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芸能の里の心に触れるおまつり 白鳥神社大神楽

更新日:2021/12/20 よう
芸能の里の心に触れるおまつり 白鳥神社大神楽

(写真:渡辺 葉)

まつりのるつぼ

岐阜県郡上市白鳥町(ぐじょうししろとりちょう)は、徹夜で踊る熱狂的な盆踊り「白鳥おどり」があり、多くの盆踊りファンに愛されている。その白鳥町で、長い盆踊りシーズンの終盤、秋の収穫の訪れとともに行われるおまつりが、獅子舞が登場する大神楽(だいかぐら)である。2日間かけ、神社などでの奉納舞と神事、地区を巡行しての舞が行われる。郡上市の無形民俗文化財に指定されている。

実は郡上市内には、獅子神楽を行う集落がたくさんある。盆踊りと同じくらい、獅子神楽の盛んな土地柄なのだ。獅子神楽の他にも、地歌舞伎や掛踊(かけおどり)などの多彩なおまつりも見逃せない。郡上市は民俗芸能のるつぼであり、芸能の里と言ってよいだろう。

白鳥町の各集落で行われている大神楽は多くが不定期開催であるが、白鳥神社の大神楽は毎年定期的に行われているうえに、美濃白鳥駅から徒歩で行けるので見学もしやすい。ただし、2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、縮小開催された。

白鳥神社大神楽とは

大神楽は一般的に、獅子舞と曲芸とが合わさり、伊勢神宮や熱田神宮などの信仰と結びつけられて江戸時代に成立した芸能とされる。ところが白鳥神社大神楽の起源はもっと古く、曲芸は行われない。確認されている最古の資料には、1498(明応7)年の開催が記録されている。応仁の乱直後、疫病が流行していて南海トラフ巨大地震も起きた年である。1498年が開始の年とは断定できないが、今と似ている状況もあり、歴史を知るとぐっと身近に感じられるのではないか。

疫病があるから接触を避けなければいけないが、疫病があるからこそ会って無事を確認したいし、皆で一緒に神仏にでもすがりたい。そういう気持ちは今も昔も変わらないし、医療が未発達だった時代には、より強い欲求だっただろう。

白鳥神社の獅子は、約4名で操られる、猪のようにずんぐり大きい深緑色の胴体で、頭にもじゃもじゃ毛が生えている。金襴の刺繡の衣装で化粧をした子どもがささらと太鼓を鳴らし、獅子の周りを舞う。ひょっとこ面の「すっとこどん」という道化や「どす面」と呼ばれる鬼がいて、とさか状の烏帽子(えぼし)や、笠をかぶり袴(はかま)姿の奏者がおはやしを奏でる。

白鳥神社拝殿前での行列。(写真:渡辺 葉)

宙を舞うような足の動きが小気味よい。この年の子は足を小石で痛めて涙ぐみながらがんばった。(写真:渡辺 葉)

「とっさか」と呼ばれる、烏帽子を被った鼓打ち。(写真:渡辺 葉)

「どす面」の手に持った飾りの片面には三つ巴、反対側には龍が描かれている。(写真:渡辺 葉)

獅子や他の役者の衣装が伝統的で風格ある中、手作り感あふれる「すっとこどん」の帽子は異彩を放っている。細部に切れ込みなどの細工はあるが、テイストとして折紙を飾って作ったパーティー帽のようなおかしみがあるのだ。

「すっとこどん」の、帽子の不思議な今っぽさ、いつも新しそうなお面、なぜか1人だけ白シャツという規定になっている衣装に、古いおまつりに少しずつ現代性を折り込み、今と昔とを共存させている白鳥の人のたくましい工夫や、若者のパンクな精神の一端が現れているようにも私は感じる。

帽子をかぶったすっとこどん。(写真:渡辺 葉)

かつては3日間開催され、余興の相撲などもあったそうだ。まつりの余興というのは、文化祭の出し物を想像してもらったら、近いだろう。ただし、郡上市の場合、余興で中学生がさらっと歌舞伎の一場面を演じ、それに対して小学生が掛け声とともにおひねりを投げたりするので、余興の内容にも驚かされることが多い。

現在は2日間に短縮されたが、2014年には、神事に巫女による浦安の舞が加えられた。浦安の舞は、1940年に作られた舞である。白鳥神社大神楽は、室町時代から粛々と行われ、今も変化し続けているのだ。室町から粛々と行われ、現在進行形で変化し続けている。

