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石が美しい町並み。日本遺産「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」を作った職人たち

尾道市文化振興課
尾道市文化振興課
2023/3/10
2023/3/10
石が美しい町並み。日本遺産「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」を作った職人たち

文化庁が認定している日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて文化・伝統を語るストーリー。尾道市も「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」が日本遺産として認定されています。

そんな町を構成する要素として見逃せないのが、尾道を形作る石たち。燈篭や手水鉢、鳥居、狛犬など、美しい石造物を作ったのは、尾道石工という存在です。知ればもっと町歩きが楽しくなる!尾道の石の世界をご紹介します。

「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」とは

写真提供:栗山主税

尾道水道と花崗岩が露出する尾道三山(大宝山・摩尼山・瑠璃山)に囲まれた尾道市。実は多くの良質な石材に恵まれてきました。

「箱庭的」と言われるこの町の風景は、町が発展するにつれて建てられた社寺の周辺に、家々が密集して建ち並んだことで、水道の間際まで家々がせまる状態に。細く入り組んだ路地や坂道は、人々にとっての生活基盤。そんな路地や坂道を作る石段、石畳、石垣などは、尾道三山から切り出された石でできているのです。

そう考えると、尾道は狭小な空間に展開する巨大な石造物!

路地や坂道を歩くだけで、こうした石垣や石段、井戸。神社やお寺に行けば、石塔や狛犬、燈籠などの美しい石造物や巨岩に出会うことができるのです。

尾道の石造物を作った「尾道石工」とは

尾道石工とは、旧市街地である江戸時代の「尾道町」や明治から昭和初期の「尾道市」エリアで暮らし、石造物を作っていた石工です。石工とは今で言う、石材店や彫刻家といったところでしょうか。

石造物には時折、作った人の名前(銘)が彫られています。この銘部分も、石造物の見どころ!「尾道石工」「尾道住石工」「石工尾道住」「尾道」という文字が、名前の前に入っていたら、それが尾道石工の作品の証しです。

古い石工としては、享禄4年(1531)の芥河某という銘が残っていることがわかっています。また、16~17世紀の石工銘を見てみると「大工」「石大工」や「小工」と当時の呼び名で彫られているものを見ることができます。棟梁的な立場の石工を大工、その下につく石工を小工と呼んでいたのではないか、と考えられているそうです。このように石に彫られた銘から、昔の制度を感じることができるんですよ。

燈篭や鳥居、石畳など石造物が数多くある尾道ですが、尾道石工の銘が一番多く彫られているのは、なんと獅子・狛犬(略して、狛犬)! これらは、まさに尾道石工の代名詞ともいえる作品たち。石工たちも、狛犬作りに自信を持っていたのですね。

町並みの中で出会える尾道石工の名作

数ある尾道石工の作品群のなかでも、観光を楽しみながら、チェックしたい名作をピックアップしてみました。

御袖天満宮の石段

ただの石の階段と侮ることなかれ! 御袖天満宮の 55 段の石段は、長さ5.2mの一本石が、55本積まれているというアーティスティックな作品なんです。最上段をみてみると、わざと接ぎ目がつくられているのもポイント。今も少しの崩れもない、美しい造形を目にすることができます。映画「転校生」の階段オチのシーンでも有名な場所なんですよ。

千光寺新道の「天春の石垣」

千光寺へ向かう千光寺新道。こちらの美しい石段の横にある石垣は、大正時代に作られたもの。お城の石垣のような大きな花崗岩が多く使われた石垣「天春の石垣」と呼ばれ、美しいそりも見られます。こちらは、明治~大正時代の実業家である天野春吉氏が石段とともに整備したものなのだそう。

持光寺の石門

この立派な竜宮造りの石門も尾道石工の作品。ひとつの岩から作られたのではなく、いくつもの石を組み合わせて作っています。尾道石工の技巧が光る作品なのです。

八坂神社の玉乗り狛犬

きれいな球の形をつくるというのは、簡単ではありません。でも、尾道石工は、硬い石から球の形を作ることが得意でした!
八坂神社にはそんな大きい球にのった狛犬さんがいます。写真でみたものと実物とではサイズ感が異なるので、意外と大きい!と感じるかも!?

見逃しがちな石に目を向ければ、町の景色も変わる!?

知らなければ通り過ぎる階段や石造物。ちょっと立ち止まって注目してみると、人の手が作ったとは思えない美しさに気づくことができます。表の尾道も良いけど、ちょっと裏の知られざる尾道の姿にもぜひ注目してみてください!