(2022年は11月下旬開催)
場所:深大寺周辺
なんで江戸はそばで関西はうどん?
一般的に、関東人はそば派で、関西人はうどん派と言われますが、それはなぜなのでしょうか?ステレオタイプではありますが、確かに「江戸っ子」といえば、粋にそばを啜るイメージがあります。
江戸時代初期には、江戸でもうどんとそばの人気は変わらなかったようです。
しかし中期の頃になると江戸ではそばの人気が高まります。山梨や栃木などのそばの産地が近いことで原料が得やすかったことが一つ。先に述べたように、切りそばが15世紀ごろに誕生し、17世紀ごろには大衆食として、うどん屋でそばが出されるようになります。18世紀ごろには濃口醤油が普及し、蕎麦つゆが格段に美味しくなります。
江戸の独身男性たちがそば文化を磨いた
こうして人気が高まり、店舗も増えると、「そば通」と呼ばれる人々が出現します。参勤交代や出稼ぎなどで単身男性の多かった江戸では外食文化が盛ん。凝り性でオタク気質の男性たちによって、極めて趣味性の高い食べ物に洗練されていったのです。
また、江戸っ子の気質として、挙げられる「せっかち」も、茹で時間が短いそばの人気を後押ししたと言われています。さらに、江戸っ子といえば初物好き。初物を食べると75日長生きするとの言われもあり、新そばは、初夏の初カツオと並んで人気だったそうです。
「日本三大そば」の新そば祭り
日本三大蕎麦というと、岩手県のわんこそば、長野県の戸隠そば、島根県の出雲そばが有名です。それぞれの産地で新そばまつりが開催されますよ!
戸隠新そば祭
この投稿をInstagramで見る
戸隠新そば祭りは、大地の恵みに感謝を表すために、秋の新そばを戸隠の大神様に奉納するお祭りです。
10月末に不要となったそば道具やそば玉に感謝を込めて神事を執り行います。戸隠神社奥社にて行われる戸隠蕎麦献納祭では、こね・のし・切りの三役の手によって作られたそばが献納される、厳かな神事です。また、戸隠新そば祭りの一環として秋の新そばを使ったさるそばの半ざる食べ歩きも開催されます。
日時:2023年10月31日(火)~11月1日(水)
場所:戸隠神社中社(長野県長野市戸隠中社3506)鳥居前特設ステージほか
出雲新そばまつり
この投稿をInstagramで見る
出雲新そばまつりは、島根県仁多郡奥出雲町の横田地域周辺で毎年開催される新そば祭りです。毎年数多くの人が県内外から参加しています。
お祭りの開催時期はそばの収穫時期でもあり、一年の中でも最もそばがおいしい時期です。開催中は、屋台や手打ちそばの実演販売、そば打ち体験のほか特産品販売もあり賑やかとなります。
日時:2023年11月26日(日)
場所:朱鷺会館(島根県出雲市西新町2丁目2456-4)
西和賀新そばまつり
西和賀新そばまつりに行ってきた。1時間待ちで食べた限定蕎麦づくしセット美味かったよ😋 #iwate#kuishinbo pic.twitter.com/Btg0Jyimqd
— 亜理沙 (@ArissaKa) November 3, 2019
岩手の三大そばは「わんこそば」ですが、新そばまつりはないので、同じ岩手県から西和賀新そばまつりを紹介します。毎年10月中旬に岩手県中西部にある西和賀町のにしわがそば街道で開催されるお祭りです。西和賀町の有名そば店5店舗が参加し、新そば堪能セットや西和賀そば御膳など新そば祭り限定メニューが提供されます。
西和賀町ではそばの生産に力を入れている町として有名です。西和賀産業公社の調べによると、2022年度の西和賀そばの栽培状況は作付面積が約33ヘクタール、収穫量は約64トンとなっています。
日程:2023年10月14日(土)〜22日(日)
場所:西和賀町内(岩手県和賀郡)
ちなみに、毎年11月には盛岡市で全日本わんこそば選手権が開かれています。
まだまだあるぞ!新そば祭り
三大そばのお膝元以外にも、新そば祭りはあります!
信州・松本そば祭り
この投稿をInstagramで見る
信州・松本そば祭りは、長野県内を始め全国各地のそば打ち団体やそば処が集結し、信州そばとその文化を通して交流を深めるお祭りです。そば打ち名人大会も開かれます。
日時:2023年10月7日(土)~10月9日(月)
場所:長野県松本市 松本城公園
「信州・松本そば祭り」は2023年、すでに終了してしまいましたが、長野県内では、他にも山ノ内町「法印さんと新そばまつり」(10月下旬)、須坂市「信州須坂とよおか新そば祭り」(11月)など各地で新そばまつりが開かれます。
山都そば&観光物産まつり
この投稿をInstagramで見る
山都そば&観光物産祭りは、山都そばを中心に地元の名産品を楽しめるお祭りです。新そばの味比べやワークショップ、ステージパフォーマンスなどイベントが盛り沢山となっています。
日時:2023年10月14日(土)~10月15日(日)
場所:福島県喜多方市山都町広野 山都みちくさ通り
まとめ
新そばとは、収穫されてからおおよそ1~2ヶ月で提供されるそばを指します。そばは7月から8月にかけて種をまき、10月から12月が収穫期です。
そば特有の風味と、色・香りが特別優れているのは新そばならではとなります。今年の秋は、各地で行われる新そば祭りや新そばの食べ歩きに出かけてみてはいかがでしょうか。