浦安の舞の様子。(写真:渡辺 葉)

雅楽の演奏とともに舞が行われる。(写真:渡辺 葉)

商店街を通り、長良川鉄道の踏切を越え、田畑の中の道で舞ったりしながら、少しずつ進んでいく神楽の行列を、町の人達がにこにこして(小さい子は獅子に驚いて泣きながら)見送る姿を眺めるのが、私は大好きだ。

写真:渡辺 葉

「ほーれほーれ」と手拍子で獅子をはやしたてるご老人。(写真:渡辺 葉)

泣く子続出。(写真:渡辺 葉)

獅子に興味津々の子。右の二人が着ている神楽Tシャツも可愛いい。(写真:渡辺 葉)

上の写真で獅子の中をのぞいていた子が、3年後に迎えた晴れ舞台。(写真:渡辺 葉)

本殿前の奉納舞は、神様の通り道に縄を張って行われる。(写真:渡辺 葉)

舞が終わると、見学者は「出花」(でばな)と呼ばれるススキの飾りものをいただいて帰り、神棚に飾って健康を祈念する。子どもは頭を噛んでもらって邪気を祓う。

ススキに神社名の短冊、和紙で作った桜の花などのついた出花。(写真:渡辺 葉)

大神楽終了後の噛み噛みラッシュアワー。(写真:渡辺 葉)

かつて出花は観客に奪い合われたそうだ。現在は出花を激しく奪い合わない代わりに、役員と巫女による飴まきがあり、当たりくじつきの飴が奪い合われている。賞品には、参加してみたところ家電製品などもあって、なかなか豪華だった。白鳥町のおまつりに行くと、しょっちゅう飴などの菓子や餅がまかれる光景に出くわす。

飴まきの様子。(写真:渡辺 葉)

白鳥神社の大神楽は、伊勢神楽のような曲芸もないし、数年おきに開催される町内の他の集落での大神楽のような艶やかな衣装や大勢の役者もない。シンプルにそぎ落とされている分、一本筋が通っていて、毎年見ても飽きないおまつりだ。無事にその季節を迎えたことを、静かに確認するタイプのおまつりなのだと思う。

機会があればぜひ見てもらいたいし、できれば、2日目の神楽の終了後、夜に行われる拝殿踊りにも参加してみてほしい。また、1日目の夜に駅前で行われる白鳥おどりの変装踊りコンクールもおすすめだ。(年によって、コンクール開催日が大神楽とずれることもあり。)一連のまつり体験を通じて、白鳥町に受け継がれてきた、まつりを愛する人々の心の源泉に触れられるはずだ。

大神楽終了後、キリコ灯篭(とうろう)を吊るす関係者。和紙で細かい細工がされて、幕には白山や白浪が描かれている。灯篭は神とご先祖への目印となる。(写真:渡辺 葉)

白鳥神社での拝殿踊りの始まり。「場所踊り」を踊り、ご先祖を背中へ降ろす。(写真:渡辺 葉)

変装踊りコンクールで踊る参加者。(写真:渡辺 葉)

まつりは続く

2021年と2022年の大神楽は、前述のように縮小開催された。関係者の方が記されたご報告では、1500年頃から途切れず続いてきたおまつりを中断させるのに忍びなく、協議の末最低限の内容に絞り獅子を舞うことを決断されたということだった。

まつりを持つどの地域でも現在起きている苦悩ではあるけれど、それぞれに悩み結論を出されている。その結論の重みを感じながら、おまつりを見ていきたい。

 

<参考文献>
・『白鳥町史 通史 下巻』(1976)
岐阜女子大学「郡上白山文化遺産デジタルアーカイブ」
独立行政法人 日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー」
白鳥神社報「宮の森」第26号(2021.8.1)

国立国会図書館サーチ レファレンス情報
高田装束研究所ホームページ
一般社団法人神社音楽協会ホームページ

<白鳥神社大神楽のご案内>
住        所:岐阜県郡上市白鳥町白鳥680番地の1
ア  ク  セ  ス:長良川鉄道 美濃白鳥駅より徒歩約11分
開  催  時  期:毎年9月第4土曜と翌日曜の2日間

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この記事を書いた人
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オマツリジャパン オフィシャルライター

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