いよいよ今年も残りあとわずか。新年になると、願掛けや縁起物として「だるま」が多くの場所で売られているのをよく見かけますね。なかでも、
◎高崎だるま市(群馬県高崎市)
◎毘沙門天大祭 だるま市(静岡県富士市)
◎深大寺 だるま市(東京都調布市)
の3か所は、その規模などから「日本三大だるま市」や「関東三大だるま市」と称されています。この記事では、そもそも「だるま」とは一体何なのかという由来や、3つのだるま市の特徴などについてご紹介します。
(2022年12月公開記事を一部再編集しています。2023年12月編集部更新)
「だるま」の起源とは?
だるまには、モデルとなった人物がいたことをご存知でしょうか。
その人物は「達磨大師」といい、禅宗の始祖とされます。達磨大師は母国のインドから中国に渡り、禅宗の教えを伝えて、日本へ渡来した際には聖徳太子と面会したという伝説を持っています。
達磨大師は、150歳まで生きたという謎に満ちた人物ですが、出生地にも諸説あり、インドの王子だったという他に、胡人(こじん)、つまり現在のイラン生まれという説もあります。達磨大師の絵や、現在のだるまもヒゲが特徴的に描かれていますが、立派なヒゲを持っていたというのも頷けます。
「だるま」はなぜ手足がない?なぜ赤い?
達磨大師が壁に向かって9年間も座禅を組んだという逸話があります。この修行の結果、大師の四股は腐ってなくなってしまったとされており、このエピソードから胴体と頭だけのだるまを作るようになったそうです。こちらはいくぶん怖い話ですね。
では、ほとんどのだるまの色が赤なのは何故でしょうか。諸説ありますが、モデルである達磨大師の当時の服の色という説や、赤いものは邪気を祓うという魔除けの説などが有力です。
もともとは青などに塗られていたものもあったようですが、江戸時代に天然痘が蔓延した際に、身を守るために赤いだるまを枕元などに置くのが流行し、これがきっかけで赤色が定着していったと言われています。
◎群馬 高崎だるま市はイベントが盛り沢山!
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群馬県高崎市では、例年1月1日と1月2日に「高崎だるま市」が開かれています。
高崎市はだるまの一大生産地として知られています。高崎のだるまの顔は「眉毛は鶴、鼻から口ヒゲは亀」として描かれ、縁起の良い動物が表現されています。
高崎のだるま市は、200年以上の歴史があり、近年は市内の達磨寺境内で行われていましたが、2017年からは高崎駅西口の駅前通りに場所を移し、開催日も正月元旦からと改め、高崎駅前に新たな賑わいを生み出しています。
会場となる高崎駅西口前通りでは、さまざまな催し物が待っています。高崎市が誇る名物焼きまんじゅう、モツ煮などの高崎グルメ屋台が並ぶ「開運たかさき食堂」でお腹を満たして、和太鼓・三味線、ダンスといったステージにぜひ心を躍らせてみてください。
特大だるまに干支だるま、名入れサービスも
会場には、高さ2.8mの特大だるまが展示されています。一緒に記念撮影をして、縁起の良い新年のスタートを切りましょう!
販売されているだるまは、伝統的なものだけではなく、干支にちなんだだるまや、バリエーション豊かなカラーだるまもあります。その場で希望の文字を入れてくれる名入れサービスは例年長い行列ができます。
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新春一番、高崎の街に響く、だるま職人の活気あふれる掛け声を聞きながら、お気に入りのだるまを探すのはどうでしょう。
◎富士市 毘沙門天大祭!その賑わいは東海一
静岡県富士市の香久山妙法寺では例年2月7日、8日、9日の3日間に「毘沙門天大祭」が開催されます。
例年、数万人の参加者で賑わいを見せるこのお祭りは、全国各地からだるまのお店が並ぶことでも有名なため「日本最大のだるま市」として知られています。また、大祭に出店する露店の数の多さや賑わいを讃えて「東海一の高市」とも言われています。
旧正月の7日・8日・9日の3日間は、「毘沙門天王」が人間界に現れて人々の願い事を聞いてくれると言われています。そのご利益を求めて、妙法寺には昔から大勢の人々が参拝しています。
また、富士市は製紙業が盛んなこともあり、その半端紙でだるまを作り始めたことから、歴史的なだるまの生産が盛んでした。この二つが結びついて、現在のようにだるま市としても知られるようになったのです。
富士市の鈴川地区で作られる鈴川だるまは、いかめしい髭面ながらも目鼻立ちが優しげなのが特徴です。
盛りだくさんの露天に植木市まで!
日本一のだるま市ということもあり、全国各地からだるまが集まるのはもちろん、福をかき集める縁起物の熊手を取り扱う露店、別会場では植木市や道具市も開催されます。
甘栗、わたあめ、粉物など、お祭りフードを扱う露店も大祭を盛り上げてくれます。天気が良好なら、雄大な富士山を眺めつつお祭りを楽しむこともできるでしょう。
2022年の詳細な現場レポートもぜひご覧ください。
◎調布市 深大寺だるま市は紅白梅に彩られて
東京都調布市の深大寺では例年3月3日、4日に「深大寺だるま市」が開催されます。
深大寺だるま市は、深大寺の「厄除元三大師大祭」という行事にあわせて、境内にて開かれるだるま市です。例年、寺山門の紅梅白梅が満開の時期に行われることもあって、約10万人余の人々が訪れる大祭です。
深大寺は天台宗の寺ですから、禅宗由来のだるまとは関係ないように思えます。なぜだるま市が立つようになったのか詳細は不明ですが、一説には、深大寺のある多摩地区一帯は、昭和初期まで養蚕が盛んだったことに関係があるとのこと。繭玉の形がだるまに似ていることから、縁起の良いものとしてだるまが好まれるようになったのではないかと考えられています。
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この地域で作られる「多摩だるま」は、やはり養蚕農家が豊作や無病息災を願って作ったのが起源。素朴で、ちょっととぼけた表情が可愛らしいですね。
目玉が漢字の目入れだるま
だるま市で購入しただるまは特設の「だるま目入れ所」で、お坊さん直々に目入れをしてもらえます。新しいだるまの左目には、物事の始まりを意味する「阿」が入り、心願成就となっただるまの右目には物事の成就を意味する「吽」が入ります。
両目に「阿吽」が入っただるまは、感謝の気持ちとともにお寺へ納めましょう。
2021年の深大寺だるま市の詳細なレポートもご覧ください。
まとめ
日本が誇るお祭り「日本三大だるま市」と、だるまに関する豆知識を紹介しました。古くから願掛け・縁起物として、日本の生活に馴染みのあるだるまの奥深さを知ることができたでしょうか。
良い1年を迎えるために、元日や2日は「高崎だるま市」、2月なら「毘沙門天大祭」、3月は「深大寺だるま市」にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。