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岩手県北上市に「鬼の館」という興味深い名前の施設がある。

読んで字のごとく鬼の住処でもあるのだろうか?とゾクゾクする。実際は世界中の鬼の仮面が集められ展示されている博物館のようだ。

非常に多様な鬼という存在に対して、どのように全体像を描くのか?とても気になる。「虎の皮のパンツを履き、赤い顔をして角が生えている」という多くの人が抱いているイメージとは似ても似つかない鬼の姿もあるのだ。

今回は日本全国でも珍しい鬼の博物館があると聞いて興味を持ち、現地に行ってきた。皆さんもぜひ、鬼の奥深い魅力に浸っていただきたい。

北上市の「鬼の館」に行ってきた

鬼の館は北上市の江釣子駅から徒歩50分ほどの場所にある。駅からとても遠いので、車でのアクセスがおすすめだ。バスは北上駅から月・水・木曜日のみ運行している。直線的で堂々とした建物が見えてきたら、鬼の館に到着だ。

まず入り口を入ると、巨大な鬼面がどかーん!と置いてあって、圧倒される。これは「鬼剣舞(おにけんばい)」という民俗芸能に使われる鬼面である。鬼剣舞は北上市和賀町岩崎発祥の芸能で、角のない鬼面を使い悪霊退散や五穀豊穣を願って踊るのが特徴だ。その周りにも小さな鬼面がたくさん飾られている。

※鬼剣舞についての詳しいレポートはこちら

鬼の門を開くとそこは…

さて、この巨大な鬼面があるフロアで入場料を500円払うと、ここから奥の展示空間に進むことができる。黒くて堅固な門を見ているだけで身震いする。この先には何があるのだろうか。

この先には真っ暗な空間が広がり、鬼のイメージ動画(7分)が見られるようになっていた。映像の内容は来てからのお楽しみということにして、次の展示に進もう。

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暗い空間を抜けると、鬼面、絵画、写真など様々なビジュアルが飛び込んでくる。これは全部、鬼にまつわる展示だ。例えば、中央の眉毛が太くて目の大きい鬼は鹿児島の「弥五郎どん」という名前の鬼である。秋祭りには4.85mの大人形として登場するそうだ。このような鬼が出てきたら想像するだけで恐ろしい。ここでは、ビジュアルだけでなく、看板や柱などに展示解説が書かれているので、読んでみるとさらに理解が深まるだろう。

日本全国の鬼がずらり!種類がたくさん

こちらのコーナーでは、地図とともに、日本全国の鬼が一覧で見られるようになっている。鬼ってこんなに種類あったの?と驚く方も多いだろう。アマハゲナマハゲとか、似ているけど少し違うという鬼もある。北から南まで、日本の様々なところで鬼伝説が息づいており、民俗芸能や年中行事などの形で今に伝わっているのだ。

日本地図で確認した鬼は、データだけじゃなくて、きちんと鬼面を展示してある。なかなかこれだけの鬼面を一箇所に揃えるのは難しいだろう。例えば、右上にある島根県の石見神楽の面や、左にある愛媛県宇和島に伝わる緑色の牛鬼などとても迫力を感じるものもある。

このように耳が細長い鬼もいるようだ!これらは「修正鬼会(しゅしょうおにえ)」という大分県の旧正月の法会に仏の化身として登場する鬼とのこと。

鬼は邪悪な対象として追われるものと考えられる一方、地方においてはかえって悪を追う強い力を持つ者として迎えられていることも多いとのこと。鬼の面白さは単に悪者なのではなく、善者としての側面があり、だからこそこれだけ多様な鬼の文化があるということを知れた。

世界の鬼も見られる!日本との違いや繋がり

世界の鬼の類もたくさん展示されている。

こちらはインドネシアの聖獣バロン。光(生)を司るとされる聖獣だ。一方でこれと戦う魔女ランダは闇(死)を司るようで、両者は昼と夜があるように、戦いに決着がつかないとのこと。これは日本の神や鬼概念を考える大きな手がかりにもなるような、日本と世界との繋がりまでも感じられる展示となっている。

こんな鬼面もあるらしい。鼻に裸の人間がしがみついている!しかも左右で顔の色が違う。メキシコの悪魔とのこと。世界は広いなと改めて実感した。

北上市周辺の鬼たち

さあ、展示も終盤。日本や世界の鬼たちにたくさん驚かされてから、足元を見るとどんな鬼の世界が見えてくるのだろう。地元の北上市の鬼についても紹介されている。鬼が出現する背景から、朝廷と蝦夷と攻防の流れといった歴史的背景の知識まで詳しく知ることができるようになっている。

こちらがはじめの方でご紹介した岩手県の鬼剣舞の展示。ここでは、いかめしい鬼のような表情の面をつけた仏の化身が登場する。北上市周辺の鬼剣舞は鬼の館にも近い岩崎地区が源流とも言われており、鬼の館の野外広場にて演舞を行う団体もあるようだ。ぜひ、鬼の館のホームページを確認するか電話などで問い合わせてから、訪れてみるのも良いだろう。

鬼とは何か?最後にその全体像を知れる

最後にそもそも鬼とは何か?を詳しく解説した展示がある。鬼という漢字の成り立ちから、鬼の定義、鬼の1日まで、鬼の基本的な知識を得ることができる。

このように、鬼の館は日本全国・世界の鬼から、地元北上市の鬼まで幅広く展示・紹介している博物館だ。解説は普段読まないという方でも鬼面をたくさん眺めるだけで楽しめるし、逆に鬼について詳しく知りたいという方にでも満足できる場所であると感じた。

鬼について知りたいと思ったら、まず日本全国でも珍しい鬼の博物館「鬼の館」を訪れてみてはいかがだろうか。きっと新しい発見があるだろう。

<岩手県北上市「鬼の館」の基本情報>

●住所
〒024-0321 岩手県北上市和賀町岩崎16地割131番地

●アクセス方法
JR北上駅より車で約20分
東北自動車道北上江釣子ICより車で約15分
秋田自動車道北上西ICより車で約15分

●開館時間
9:00~17:00(入館は16:30まで)

●休館日
・12月1日から翌年3月31日までの
(1)毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)
(2)祝日の翌日(土日及び(1)の休館日の場合はその翌日)
・臨時休館日(5月25日・8月31日)
・館内整理日(11月27日~11月30日)
・年末年始(12月28日から1月4日)

●入館料
一般      500円
高校生     240円
小中学生 170円

鬼の館のホームページはこちら