「くんち」や「おくんち」という言葉を聞いたことがありますか?
秋になると、その年の収穫を神様に感謝し、山車(だし)を曳いて練り歩いたり踊りを奉納したりしますが、その秋祭りを九州北部では別名「くんち」と呼びます。地域性や歴史を重んじているお祭りで、どれも独自性があるものばかりですが、中でも有名なのが
◎長崎くんち(長崎県長崎市)
◎博多おくんち(福岡県福岡市博多区)
◎唐津くんち(佐賀県唐津市)
の3つで、「日本三大くんち」に数えられています。この記事では、それぞれのお祭りについて見所や由来などを紹介していきます!
※例年の内容を参考にご紹介しています。今年は規模や内容を縮小・変更、または中止の場合もあるため、詳しくは主催者からの情報をご確認ください。
「くんち」の言葉の由来は?
「くんち」という響きがちょっと不思議なこの言葉ですが、一体どこから来たのでしょう?
語源には諸説ありますが、最も有力なのは祭り開催日の「重陽(ちょうよう)の節句」の日付に由来するというもの。毎年9月9日は重陽の節句で、旧暦のこの日は邪気を祓って無病息災を祈り、秋の収穫に感謝するお祝いや祭りが各地で行われていました。開催日を方言で「九日(くんち)」「お九日(おくんち)」と呼んでいた九州北部では、それが祭りの名前として定着したという説です。
他には、収穫物を神様に供える日「供日(くにち)」が転じたという説もあります。
重陽の節句については下記で詳しく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
では、3つの「くんち」をそれぞれ詳しくご紹介します。
長崎くんち
長崎くんちは、長崎市で「おすわさん」と呼ばれ親しまれる諏訪神社の秋季大祭です。例年10月7日~9日の3日間で開催されます。
祭りの始まりは、1634年に2人の遊女が諏訪神社で謡曲「小舞」を奉納したこととされています。以降、長崎奉行の援助によって年々盛大になり、出島に来航したポルトガルやオランダなどの西洋文化や、中国・ベトナムなどの文化の影響を受けた「奉納踊」と呼ばれる演し物(だしもの)を祭りに取り入れるようになり、現在の形に近づきました。
祭りの最大の見所は、やはりこの奉納踊。
代表格の「龍踊(じゃおどり)」をはじめ、「御朱印船」「鯨の潮吹き」といった曳き物や、屋根に大きな座布団を積み重ねた太鼓台を、太鼓の打ち手もろとも宙に放り上げる勇壮な「コッコデショ」、長崎に漂着した二人のオランダ人を模したユニークな「阿蘭陀万歳(おらんだまんざい)」など、魅力あふれる演し物が満載です。
これらの奉納踊は、1979年に国の重要無形民俗文化財にも指定されていて、祭りの期間中は諏訪神社や八坂神社のほか、中央公園くんち観覧場などで見ることができます。また、市内中心部の店先や路上でもダイジェスト版が楽しめます。
現在、奉納踊を行う団体「踊町」は長崎市内に全部で58町。全町が7つの組に区分され、一年に一組ずつ当番となって奉納踊を披露します。ですので、毎年違う踊町の演し物が楽しめ、7年ですべての奉納踊が見られることも特徴の一つです。詳しくは下記の記事もぜひご覧ください!
◎2022年の開催は?
