Now Loading...

氷見獅子はなぜ広まったの?石川県羽咋市の博物館で、獅子舞の継承について考える

更新日:2022/2/9 いなむ
氷見獅子はなぜ広まったの?石川県羽咋市の博物館で、獅子舞の継承について考える

民俗芸能を隣の地域に伝える、あるいはそれを次の世代に繋ぐ。このような行為に着目することで、何気なく行われている民俗芸能の意味を再考することができます。

今回訪れたのは、石川県羽咋市。羽咋の民俗芸能といえば、天狗が登場する獅子舞があります。この地域の獅子舞はどのように伝えられ、受け継がれてきたのでしょうか。羽咋市歴史民俗資料館で2022年2月5日〜3月6日の期間開催されている企画展の内容に沿って、ご紹介させていただきます。

羽咋市歴史民俗資料館に行ってきた

企画展が行われている羽咋市歴史民俗資料館は、JR羽咋駅東口から徒歩10分、車では千里浜ICより10分の場所にあります。羽咋市の歴史や生活資料に関する常設展があるほか、企画展も開催しています。毎年行われている獅子舞の企画展は7年目。今回は能登獅子と越中獅子の比較という視点で「羽咋の越中獅子」と題して行われました。羽咋市において越中獅子は氷見市から伝わった獅子なので、氷見獅子とも呼ばれています。それでは、展示の内容についてまず見ていきましょう。

能登獅子と氷見獅子の比較

会場に入るとまず見えてきたのが、2種類の天狗と獅子でした。能登獅子と氷見獅子、それぞれの系統の違いがよくわかる展示となっていました。天狗と獅子が演舞を行うという形態は同じですが、能登獅子はお囃子のメロディに合わせて天狗と獅子が脚を揃えて一緒に舞う一方で、氷見獅子は太鼓のリズムに合わせた勇壮さが見どころで、「獅子殺し」に代表されるような格闘色が強いです。このように両種には演じ方に大きな違いがあります。

それでは、衣装や道具の違いについても見てみましょう。こちらは能登獅子の展示です。天狗の鼻のところに紐をくくりつけて、面を固定しているのが面白いですね。蚊帳は渦巻き模様がたくさん描かれ、様々な色が散りばめられたカラフルな蚊帳です。

一方で、こちらが氷見獅子です。烏帽子は高価な牛革を用いており、兜のような飾りが印象的です。天狗面は鬼のような顔をしていています。蚊帳は真っ赤で緋色(ひしょく)蚊帳と呼ばれるタイプで、厚くてしっかりした生地でとても目立ちます。

2つの獅子ともに、脚をぺたんとはいつくばるようにしている姿がなんとも可愛らしいですね。このように、獅子舞には地域固有の形があり、舞い方やデザインにその違いがはっきりと現れているのです。

なぜ氷見から獅子が伝わったの?伝来経路はまるで地下鉄の路線図

さて、今回注目したいのは、氷見獅子についてです。富山県氷見市から石川県羽咋市へと外からの流入によってもたらされた獅子なのですが、どのような経緯があって、羽咋市に伝来したのでしょうか。今回の展示を企画されたお一人である、諏訪雄士さんにお話を伺うことができました。諏訪さんは会社勤めの傍ら氷見獅子を始めとした能登周辺の獅子舞を長年研究されてきた方で、言わずと知れた獅子舞博士です。

諏訪さんによれば、獅子舞伝播を考える上で、まず石川県境にある富山県氷見市論田や熊無の地域に住む人の職業に注目する必要があるそうです。

諏訪さん「まず、氷見から能登への獅子舞伝播の重要な地域となったのが、氷見市熊無や論田という場所です。かつては農閑期に『藤箕(ふじみ)』という、(穀物やもみ穀などをふるい分けたり作物を運んだりする)農具を作る人々がいました。この人々は行商と材料調達のために様々な場所に移動し、各地域の決められた常宿に泊まっていたようです。そのような交流の中で獅子舞も伝わったと思われます。

その他にも、お寺の門徒繋がりで縁組みや結婚などに発展したり、神社の宮司さんが複数の地域を兼任していたりなどの繋がりによって、獅子舞が伝わった事例も多数あります。宗教的な繋がりが、婚姻、親戚、移住などの繋がりを生み、獅子舞を伝えたとも言えます。」

伝承ルートについて、地図を見ながら説明してくださいました。赤線が論田の系統、青線が熊無の系統のようです。「地下鉄の路線図」のように主要な伝承関係のみを記したそうですが、それでもかなり細かい地図ですね!獅子舞の伝承に関するとても貴重な資料です。

