キャッチコピーは「400年続く、蜘蛛愛」。
どうも。通りすがりのスパイダーマンです。鹿児島県の加治木にガチのスパイダーバースがあると聞いてやって来ました。どうやらここでバトル系奇祭の中でも唯一無二の昆虫バトル「くも合戦」が行われているのだとか。不審者通報される前に早速、行ってみましょう。
※ちなみにこれからクモの画像がわんさか出てくるため、クモが苦手な方、アラクノフォビア(クモ恐怖症)の方はこの先は読まないことをお勧めします。「うげぇぇぇ」となるよ。
会場の様子はこんな感じ。この日は小学生からお年寄りまで174名、コガネグモ372匹が参加。一人は必ず3匹のクモを出場させることが必須です。
コガネグモを背中にあしらった法被もなかなかにクール。「幻影旅団メンバーかよ!」ってツッコミたくなる。
これがコガネグモの控室。最初に気づいたとき、大量のクモに「うげぇぇぇぇ」と悲鳴を上げそうになりました。ガチのスパイダー・バースがここにある!
言い出しっぺは鬼島津!
くも合戦は、1592年の朝鮮出兵に参戦した薩摩の殿様にして「鬼島津」の異名を持つ軍神・島津義弘(島津四兄弟の次男、『ドリフターズ』の主人公・島津豊久の叔父)が家来の士気を高めようと陣中で行ったのが始まりとされています。「いや確かに言ったけど、まさか400年も続くとは……」。きっと草葉の陰も鬼島津もビックリでしょう。
ちなみにこの出兵時、猫の瞳孔の開き具合で時刻を測るため、猫7匹を連れていったとか。その後、生還した2匹の猫ヤスとミケの霊を祀ったのが、日本で唯一猫を祀った猫神神社(鹿児島市磯の仙巌園)です。一つひとつの逸話がエスプレッソ並みに濃過ぎる!
コガネグモはクモの進化系?
薄々お気づきかと思いますが、このコガネグモ、想像したよりずいぶんデカいです。体長4~5cmくらい。阪神タイガースのような黒と黄色のどキツイ色をしていますが、毒性はありません。
鳥などの外敵を威嚇して身を守るための色だとか。というのも普通のクモは外敵を恐れて昼間に網を張ることはありませんが、クモの進化系であるコガネグモは昼間に網を張るので、そのためのようですね。
日本に生息するクモは1600種類と言われますが、そのうちたった2種類。このコガネグモと後は家でよく見かけるハエトリグモだけが戦わせることができるそうです。
コガネグモの捕食シーン。ここまで成長したコガネグモはカナブンとかコオロギを食べるそうです。
コガネグモは先端をめざして走る習性があります。調子こいて手にのせたら一目散に頭めがけて登ってきたのでやっぱり「ギョェェェェェェ」と悲鳴をあげそうになりました(2回目)。取って、このクモ、早く取って!!!
ちなみに対戦したクモはすべてケージに入れて自然へと帰します。エコな祭りです。そしてコガネグモはたった1年の短い命。去年の強豪グモが今年また再登場するということはないのです。
くも合戦は3部構成
くも合戦は優良クモの部、合戦の部、王将戦の部の全3部構成となります。
➀優良クモの部(9:10~)
八頭身の美脚であるだけでなく、姿形や色艶も美の基準となるようです。
➁合戦の部(9:10~)
子どもグループと大人グループに分かれ、最大3回対戦し、3連勝した強いクモ、通称・3勝グモだけがそれぞれ午後からの王将戦へと進むことができます(ただし、負けたらその時点で出場停止)。
➂王将戦の部(14時~)
3連勝した3勝グモのみが集う王将戦はトーナメント方式。ちなみに、写真のように横棒の先端で待機し、挑戦者を待ち受けるクモは「かまえ」と呼ばれ、後からバトルを挑むクモは「しかけ」と呼ばれます。
かみつくか、ぶっかけるか、切り落とすか
くも合戦での勝敗の見分け方は3つ。➀相手のクモの尻にかみつく、➁相手のクモの尻に糸をかける、➂相手のクモが糸を垂れてぶらさがったとき、糸を切り落とすのどれかです。
膠着状態に陥ると砂をかけて刺激しますが、戦闘意欲のないクモは行事の判断で引き分けとなります。
➀のカミツキ。図は下のクモが上のクモの尻を噛んだ瞬間。
写真だとこんな感じ。直接攻撃の応酬の結果、カミツキ一本勝負アリとなります。しかし、クモの口が小さいので素人目にはその瞬間はわかりにくい。行事による瞬時の判断が必須です。
3勝グモ同士が戦う王将の部より。白熱の実況にもご注目ください。
➁の相手の尻に糸をかける勝ち方。図は下のクモが上のクモに糸をかける瞬間。
小さいですが、よく見ると尻から糸を出して攻撃しているのがハッキリわかります。クモならではの中距離戦闘ですね。
一瞬の決着。糸をかけた?
➂の糸にぶら下がったクモを切り落とす勝ち方。これが見ていて一番わかりやすかったです。
このように時には二匹とも糸にぶら下がり、華々しい空中戦をくり広げることも……。
行事はクモを傷つけないように細心の注意を払っています。
一体、いつから錯覚していた?
ちなみにさっきから紹介してきた「戦士」はすべてコガネグモのメス!!!
(「一体、いつから————戦うクモがオスだと錯覚していた?」)
(「な……何……だと?!」)
コガネグモのメスはこんなに大きいのにオスはうんと小さいのだとか。コガネグモのオスの特徴は以下の通り。
・体長:体長4、5センチのメスに比べ、オスの体長は5ミリ程度の目立たない存在
・習性:交尾期になるとオスはメスの巣に忍び込む。脱皮直後のメスの攻撃性が低下した瞬間をねらって交尾する。
・末路:最後はエサとしてメスに食われることもある(!)。
……。
えっと、うん、あれだ。コガネグモのオスに生まれなくて本当によかったですね。
今回のオアソビジャパン
会場のある加治木は霧島市のとなり。霧島観光との組合せがおすすめです。鹿児島空港→霧島アートの森→霧島温泉→霧島神宮→国分駅で一泊などのルートがおすすめです。
霧島アートの森。草間彌生の「シャングリラの華」
霧島アートの森。森の樹々に擬態化するかのようなアントニー・ゴームリーの作品「インサイダー」。
濃厚な硫黄の香りと蒸気が立ち込める霧島温泉郷。日帰り温泉の利用は14時最終受付となるので要注意。町の立ち寄り温泉を利用するのもひとつの方法です。
霧島神宮。主神は天孫降臨のニニギノミコト。
鹿児島空港から歩いて15分の場所にあるバレルバレーで飲める霧島高原ビール。写真は左からボヘミアンブロンド(ピルスナー)とケルシュの2種。
現場からは以上です。今回のリアル・ムシキングはいかがだったでしょうか? それでは次の奇祭旅でお会いしましょう。次回も老後の2000万円を貯めるのには何の役にも立たない情報満載でお届けしますよ。
●加治木 くも合戦
■日時:6月第3週日曜日(父の日)8時半~16時
■場所:姶良市加治木福祉センター
■交通:加治木駅徒歩9分
http://www.city.aira.lg.jp/koho/miryokukanko/spider.html