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かわいいミニチュア獅子頭がずらり!中野区の歴史民俗資料館でわかった獅子舞の多様な世界

2022/7/19
2022/7/19
かわいいミニチュア獅子頭がずらり!中野区の歴史民俗資料館でわかった獅子舞の多様な世界

子供の頃、「家を訪ねてくる獅子舞は怖いもの」と感じた方も多いはず。実際に獅子舞は厄払いの意味があるため、にらみをきかすような形態はたくさんある。一方で、玩具になっている獅子舞を見るととぼけた顔をしたり、可愛らしい顔をしたものも多い。

中野区立歴史民俗資料館で、5月24日(火)~7月10日(日)まで開催された館蔵品展「獅子頭」では、郷土の民芸品としての日本全国の獅子頭が会場にずらりと並んだ。狛犬との違いや中野区の獅子舞のことなどを含め、様々な角度から獅子舞の多様さに迫る展示だった。この展示で見た獅子頭のことを紹介させていただき、獅子舞の世界の奥深い魅力に迫りたい。

郷土の文化遺産を保存・活用する「れきみん」

西武新宿線の沼袋駅から徒歩8分、重厚感のある屋根が見えたらそこが目的地「中野区立歴史民俗資料館」だ。郷土の文化遺産の保存と展示活用を目的に、名誉都民である故・山﨑喜作氏から寄贈された土地に建設。「れきみん」の愛称でも親しまれている。

入館料は無料で、1階に特別展示室、2階に企画展示室と常設展示室がある。今回の獅子頭の展示は1階で実施。元々、中野区の郷土史家の方が所蔵していたものが資料館に寄贈され、それがこの機会にお披露目となった。 

日本全国のミニチュア獅子頭がずらり

獅子頭となるとかなり収集するのは高価だが、ミニチュアサイズの獅子頭だと比較的収集しやすい。しかし、それにしても、展示が開催できるほどの数が集められたというのには脱帽だ。展示の初めに、「獅子からのごあいさつ」があり、福島県会津若松市の「ウェルカム獅子舞」などが出迎えてくれた。

こちらが並べられたミニチュアサイズの獅子頭たち!張り子で作られたものや絵馬、木製パズルや玩具など種類は本当に様々だ。

山形県酒田市の雌雄一対の獅子頭や、埼玉県秩父市浦山大日堂のささら獅子、岩手県の南部鹿踊の置物…自分も過去に見に行ったことがある獅子舞がこのような形で勢揃いしているのはとても感慨深く思われた。それにしても本物の獅子頭と比べると、彫りが浅いからかとても可愛らしい。

日本全国に、こんなにも獅子舞グッズがあるとは知らなかった。東京都中央区のバネつき獅子頭はおそらくブルンブルンと動く、あるいはビヨーンと飛び跳ねるのだろう。

茨城県石岡市のマスコットティッシュは、獅子頭の口の中からティッシュが取り出せる構造になっているらしい。キーホルダーには、沖縄県の陽気なシーサーがかたどられていてとても可愛い。 

時々、獅子舞の小ネタが載っているパネルもある。「頭をかむ理由」というパネルには、「噛み付く」と「神が憑く」の語呂合わせ、と書かれている。

また、歯と歯をぶつけるという行為には、空間を浄化する作用があるらしい。獅子は噛んで厄払いをしてくれるということは皆よく知っているが、それを一歩踏み込んで解説してくれているのが良い。 

そのほかにも獅子舞の胴体の模様はライオンの渦巻き状の毛に由来するなど、獅子舞豆知識を知ることができた。

江古田獅子舞、驚きの「おカシラ問題」とは

ここまでは日本全国という広い視点で獅子頭を見てきたが、一気に身近に感じられる展示が中野区の江古田獅子舞だ。

獅子舞は元々、1人で演じる一人立ちの獅子舞と、2人以上で演じる二人立ちの獅子舞に区別される。江古田獅子舞は、1人で演じる一人立ちの獅子が3頭いる「三匹獅子舞」の形態だ。モサモサとした鶏毛の羽を頭から生やす、大獅子、女獅子、中獅子の写真が展示されていた。