こちらは今回企画展のために特別に県外からご好意で貸してもらった、氷見市論田の獅子頭、天狗面、烏帽子とのこと。獅子頭は明治42年に新調したもので、現在も使っている貴重な獅子頭のようです。火災で焼けたため獅子頭を新調したという文書が残されており、それ以来、修理を重ねているため今でもピカピカの状態ですね。頭に御幣をつけていますが、神社でお祓いを受けた後に御幣をつけるという習慣もよくあるそうです。

氷見市の論田や熊無といった獅子舞を複数の地域に伝えた大元があり、仕事や宗教など様々な関係性の中で、周辺の地域に獅子舞が広まっていったということがよくわかりました。やはり、自分たちの故郷の獅子舞を次々と教えていくわけですから、少なからずそこに活発な地域間の交流と仲間意識のようなものがあったのかもしれませんね。

獅子舞ごっこをして、獅子舞に親しもう!

さて、獅子舞を他の地域に教えていく水平的な広がりがある中で、それを地域内で伝承していく垂直方向の広がりについても見てみましょう。獅子舞が伝わっていくには、次の世代を担う子供達が獅子舞を楽しいと思えることが大事です。展示の一角には、「獅子舞ごっこ」で子供達が使えるようにと開発された、手作りの獅子頭や烏帽子、蚊帳のタオルが置かれていたので、じっくりと観察してみました。

こちらの獅子頭は富山県氷見市の小島ダンボールさんが販売しているダン獅子です。作りが本格的ですね。実際に獅子頭が組み立てられた完成品のほか、作って遊べて2度楽しめるという「ダン獅子キット」もあるそうです。

そしてこちらが今回の企画展を主催されている、はくい獅子舞保存活性化実行委員会のメンバーで、当資料館学芸員でもある中野知幸さんが制作された「ダンボールの烏帽子(略してダン-エボ)」とのこと。今回の企画展の会場で型紙がもらえるのでそれをコンビニなどのプリンターで400~500%くらいに拡大コピーして、その大きさにダンボールを切って貼り付ければ完成するそうです。こう見ると本物とも見間違うくらい実物に近い出来栄えですね。

そしてこちらが「カヤ-タオル」です。獅子頭や烏帽子があっても、獅子の胴体がないと獅子舞ごっこができない!という方も多いはず。蚊帳そっくりの模様がついたタオルは、普段使いができる他に、子供が獅子舞ごっこでも使える大きさになっています。

獅子舞の道具を全部一式揃えようとすると何百万円とかかってしまい、個人ではなかなか手が出せません。しかし、このように手作りでできる獅子舞の道具や本物そっくりのタオルなどを使うことで、十分獅子舞ごっこは楽しめます。自分の手作りで作った獅子舞だと、きっと愛着もわいてくるでしょう。獅子舞に対するハードルを下げることで、獅子舞に興味を持つ子供も増えていくのだろうと感じました。

企画展を通して横の繋がりが生まれる

元々獅子舞に熱い土地柄もあり、毎年獅子舞の企画展はこの博物館の名物企画になっているそうです。最近ではある地域から獅子舞を復活させたという話を聞いたり、獅子舞団体の担い手不足をどう解消しようかという相談も受けるのだとか。このような企画展というオープンな場所があることで、獅子舞団体は他の団体の事例を学べ、良い出会いにも繋がっているようです。

獅子舞の伝来経路について学びを深め過去を知るとともに、獅子舞を次の世代に伝える未来のことを考えていかねばなりません。そういう意味で「獅子舞を繋いでいくこと」について考えられる展示であると感じました。2022年3月6日まで開催されているので、興味を持った方はぜひ足を運んでみてください。今回、記事ではご紹介できなかった動画上映や写真の展示など、他にも見所が満載です。

<企画展「羽咋の越中獅子」の詳細>
開催期間:令和4年2月5日(土曜日)~令和4年3月6日(日曜日)   会期中無休
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場:羽咋市歴史民俗資料館 2階ロビー
観覧料:無料
主催:はくい獅子舞保存活性化実行委員会

羽咋市の獅子舞に関する動画は「はくい獅子舞保全活性化実行委員会 Youtube」にて多数アップされているのでぜひご覧ください。

いいねを押してこの記事を応援しよう!
この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
獅子舞マニアです。ライターやカメラマンをしています。趣味は、獅子舞の鼻を撮影することです。その他クレイジーな祭りにも潜入します。

あわせて読みたい記事