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北前船の面影を伝える曳船、輪踊りに宮獅子も!石川県小松市「安宅まつり」ならではの魅力とは?

2023/9/18
2023/9/17
北前船の面影を伝える曳船、輪踊りに宮獅子も!石川県小松市「安宅まつり」ならではの魅力とは?

石川県小松市安宅(あたか)は、昔から北国街道の関所「安宅の関」や北前船の寄港地として、人、物、情報が集まってくる場所として賑わってきた。祭りもなかなか賑やかだ。

煌びやかな衣装を着た女性が踊る輪踊りや、町中に巨大な曳船が登場するなど盛大に行われる。安宅まつりの特色について触れながら、この町ならではの祭りの雰囲気をお伝えしたい。

安宅まつりとは?

石川県小松市の海沿いにあり「安宅の関」として日本史などに登場する安宅。ここで安宅住吉神社の祭礼として、毎年9月に3日間行われる町最大の祭りが安宅まつりだ。9月7・8・9日に近い日曜日(今年は10日)を本祭り、前日を宵祭り、翌日を後祭りとする。地域の信仰を集める安宅住吉神社を拠点として行われている。

1日目と2日目に神輿渡御、3日間にわたって宮獅子が練り歩き、2日目と3日目には七福神を飾り付けた船を曳く曳船巡行が行われる。曳船は江戸時代以降に賑わいを見せた北前船を模して作られており、船上では男たちによる「木遣り音頭」が謡われる。また、若い女性たちが赤い着物に日本髪を結って踊る輪踊りも行われる。曳船と宮獅子は町内の家を一軒一軒巡る、門付けのやり方で町内をめぐる。

暗闇に光る日本髪「輪踊り」

今年は9月10日19時から、安宅コミュニティーセンターで、輪踊りが開催された。歌に合わせて踊る姿、暗闇に光る日本髪や、赤い衣装が印象的だ。

昔は今以上に、結婚を見定める出会いの場として意識されていたことだろう。今のように出会いの場が数多くはなかった時代に、祭りがその貴重な場になっていたのだ。そのため、「嫁定めの踊り」とも呼ばれていたという。この踊りは勝楽寺の境内での盆踊りとして始まったのが始まりで、その起源は約400年前に遡る。

町中を練り歩く「曳船」

次の日の午前中、安宅の迷路のような町を歩いていると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。その声を頼りに辿って行くとなんとそこには大きな船!扇子を持った男たちが船を乗りこなしているかのように堂々と立ち、それを曳いて歩く人もいる。

この曳船は北前船(※)の寄港地として栄えた安宅町の歴史を今の時代に伝えている。江戸中期から明治30年代まで栄えた北前船の終了後、当時の賑わいを偲んで始められたらしい。

※北前船は大阪から下関を経由して北海道に至る「西回り航路」の海運船。車や飛行機などがない江戸時代から明治時代にかけて、物流の大動脈を担ってきた。

「金貨一封、御酒肴は沢山(さわやま)…!」などと口上を述べ、家を一軒一軒門付けして回っている。それにしてもこんなに大きな船が家にやってくるとは驚きの光景だ。

思わず、「え、こんなでかい船が家の玄関前に来るの!?」と吹き出してしまいそうである。

地域に愛される「宮獅子」

この地域には巨大な獅子舞が継承されている。その名も宮獅子。牡丹の花が大きく描かれた蚊帳(学校では蚊帳なし)に、大きな獅子頭。棒振りがそれと対峙し、獅子を殺す「獅子殺し」の演舞が有名で、金沢由来の典型的な加賀獅子の形態である。

この宮獅子は家を一軒一軒回るだけではなく、小中学校や漁業組合、公民館など地域の主要な場所で演舞が行われていた。子どもの頭を噛むなどして、歓声が上がり、とても良い光景だと思った。獅子舞を通じて、豊かな地域交流が育まれていたのだ。

この宮獅子だけでなく、各家を回る子ども獅子の姿も見られ、獅子舞が地域に根付いている様子がうかがえた。

石川県小松市安宅の名所

安宅といえば、祭りだけではない。源平合戦の折、壇ノ浦の戦いの後に源頼朝に追われる身となった源義経は、山伏の一行に身を変え奥州平泉を目指していたが、安宅の関の役人に見とがめられ足止めされた。

しかし、主人・義経の正体を隠そうと弁慶が機転を利かせ、「お前のせいで疑われた」と金剛杖で打ちのめし、その迫力と忠義に打たれた役人が通行を許可した話で知られている。歌舞伎化された勧進帳の場面である。

安宅の関付近の海は静かで浜は延々と続き美しく、昔、義経一行が眺めた海もこのようであっただろうかと思いをはせる。

そしてもちろん、安宅住吉神社もある。神社の境内地には安宅の関があり、そのほか弁慶像などが見られた。また、安宅まつり当日にはパンフレットを配布しており、曳船や宮獅子の日程や進行ルートを知ることができたので助かった。

ここだからこそという体験

改めて安宅まつりを振り返ると、例えば北前船の面影を残すこの土地だからこそ生まれた曳船はとても印象的だった。
この曳船は家を一軒一軒回ったり、小学校を回ったりする、門付けの性質を持っていた。歴史や風土とつながる感覚が得られ、この土地ならではの伝統的なお祭りという要素を強く感じられた。

輪踊りも宮獅子も同様に、地域の暮らしとの結びつきが強い。ここだからこそ、というお祭りの空気感を感じられた。

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