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与論十五夜踊り 〜唄って踊って心が通う〜

2019/10/4
2021/9/21
与論十五夜踊り 〜唄って踊って心が通う〜

与論十五夜踊りとは

鹿児島県最南端、与論島。「癒しの島」とも呼ばれる、白い砂やサンゴ礁に囲まれたこの島では、毎年旧暦3,8,10月の15日に行われる、「十五夜踊り」というお祭りがあります。ここでは、2019年9月13日(金)中秋の名月の日に行われたお祭りを紹介したいと思います。

中秋の名月とは、月の満ち欠けを基準にしてつくられた太陰暦でいう8月15日の夜に見える月のことで、一年で最も美しいとされています。お月見という言葉を聞くと親しみがある方も多いのではないでしょうか。作物が月の満ち欠けと共に成長することから、「農作物の収穫」「ものごとの結実」「祖先との繋がり」を連想し、それぞれに感謝や祈願をするようになったのが十五夜です。

 

どんな場所 ~お祭りと絶景の島~

十五夜踊りの開催場所は与論城の跡地にある地主神社(琴平神社)で、島南端の丘にあります。標高94mの高台になっており、美しい海が見渡せる絶好の場所でもあります。現地に着くと、心地よい風が吹いていて、まだ暑さの残る時期ではありますが、秋の気配を感じました。

 

現地にはハイビスカスやブーゲンビリアなど鮮やかな熱帯の花が咲き、海岸には透き通ったエメラルドグリーンの海が広がっています。与論島は近年、「絶景の島」として人気を集めており、1周20km程の島には、美しいビーチが20箇所以上あります。

海岸の特徴は、波で削られた岩のトンネルを冒険できる秘境のような場所や、大潮の干潮時に出現する砂だけの島まで船で渡り一面綺麗な海に囲まれた景色が見える場所、シャワーや更衣室などの施設が整っていてマリンスポーツを楽しめる場所など、様々です。

現地に着くと、海岸の紹介が載っているマップがもらえるので、自分にあったプランをスムーズに立てることができました。お祭りと合わせて、夏の終わりに海水浴を楽しむのも良い思い出になります。

十五夜踊りの特徴

十五夜踊りは、重要無形民俗文化財に指定されており、五穀豊穣、島中安穏の祈願や感謝の意味が込められています。始まりは室町時代とされていて、430年以上踊り継がれてきました。

この踊りは「2番組」「1番組」と呼ばれる2つのグループで構成されており、交互に演目が披露されます。最初は「雨賜り(あみたぼうり)」という雨乞いの踊りで、合同で披露される演目となります。その後2番組の扇踊りから始まり、次に1番組の演目へと続きます。

2番組の装束は、黒に近い紺染めの衣装で、頭にシュパという長いスカーフのような頭巾を巻いて顔を覆います。

一見、怖いように感じる方もいるかもしれませんが、実際現地で目にするとそれぞれ違った色の頭巾を身につけており華やかに感じます。心地よい風に色鮮やかな頭巾がなびく光景は優雅で美しく、目を奪われてしまいました。歌は恋や自然をテーマにしており、太鼓の音も品良く響きます。

 

 

2番組に対し1番組は、白装束に黒足袋の衣装で、紙と竹で作った大きな仮面を用いるのが特徴です。

踊りは狂言を元にしており、最初の演目は大名が家来に買い物を頼む話となります。家来が間違った買い物をして大名に怒られる様子は、面白可笑しく表現されていました。舞台をみる感覚に近く、演目ごとに小道具やお面が変わります。どれもユーモアに富んでいて、とても馴染みやすい踊りです。台詞は全て与論島の古い方言をつかっており、島の文化を知る良いきっかけとなりました。

 

当日の様子

当日は、16時頃から踊りが始まります。2番組1番組それぞれ6演目程あり、日が沈むまで続くお祭りです。

演目の中盤、休憩を挟みます。お酒を飲んだり、食事をしたり、踊り手と話をしたりと、会場中が賑わっていました。会場では、お月見ということで、お餅を配ってくれます。いただいたお餅には、小豆がついていて少し暖かさが残っていました。お餅と島の方の優しさにほっこりとした気持ちになります。会場に集まった人々が打ち解け、徐々に盛り上がり始めた頃、なんと、

暴れ獅子が登場!

暴れ獅子は会場にいる人達の頭を噛み付いて歩きます。シュロと呼ばれるヤシ科の植物の皮を纏った獅子は、ブンブンと力強く尻尾を振り、とても生き生きとしていました。元気よく会場を練り歩く獅子の様子にみんなの顔が笑顔になります。お酒を飲んでいる後ろから噛み付かれて悲鳴が上がったり、女性には優しく噛み付く獅子の愛嬌に笑い声が上がったり、獅子の迫力に驚いて子供が泣いたり、会場中が大いに盛り上がっていました。

交互に披露されていく最後の演目が終わると、会場にいる人達全員で綱引きをします。しばらくすると綱が切れ、その綱をほどいたワラを持って無病息災と言ってお互いを叩き合います。全員の心が打ち解けたと同時に日も落ち、気付けば空には見事な月が浮んでいました。

最後は全員で大きな輪をつくり、太鼓の音に合わせて踊ります。踊り手の様子を真似て踊ってみたり、ワラを持って踊ってみたり、肩を組んで輪に加わったり、それぞれ思い思いに踊りながら綺麗な月を祝います。

 

ここまで打ち解けたお月見は初めてでした。

見渡すと全員が笑っていて、心から楽しかったねと話したのがお祭りの終わりです。

 

 

 南の島には、唄って踊って心が通う。
あたたかいお月見がありました。

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