江古田獅子舞の最も大きな特徴は、獅子舞の行列に四神が加わるということ。こちらの写真を見ていただくとわかるように、顔を隠す大きな布の上に、青龍、白虎、朱雀、玄武が乗っている。このような形態は日本全国を見ても非常に珍しい。 

江古田獅子舞の由来や解説が載った書物も残されている。全国的にも文書としてこのようなものが残っているところは少ないので、格式高い獅子舞であるということがわかる。それにしても、獅子舞の絵がとてもかわいらしい。

注目はこちらの練習用の獅子頭!手作り感がとても素晴らしい。木を組み立ててそれを紐で結びつけ、テープで貼り付けたような簡素な作りだが、眼力が強く、まさに獅子頭の原型という雰囲気を感じる。

日本各地の獅子舞の始まりを調べると、ザルを2つ合わせて作った、かぼちゃをくりぬいて耳にしたなど、様々な伝承が各地にあり、生活の中から生み出されたまさに「民俗芸能」としての姿が浮かび上がってくるように思われる。 

「おカシラ問題」というパネルも大変興味深かった。江古田獅子舞の頭部に植えられた羽は、とても高価なようだ。羽の量を比較すると全国平均では1500~2000本のようだが、江古田獅子舞には1体1万本で、3体合わせて2万5千本も必要らしい。3体全て新調するには、数千万円かかると聞いてとても驚いた。

普通、口をパクパク噛む大陸由来の獅子頭だと、一体作るのに全部で100万円かかったら高価な方だ。それと比べると、三匹獅子舞の鶏毛は非常に高価といえるだろう。 

狛犬と獅子舞の似ている点は?

中野区の狛犬に関する展示も行われていた。

もともと、神聖な場所を守護して厄を払う意味で、狛犬は獅子舞とルーツが似ている。平安時代、宮中の調度品として、天皇から見て右に口を閉じた狛犬、左が口を開けた獅子を置くという習慣があったようだ。今では口閉じと開きを合わせて「阿吽(あうん)の呼吸」と呼び、両方をひっくるめて狛犬とすることも多く、神社の境内に石像の形で置かれている。

中野区内には25対50体の狛犬があるらしい。 

東中野の氷川神社には、江戸時代初期で中野区では最も古いとされる狛犬がある。装飾は簡素で丸みを帯びている。時代を経るに従って、装飾が派手になっているようだ。

口が開いた狛犬は「獅子」と呼ばれていたとわかるだけでも、なんだか豆知識が増えたようで楽しい。

獅子舞には様々な表情がある

このように、「獅子頭展」とはいえ、獅子をテーマに多様な展示が展開されているのが印象的だった。日本全国の獅子舞を紹介するだけでなく、それが郷土玩具として作られ、とても可愛らしく、とぼけた感じの表情のものもあった。

江古田獅子舞はとても特徴的だったし、狛犬と獅子の違いも知ることができた。獅子舞といえば「頭を噛んでくれるちょっぴり怖い存在」というだけでなく、様々な表情があることがわかった。

常設展には中野区のお祭りの展示も!

1階では充実の獅子頭展が行われている一方で、2階では常設展が行われていた。ここでは今回の会期に限らず、中野区のお祭りの展示も少しあるので、最後にご紹介しておきたい。

常設展の中心には円柱状の展示コーナーがあって、江古田獅子舞や鷺宮囃子などに関する展示がある。白狐(びゃっこ)やひょっとこのお面、笛や昔の獅子舞行列の絵なども見られる。ぜひ、中野区の地域の歴史や民俗に関する展示とともに楽しんでいただきたい。

◾️中野区立歴史民俗資料館
住所:東京都中野区江古田4丁目3-4
アクセス:西武新宿線「沼袋駅」北口より徒歩8分
開館時間:午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:無料
休館日:月曜日、第3日曜日、年末年始
詳細は中野区公式サイトのこちらのページからご確認ください。

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