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コロナ禍にあって3年ぶりの公開開催。「無理せず松明1本ずつでも元に戻せばいい」と語る、その熱い伝承の思いとは?<松明あかし>

2022/11/2
2024/2/29
コロナ禍にあって3年ぶりの公開開催。「無理せず松明1本ずつでも元に戻せばいい」と語る、その熱い伝承の思いとは?<松明あかし>

燃えさかる巨大な松明が晩秋の夜空を勇壮に照らす!
今から約430年前に伊達氏と須賀川二階堂氏の戦いで散った兵たちの霊を弔うために始まったとされる「松明あかし」。福島県須賀川市で毎年11月の第2土曜日に行われる国内屈指の火祭りですが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため一般公開としては3年ぶりの開催となります。
須賀川市の町をあげて行われる松明あかしに対する思いや、次の世代に伝承する取り組み、新型コロナウイルス感染対策などについて、松明をもりたてる会会長・佐藤貴紀さんにお話を伺ってきました。

佐藤 貴紀(さとう たかのり)

1973年福島県須賀川市生まれ。松明をもりたてる会会長。
松明をもりたてる会は、大松明・姫松明の製作から運搬、建て込み、点火までを行う市民団体。毎年すべて手作業で作られる松明には、その技術を次世代へ伝えることが特に重要となる。会のメンバーが中心となって松明を製作しながら、その伝統技法を伝承していく役割も担う。

――佐藤さんは生まれも育ちも須賀川市ということで、小さなころから「松明あかし」を見て来られたと思いますが、地元の人から見たこの祭りはどのようなものでしょうか?

私にとっての「松明あかし」は、中学生の頃までは、松明というより皆で露店を見て回るのが楽しみなお祭りでした。それが高校生になり、当時本校では中断していた松明製作を復活させようということで、松明をもりたてる会に松明作りを教えてもらったのが直接的なきっかけですね。
生徒会に入っていたことでより多くの経験をし、松明に魅力を感じたことで、卒業後も松明作りに参加しているうちに自然な流れで松明をもりたてる会にも入りました。ですので、私にとっての「松明あかし」は、特別な祭りではなく、気づけば身近にあったという印象ですね。

――長年携わってきたことで「松明あかし」に対する思い入れもかなりお有りだと思いますが?

正直、自分のことと言うより、例えば須賀川から就職や進学で市外に出たときに人が「地元には何があるの?」と聞かれた時に胸を張って「松明あかしがあるよ」と言ってもらえるようなものにしたいと思っています。
また、松明の時期になれば地元に帰って来る「須賀川の誇れるもの」になればいいですね。

――いや、十分そういった存在だと思います!

※淡々としながらも、その思いを熱く語る佐藤さん※淡々としながらも、その思いを熱く語る佐藤さん

――新型コロナウイルスの影響でこの2年は非公開で行われたそうですが、人を呼べないもどかしさがあったのではないでしょうか?

もどかしさより、新型コロナウイルスに対する恐怖感の方が強かったですね。大切な人たちに感染させてはいけない、でも伝承として松明あかしは続けていかないといけませんので1本だけ松明を製作していたのですが、それでもかなり不安でした。新型コロナウイルスがよく分からないものだけに、極力マスクは外さない、会食が伴わないよう準備は午前で切り上げるなど、「今は松明あかしより新型コロナウイルスに罹らないこと」を意識していました。

――とは言え、いつまでこの状態が続くのかという不安もありましたよね。

確かに、2年間松明が1本だけという状態を経験して、これがいつまで続くのかな… という不安は出てきましたね。ただ、1本だけであっても続けられたことに対しては感謝していますし、伝承という意味では繋げられたのはよかったなと思います。

※松明あかしの会場である五老山。今年は昼間のイベントは行わず、夕方からの御神火奉受、松明点火、松明太鼓演奏のみの縮小開催となります。※松明あかしの会場である五老山。今年は昼間のイベントは行わず、夕方からの御神火奉受、松明点火、松明太鼓演奏のみの縮小開催となります。

――そして、ようやく3年ぶりの公開開催ということで今年は17本の松明が立つそうですね。一方で、他のお祭りがどんどん復活していく中で規模縮小にて開催する慎重さも感じますが?

