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小5で盆踊り太鼓に開眼! 夏は最大約30夜も登板! 華麗なバチ捌きで会場を盛り上げる若き盆太鼓叩きの情熱とは

更新日:2024/3/7 小野 和哉
小5で盆踊り太鼓に開眼! 夏は最大約30夜も登板! 華麗なバチ捌きで会場を盛り上げる若き盆太鼓叩きの情熱とは

みなさん、盆踊り大会の太鼓って、どのようなイメージをお持ちですか? 地域によっても、さまざまな特色があると思いますが、なんとなく紅白の提灯が連なったヤグラの上で、叩き手が「ドンドン、カッカッ」「ドドンガドン」と、CDに合わせて太鼓を打ち鳴らしている姿をイメージするのが、一般的ではないでしょうか。

写真:Photo AC

そのイメージを維持したまま、こちらの動画をご覧ください。

え、これが盆踊りの太鼓さばき!?と、思わず二度見してしまうほどの超絶テクニックです。

動画の投稿主は、東京都新宿区を中心に盆太鼓の叩き手として活動をされている盆太郎(青豚)こと竹田さん。そのプレイヤーとしての凄まじさを物語るエピソードを列挙すると……

・東京生まれ新宿育ち、小学5年生で盆太鼓(盆踊りの太鼓)の魅力に目覚め、以降盆太鼓一筋

・常にぶっつけ本番で、ほぼ練習なしでヤグラの上で太鼓を覚えていった

・毎年、7月〜9月の盆踊りシーズンで合計約30夜、盆踊り太鼓を叩く

・手の皮がベリベリになるも、シーズン後半では皮がガチガチに硬くなっている

・知らない曲がいきなり流れても、即興で太鼓を叩くことができる

と、すごいものばかり。

今回は、そんな超絶盆太鼓プレイヤーの竹田さんにインタビューをし、そもそも盆踊り太鼓の叩き手ってどうやってなるの? 盆太鼓の魅力ってなに? そんな基本的な疑問から、竹田さんの生い立ちまで、聞いてみることにしました。

知られざる「盆太鼓」の世界へようこそ……。

“フリーランス”の盆太鼓叩きとして新宿区を拠点に活動

小野
小野:
今日、初めてお会いするのですが、竹田さん、見るからにかなりお若いですね……。

竹田
竹田:
1993年生まれ、今年で30歳です。

小野
小野:
竹田さんはどこかの太鼓の会などに所属されているんですか?

竹田
竹田:
「新宿太鼓会」という会に所属しています。それ以外にも、会としてはでなく、フリーとして叩かせていただいている会場もあります。

小野
小野:
え、盆踊り太鼓の叩き手にも「フリー」という概念があるんですか?

竹田
竹田:
そうなんです。僕の知っている範囲での話になりますが、東京のほとんどヤグラ(盆踊りの会場)では、受け持ちの太鼓会が決まっています。そういったヤグラでは、その太鼓会に所属している人間しか叩けないのが基本なんです。

小野
小野:
主催者に依頼された太鼓会の人しかヤグラの上で叩けないのですね。当たり前と言えば、当たり前かもしれませんが。

竹田
竹田:
ところが、僕が活動拠点にしている新宿区の早稲田はちょっと特殊で、会が入っていない盆踊り会場がけっこう多いんですよ。そういった場所では、特定の太鼓会に所属していない、フリーの人でも太鼓を叩かせてもらえるんです。

小野
小野:
なるほど、そういう意味での「フリー」なんですね。太鼓の練習はいつもどれくらいされているのですか?

竹田
竹田:
や、普段、練習は全然してないですね。「新宿太鼓会」でもぶっちゃけ本番まで一回も練習会がないんですよ。それが気楽で、いいんですよね。

小野
小野:
え、そうなんですか!?

竹田
竹田:
最近になって、盆太鼓の仲間同士で、飲み会をする口実で、月に一回、スタジオをとって練習会をするようになったんですけど(笑)、昔は「本番=練習」みたいな感じで、見よう見まねで太鼓を叩きながら、ぶっつけ本番で覚えていきました。

小野
小野:
(そんな感じで、あそこまで上達できるんだ……)

盆踊り好きのおばあちゃんがきっかけで、盆太鼓の世界に

小野
小野:
そもそも、竹田さんはどういう経緯で、盆踊りの太鼓叩きになったんですか?

竹田
竹田:
きっかけは、おばあちゃんですね。おばあちゃんは盆踊りの踊り手をやっていて、盆踊りがあればどこでも行っちゃうという、いまでいう強めの盆踊ラーという感じだったんですよ。

小野
小野:
はいはい。

竹田
竹田:
その影響なのか、おばあちゃんの長男、つまり僕の父も太鼓や神輿が好きで。実は父親も盆太鼓を叩いたんですけど、そのきっかけというのも新宿区の住吉町で開催されていた盆踊り大会があって、いつもお金を払って外部から盆太鼓の叩き手を呼んでいたんですけど、父が「お金がもったいないから、俺らがやる」って言い出したらしくて。

小野
小野:
いかついですね(笑)

竹田
竹田:
竹田家が太鼓を始めた理由が「お金」だったという(笑)。最悪の理由だなと思いつつ、僕は面白がって人に話すんですけど。ともかく、それをきっかけに、僕も含め、おばあちゃんの孫世代5人で太鼓の練習会をやるようになったんですよ。タイヤを叩きながら。

小野
小野:
ほぼ、強制的に。

竹田
竹田:
そうです。父としてはかわいい一人息子に太鼓をやらせたいという願望があったと思うんですけど、僕は小学校4年生くらいまで、ずっと太鼓が嫌いで、イヤイヤやっていたという感じでした。

小野
小野:
そこから盆太鼓にのめり込むようになったきっかけは、なんだったんですか?

