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富士山で「the 絶景花火」を見よう。花火の見かた教えます。

更新日:2020/10/15 野村 景至
富士山で「the 絶景花火」を見よう。花火の見かた教えます。

突然ですが、フィギュアスケートのアクセルジャンプとサルコウ、フリップ、どれが好みでしょう。野球でツーシームとシンカー、シュートの使い分けは…。とまあ知れば知るほど楽しめる世界は、花火にもあります。その説明にちょうどよいイベントがありましたのでレポートがてらご紹介します。それが「the絶景花火プロローグ編」です。

クラウドファンディング系花火大会

the絶景花火とは、世界遺産の富士山をバックに日本トップクラスの花火師(煙火店)4社が花火を打ち上げようという企画。本気の大会は来年やるようですが、今年はその前哨戦が2020年10月4日に静岡県裾野市「ぐりんぱ」特設会場で開催されました。

クラウドファンディングで資金を募り、主なリターンが観覧チケットでした。今年はこのタイプの花火大会が多いですね。現地観覧できるのは15,000円以上を投資した人のみと、従来のチケット代として考えるとやや高い気もしますが、このご時世ですから高額・少人数になるのはやむを得ません。何よりもいま花火は希少。ファンドは目標額を軽々と達成しています。

花火ファン歓喜!ここに注目

花火ファンの熱い視線が注がれたのは、4社が5発ずつ打ち上げる尺玉20発。2万発ではありません。20発。なおクラウドファンディング中に追加情報が明かされて最終的にスターマイン(連発打ち上げ)もプログラムに加わりそこそこの数になったと思いますが、あくまで質が伴ってこそ。そう考える人が多く集まったのは間違いないでしょう。

ちょうど音楽イベントで曲数よりもまず出演者を確認するのと同じで、たいていの花火ファンはまず花火師を確認します。あ、もちろん地元の花火も好きですし、自宅でやる線香花火も好きです。しかしそれはそれとして、より素晴らしい花火も見たいですよね。

こちら現場です、いよいよ開幕

長い前置き恐縮であります。

虎の子のチケットを握りしめやってきました富士山麓!「ぐりんぱ」キャンプ場そばの旧ゴルフ場が会場です。いやはや期待に胸が膨らみます。ん?

the 絶景花火天候は曇り観覧車の高さですでに見えません。なんてこったい。

ええまあそんな気がしていました。何度も花火大会に行っていると一定の確率で悪天候にぶつかります。でも今回はちゃんと見たかったなあ(ガッカリ)。それでも各地から集まった花火ファンが入場ゲートに並びます。感染症対策と場所取り競争回避のため順番に入場。数百メートル斜面を登り、キャンプ場のさらに奥まったところが観覧場所です。あれ、これって偶然キャンプに来た人は超ラッキーでは(笑)。

カメラ勢の何人かはあえてキャンプ場のエリアまで離れて構図を決めていたようですが、私は素直にメイン会場入りしました。

the 絶景花火のメイン会場ソーシャルディスタンスでスカスカ、これが今風の花火会場

人口密度が低いのでそれぞれが好きな場所に陣取ります。今日は敷地の後方が人気です。

the 絶景花火たまに青空上空は風があり、雲(霧)の切れ目から青空がのぞくことも。

芸術玉のエキシビジョン

晴れ間に期待しながら開幕です。まだ少し空に明るさが残るうちに打ち上げが始まりました。どうやら富士山コラボを撮りやすいようにという配慮だった模様。しかし残念ながら背景は雲…。しょうがないです。でも「見えた!」という謎の一体感で会場が盛り上がります。

オープニングの花火横風で広がるので晴れていても富士山と写真に収めるのはけっこう難しかったはず。(菊屋小幡花火店)

その後も雲を切り裂き名玉が上がります。で、そこまでして見る花火の何が良いのかって話ですが、それはやっぱりきれいなデザイン。細かい技術的なことはさておいても、姿かたちが整っているととてもきれいに見えます。例えばこちら。

多重の層赤・緑・青・紫の層が目視できる。写真では分かりにくいが中心に銀色も。(菊屋小幡花火店)

風で流されていますが、色の層がきれいな同心円に出ていますね。色が混ざったり形が歪んだりすると全体がぐしゃっとして層に見えません。この同心円の花火をきれいに作れる花火師がデザインにアレンジを加えるとこんな風にもなります。

天竺牡丹という玉大きな星が外側にバランスよく散るとその軌跡が写真の太い線になります。(菊屋小幡花火店)

肉眼でどの瞬間を見てもきれい。一流の体操選手の演技で手先・足先までビシッと揃っていると感動してしまうのに似ています。技(玉のデザイン)の基礎点が高いうえに着地決まったー!減点無し!そんな感じです。

かと思えば別の意味で難度が高い技を繰り出してくる花火師もいます。

虹色グラデーションという玉ひとつの星の色変化、そのグループが作る色の面で全体が組み立てられている。(齊木煙火本店)

光の軌跡の1枚写真とコマ送り写真を見比べて欲しいです。肉眼で見ると虹色に光る球面がぐるんぐるん回っているようにも見えます。火薬のかたまりがこれだけ鮮やかに色を変えながら飛んでいく。もうワケが分かりませんがこれだけは言えます。素晴らしい!

こうした色やデザインは花火師によって特徴があります。何度か注意して見ているとメジャーどころはすぐに覚えてしまうでしょう。気に入った花火師があなたの「推し」になる日もそう遠くはありません。

青いスターマイン雲に邪魔されましたがスターマインも近距離で迫力十分。(紅屋青木煙火店)

雲に覆われたりレンズが曇ったりとタフな花火大会でしたが良いものが見られました。

紅屋!磯谷!菊屋!本店!

最後に今日の花火を上げてくれた花火師(煙火店)ですが、ついでにちょっと「通」っぽくなる方法をお伝えします。よく花火が上がると「たまや~」という声を聞きますが、あれって歌舞伎でいう「成田屋!」みたいなものです。だから、誰彼かまわず「イヨッ團十郎!」なんて掛け声をしていたらおかしいというか、少なくとも違和感ありますよね。

花火師(煙火店)にも屋号があるので、それぞれの名前で呼んだ方がしっくりきます。今回だと「紅屋青木煙火店」「菊屋小幡花火店」というカッコいい名前の2社が打ち上げてましたので、「紅屋ー!」「菊屋ー!」でもいいし「青木ぃ!」「小幡ぁ!」でもいいと思います。「磯谷煙火店」は「磯谷!」ですね。「齊木煙火本店」は近隣他社に別の齊木さんがいるためか「本店!」と呼ぶ人が多いように思います。

エンターテイメント系の花火大会に行く機会があれば、パンフレット等に花火会社が載っていると思いますので、「たまや~」に替えてぜひやってみてください!

the 絶景花火 雲で見えない実は完全に雲に覆われた悲しみのフィナーレ。実にくやしい…。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
美しい花火、楽しい花火大会が大好きです。親しみやすく、面白くてよくわかるレポートを心掛けています。

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