2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
神輿へと水が飛び交う夏祭り
「あんりゃあどした、あんりゃあどした」。笛や太鼓がリズムよく奏でられる中、大きな掛け声が夏の青空へと響き渡っている。八重垣神社祇園祭名物の掛け声だ。
東京駅から特急しおさいに乗ること1時間半弱、太平洋に面する千葉県匝瑳市の八日市場駅へとたどり着いた。八日市場は文字通り毎月8日に市場が立ち、にぎわってきた歴史があり、銚子と内陸をつなぐ街道沿いの街として発展してきた土地だ。この地で毎年8月4、5日に行われているお祭り、八重垣神社祇園祭が今回の目的である。
街道筋の古い街並みに、お囃子(はやし)に乗ってお神輿(みこし)が進んでくる。すると始まる水の掛け合い。八重垣神社祇園祭の特徴とも言える水が四方に飛び交う光景だ。このお祭りは真夏の炎天下の中で行われているのだが、ユニークなのが沿道の方々が次から次へとお神輿に向かって水を掛けていくところなのだ。中にはバケツやホースで水を掛ける人もいる。それでも負けじと左右にその姿を揺らしながら、お神輿が次々と進んでいく。
担ぎ手はびしょぬれになりながらも、その声はどんどん大きくなっているようだ。この活気はまさに夏のお祭りならではではないだろうか。水しぶきを受け、きらきらと輝く金色のお神輿もまた美しい。ちなみに、沿道の見物客にも、ばしばしと水が掛けられていくのはご愛嬌である。
このお祭りは江戸時代の元禄の頃にはじまり、優に300年以上の歴史がある。1日中、町内を回ったお神輿が宮入をする八重垣神社は、812年(弘仁2年)の創建とこちらも歴史が深い。古い街並みを抜け、小高い階段を上った先にある社殿は柱まで彫刻が施され、厳かな雰囲気が漂う。
緑に包まれた境内へ、一列に連なったお神輿の行列が進んでくる様子は見ものだ。太鼓をたたく人、笛を吹く人、そしてお神輿。狭い階段をお神輿が上る様子は手に汗を握ってしまう。「あんりゃあどした、あんりゃあどした」。宮入直前まで、境内に力強く声が響き渡っている。