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聖徳太子の千四百回忌にも奉納される舞「迦陵頻」とは?仏のような美声の霊鳥が舞う

2022/4/12
2022/4/25
聖徳太子の千四百回忌にも奉納される舞「迦陵頻」とは?仏のような美声の霊鳥が舞う

みなさん、こんにちは。美しい舞が大好きなカメラマンの佐々木美佳です。
「女人舞楽 原笙会(はらしょうかい)」にお願いして4曲の舞楽を撮影し、その魅力を1曲ずつご紹介するこのシリーズ。第2回の今回は「迦陵頻(かりょうびん)」をお届けします。

「迦陵頻」は、聖徳太子の命日である4月22日に、大阪市の四天王寺で毎年行われる「聖霊会(しょうりょうえ)舞楽大法要」の上演曲の一つにもなっています。
今年の法要はちょうど聖徳太子の千四百回忌にあたり、昨年10月から始まった法会の最終日を飾る要注目の貴重な機会ですので、この記事が舞楽の観覧に足を運んでいただくきっかけになればと思います!

「迦陵頻」とは何か?

「迦陵頻伽(かりょうびんが)」の略称である「迦陵頻」とは、極楽浄土に棲むという想像上の霊鳥のこと。上半身は美しい女性の姿・下半身は鳥の姿をしており、美しい仏の声で鳴くといわれています。

この迦陵頻の舞う姿が舞楽「迦陵頻」という演目になりました。

 

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名前の由来は、サンスクリット語の「kalaviṅka(カラヴィンカ)」を音訳したもので「迦陵頻急(かりょうびんのきゅう)」や「迦婁賓」とも書きます。
そして美しい芸者や花魁、美声の芸妓のことを迦陵頻伽とも呼んでいたそうです。

迦陵頻に会う方法は3つ!

この迦陵頻を見てみたい!と思った場合、見る方法は主に三つあります。

①お寺の三門や鐘楼の天井を見上げてみる

例えば京都では知恩院三門、妙心寺三門、東福寺三門の天井画で見られます。

方広寺にて撮影。鐘楼の天井には迦陵頻や天女が描かれている

大阪の専念寺に行き、御朱印帳でいただくのもよいですね。

うーん、美しい…。このように日本の仏教美術では菩薩形の上半身に翼を持ち、鳥の下半身の姿で描かれています。

平面だけではなく仏像や彫刻などの立体バージョンもあります。門などに彫刻されていたり、屋根の先に塑像がついていたりします。

②能「羽衣」

能の演目である「羽衣」の中でも迦陵頻に出会えます。そう、とても有名な「天女の羽衣が松にかかっている」というあの物語です。

地謡(じうたい)の歌詞の中にはこの「迦陵頻伽」が出てきます。歌詞付きの動画はこちら。26分のあたりに出てきます。

③舞楽(雅楽)

迦陵頻は、今回の主題である舞楽、つまりお祭りの奉納舞で見ることができます。舞楽は雅楽の一種で、舞を中心にした曲を指します。

雅楽は平安時代の頃までに、中国大陸や朝鮮半島からやってきた当時の最新の音楽です。その珍しい唐からやってきた貴重な曲を神様に捧げていたわけです。

雅楽と舞楽の基本知識は、下記の記事で解説していますのでぜひご参照ください。

迦陵頻とはどんな舞?

迦陵頻という舞はどのような特徴があるのでしょうか?
伝統芸能・舞楽を習える「原笙会(はらしょうかい)」の生川先生にお話を聞くと、

「迦陵頻は中国大陸から伝わった唐楽(左舞)に属します。
昔インドで祇園精舎の供養日に、迦陵頻伽が飛来し、鳴きながら大空を舞ったという故事があり、僧・仏哲が日本に伝えたといわれ、仏教が盛んであった物語の時代背景を象徴する舞楽です。
手には銅拍子(どびょうし)を打ちながら舞い、銅拍子の音は迦陵頻伽の声をあらわしているといわれています」

と解説していただきました。

迦陵頻の装束の特徴

装束については原笙会の舞人であり、僧侶でもあり、日本画家でもある中田文花先生にお願いして、迦陵頻の絵を提供していただきました。日本人形のようで可愛い…。やっぱり絵があるとわかりやすいですね。

上から順番に説明すると、まず頭には紅白の梅の枝。明治神宮や四天王寺、京都の時代祭などでは桜の造花をつけています。そして金銅の天冠(てんがん)。顔は白塗りの厚化粧です。
上半身は、両脇の下を縫い合わせず動きやすい緋色の「闕腋の袍(けってきのほう)」と呼ばれる衣装で、迦陵頻伽の紋様が刺繍されています。背中にはそれぞれの舞楽団体で異なるデザインで描かれる羽を付けます。

ちなみに中田先生としては、天王寺楽所雅亮会の羽が美しくオススメだそうです。

毎年4月22日に四天王寺で行われる「聖霊会舞楽大法要」で舞を奉納するのが、天王寺楽所雅亮会です。迦陵頻を含め10曲も披露され、誰でも無料で観覧することができます。
さらに、今年はYoutubeでライブ配信も行われる予定です。

そして、手に持っているのは小さなシンバルのような打楽器「銅拍子(どびょうし)」。そして袴は白の括袴(くくりはかま)です。すね当てのようなものは長足(ちょうそく)と言い、緂(だん/段染、だんだら)の脛(はばき/脚絆)に、糸鞋(いとぐつ)をつけます。

極楽浄土にすむという美声の霊鳥を表現する舞、「迦陵頻」をご紹介しましたがいかがでしたか?
もっと知りたい、自分でも習ってみたいと感じた方もいるのでは。

通常、雅楽は楽器ができるようになってから舞を習います。しかし原笙会では若くて綺麗なうちに女性が舞えるようにと、舞に特化して勉強をしています。装束の着付体験も可能ですので気になった方は、ぜひ下記のホームページものぞいてみてください。

■女人舞楽 原笙会
〒659-0015
兵庫県芦屋市楠町14-20-115
TEL/FAX:0797-23-1886
ホームページはこちら

■日本画家で舞踊家の中田文花先生のホームページはこちら

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