2022年は、新型コロナウイルスの影響によって残念ながら中止になってしまいました。しかし、代替イベントの「ながさき大くんち展」が10月7日~10日まで、出島メッセ長崎で開催中です。
会場には、出演踊町43町の演し物が一堂に会し、すべてを近くでじっくり見られるチャンス。長崎くんちの歴史、料理や刺繍などに関する講演会やトークショー、映像の上映、龍踊やシャギリ(お囃子のこと)の演舞などもあり、盛りだくさんのイベントになっています。
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■ながさき大くんち展
日程:10月7日(金)〜10月10日(月・祝)
時間:10:00〜20:00 ※最終日のみ12:00まで
場所:出島メッセ長崎
入場無料
※詳しい内容やイベントスケジュールなどは長崎大くんち展ホームページでご確認ください。
博多おくんち
写真提供:福岡市
福岡市博多の総鎮守で、博多っ子からは「お櫛田さん」の愛称で親しまれている櫛田神社。毎年7月に行われる奉納行事「博多祇園山笠」は、町中が熱狂する祭りとして有名ですが、毎年10月23日~24日に行われる秋季大祭が「博多おくんち」です。
祭りの歴史は古く、1200年以上前から始まったとされています。毎年11月23日に行われる、その年の新穀を神様にお供えして感謝する、新嘗祭(にいなめさい)が起源となっていますが、1953年から時期を前倒しにして、名称も現在の博多おくんちに変わりました。
写真提供:福岡市
期間中は様々な神事が執り行われますが、24日に、牛に曳かれた神輿を中心とした行列が約5kmにわたって町を巡行する「御神幸」が最大の特徴にして見所です。
例年は牛車の後ろに獅子頭や稚児行列、ミス福岡が乗ったオープンカー、ブラスバンドが続き賑やかな御神幸パレードを繰り広げますが、コロナ禍では感染拡大防止のため開催が見送られてきました。
また、櫛田神社の境内では、23日の昼間に新鮮な魚や野菜が揃う五穀豊穣市を開催。夕方からは2,000個以上の灯明を使って地上絵を描く「千灯明」が行われます。
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◎2022年の開催は?
今年2022年は、例年通り10月23日(日)・24日(月)の2日間で、3年ぶりに全行事が催行されることになりました。
23日の五穀豊穣市は10:00~17:00、秋季大祭が11:00~、夕方からは千灯明が行われます。
24日の御神幸パレードは14:00に櫛田神社を出発予定です。詳細は、福岡市公式シティガイド「YOKA NAVI よかなび」などでご確認ください。
唐津くんち
唐津くんちは、佐賀県唐津市で例年11月2日~4日に開催される、唐津神社の秋季例大祭です。1958年に佐賀県の重要有形民俗文化財、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されており、例年、唐津くんち目的の観光客が約50万人も訪れます。
最大の見どころが、江戸時代から続くお神輿の渡御と、お神輿にお供する個性豊かなヤマ(曳山)の数々。最古の曳山は、文政2年(1819)に氏子町の一つである刀町によって奉納された赤獅子といわれています。それ以後、明治9年までの57年間に15台の曳山が製作されました。そのうち14台が150年近く経った今も大切に受け継がれ現存しています。
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祭りは1日目の夜7時半の宵曳山(よいやま)から始まります。堤灯の灯りがともった曳山が、旧城下町を巡行しながら唐津神社に集合する光景はとても幻想的です。
2日目は「御旅所神幸(おたびしょしんこう)」が行われ、唐津くんちの最大の見どころである「曳き込み」を目当てに、県内外から大勢の見物客が訪れます。お神輿と曳山が目指すお旅所は西の浜にあるため、車輪が砂地に埋もれなかなか進みません。曳子たちの掛け声は最高潮に達し、豪快に曳き込む様子はまさに圧巻です。曳山は一番曳山の刀町・赤獅子から十四番曳山の江川町・七宝丸まで、制作年代順に並んで旧城下町を回ります。
3日目の翌日祭では、御神幸とほぼ同じ巡路で旧城下の東西約8kmを「エンヤ、エンヤ」「ヨイサ、ヨイサ」という威勢のよい掛け声とともに回ります。
◎2022年の開催は?
今年2022年は、例年通り11月2日~4日までの3日間で開催予定です。
宵曳山は11月2日(水)の19:30~、御旅所神幸は11月3日(木・祝)の9:30~、翌日祭が11月4日(金)10:00~の予定となっています。詳細や最新情報は、唐津市公式サイトや唐津観光協会ホームページなどでご確認ください。
まとめ
日本三大くんちには、毎年多くの観光客が訪れます。それぞれ内容がだいぶ異なりますが、秋の風物詩としてどこも風土の魅力をたっぷりと感じられるお祭りばかりです。興味がある方はぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。