例年、昼間に松明を担いで街を練り歩いたり、人の手で松明を立てたり、松明点火だけじゃない魅力もあるのですが、まだ今年はそこまではやれないかな… という結論になりました。実行委員会の皆さんとも協議を重ねる中で、私個人としては他のお祭りや行事に合わせる必要もないのかなと感じています。

今回も例年より松明は少ないのですが、そもそもはコロナ禍で1本から始まった訳ですから(笑)
松明あかしが続くのであれば、1本ずつからでもゆっくり元の状態に戻していけばいいと思っています。各団体や企業などが自ら松明を製作する祭りですので、強制すべきものではありませんし、それぞれのご事情で無理せず関わってくださるのが一番良いのではないでしょうか。

――感染症対策についても慎重になさっているのでしょうね。

今年から実行委員会の方で感染症対策マニュアルを作っていただいて、それに基づいて慎重に行っています。日常の消毒やマスク着用などはもちろん、日々の体調管理としては、関係者については9月1日から毎日検温し記録したものを提出するルールとなっています。

――文化継承についてお聞きします。先ほどご自身の経験から高校で松明を作っているお話はお聞きしたのですが、やはり学校を通じて継承していくのが主な取り組みでしょうか?

以前から地元の中学・高校に指導に伺い、生徒さんには実際に松明作りを行っていただいています。また、去年から地元の小学校からお声がけいただき松明あかしについての授業も行っています。
小学校でどういったものかを知ってもらって、中学高校で実際に製作、その後さらに興味を持った人には我々松明をもりたてる会などで松明作りを続けてもらうという流れになれば嬉しいなと思っています。

――松明あかしそのものの由来や文化的な側面についてはいかがでしょうか?

市の方で教材としてのDVDを作っていただいて、それも活用しながら学校の授業として行われているようです。また、松明あかしにかかわる中でいろんな大人たちとの対話も出てきますので、そのなかでうまく伝えられたらと思っています。

――ということは… 須賀川の子どもたちは、高校卒業する頃にはみんな松明のエキスパートなんですね(笑)

※製作中の実際に松明に使われる箍(たが)。特有の編み方もさることながら、使用される竹材の角は面取りまで行うという技術力の高さに驚きました。※製作中の実際に松明に使われる箍(たが)。特有の編み方もさることながら、使用される竹材の角は面取りまで行うという技術力の高さに驚きました。

――松明あかしを継承するために今後さらに必要なことなどはありますか?

いろんなしくみはあっても結局は人との繋がりだと思います。今中心となって行っている人たちもやがて歳は取りますので、やはり若い人にどんどん関わってもらいたいですね。そのためには、若い人が入りやすい雰囲気をどう作っていくのか? 課題でもあり、悩みでもあります。

――最後に、松明あかしに参加される皆さんにメッセージなどございましたらどうぞ!

3年ぶりに一般公開される松明あかしということで個人的にはいろいろご尽力いただいた方に感謝でいっぱいです。松明あかしの魅力はその勇壮な炎に宿るいろんな人々の思いだと感じます。寒い時期なので、背中は寒く、顔は熱いみたいな楽しさもあります(笑) 今年は昼間の各イベントが開催されない分、しっかり松明に集中できるので、ぜひ楽しんでご覧いただきたいと思います。

【あとがき】

当初は日本屈指の火祭りということで、かなり豪快でイケイケのお祭りなのかなと思っていましたが、佐藤会長をはじめ、松明あかしに関わる人たちの純粋でひたむきな様子、燃やせばなくなってしまう松明ですが想像以上に高い技術と思いを込めて製作していることがわかり感動しました。
次世代への継承のしくみや、感染症対策においてもかなり緻密かつ慎重に行われている様子も伝わり、やはりお話は聞いてみるものだな… と、インタビュアーとしての幸せも感じました。

例年に比べ数は少ないとはいえ、迫力のある松明太鼓が流れる中、17本の松明が晩秋の夜空に燃えさかる姿はまさに勇壮そのものでしょう。
鎮魂の祈りと人々の思いが宿った松明あかしがコロナ禍を乗り越えていよいよ始まります!

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