竹田
竹田:
新宿区原町に天祖神社という神社があるんですけど、小学5年生の時に、おばあちゃんの知り合い方から、そこの盆踊り大会に叩き手として呼んでいただいたんです。そこで見よう見まねで太鼓を叩いていたら、すごく面白くて。これまでイヤイヤやりながら培ってきた太鼓の技術がここで発揮できるんだと。

小野
小野:
それだけ充実感があったんですね。

竹田
竹田:
それで味をしめて(笑)、また来年もここで叩きたいと思ったんです。友だちの両親が町会の人にお願いしてくれたのと、僕自身も町会の方に直接会いに行って、太鼓を叩かせてくれるようにお願いしました。

小野
小野:
自分からお願いしに行ったんですか!?

竹田
竹田:
当時の拙い技術でよくそんなお願いをしたなとは思うんですけど、とにかく、太鼓を叩いて目立ちたい、という気持ちが優っていたんでしょうね。

小野
小野:
それで、太鼓が好きになった。

竹田
竹田:
はい。小学校の卒業論文にも盆太鼓のことを書くくらい熱中しましたね。当時は覚えたテクニックを披露して、注目を集めるというのが楽しくて、本当に好き勝手に叩いていたと思います。自分が楽しければいいというか、踊り子さんのことは全然考えていませんでしたね。

小野
小野:
その後も、太鼓会など組織には所属せずにずっとフリーで太鼓を叩いていたんですか?

竹田
竹田:
そうですね、地元の早稲田を中心に叩かせてもらっていました。高校の時は、和太鼓部に所属して三宅太鼓も経験しました。

小野
小野:
フリーとして活動されていた竹田さんが、太鼓会に入った理由はなんだったんですか?

竹田
竹田:
やはり太鼓会に所属すると、叩ける会場も増えますし。新宿区育ちということもあって、新宿太鼓会さんに「会に入らせてください」とお願いして、所属することになりました。

踊り子さんに「踊りにくい」って思われたらもう終わり

小野
小野:
盆踊りの太鼓を叩く楽しさってどんなところにあるんですか?

竹田
竹田:
ヤグラの上で太鼓を叩くのってすごく気持ちいいんですよね。コロナ禍で盆踊り大会がない時期も、人に呼んでいただいて、体育館などの会場で叩いたこともあるんですけど、やっぱりヤグラがあって、提灯があって、出店があってという夏祭りの雰囲気って全然違うんですよ。それだけで気分が上がるというか。

小野
小野:
盆太鼓を叩く人って、動きがキレキレだったり、バチを宙で回転させたり、かっこいいじゃないですか。そういう派手なパフォーマンスで魅了するのも、気持ちよさそうですね。

竹田
竹田:
そうですね。でも忘れてはいけないのは、一番大事なのは踊り子さんのことを考えて叩くということです。確かに僕もバチを回したりして魅せるパフォーマンスをすることはあるんですけど、踊り子さんというのは踊りをしにそこに来ているわけですから、バチ回しって本来はいらないものですし、絶対に叩き手の自己満足なんですよ。

小野
小野:
な、なるほど。

竹田
竹田:
踊り子さんに「踊りにくい」って思われたらもう終わりだと思っています。だから、たまに踊り子さんから「いいよ」「踊りやすいよ」と声をかけていただくと、それはもちろんすごく嬉しくて、太鼓やっててよかったなとは思いますが、心のどこかでは「今日はセーフ」って安堵している自分もいて。

小野
小野:
それぐらいの緊張感をもって、毎回臨んでいるんですね。

竹田
竹田:
だから、盆太鼓のパラメータに「型」「音」「リズム」とあるんだとしたら、僕は「リズム」に全ブッパしてます。ちゃんと太鼓を習ってこなかった自分は、型は人と比べたら雑かもしれないけれど、リズムだけでも取れるようになりたいなと思って。踊りやすさって、リズムだと思うので。

小野
小野:
確かにCDの音とずれてても、違和感出ちゃいますしね。

竹田
竹田:
だから、自分のパフォーマンスは気が向いたら見てくれればいいという感じです。盆踊り大会といっても、屋台に集まるちびっ子がいたり、中高生くらいのカップルが遊びに来たり、踊りが目的じゃない人もいると思うんですね。そういった人たちの、ちょっとした夏の楽しい思い出になってくれたら「勝ち」なんじゃないかなって思ってます。

小野
小野:
かっこいいなあ。

竹田
竹田:
……まあでも、なんだかんだで、やっぱり踊り子さんに「お前の太鼓が一番いいね」って言われたいですね。そう言われちゃうと、太鼓やめられなくなります。とあるおばあちゃんから「冥土の土産にする」と言われた時は、死ぬほど嬉しかったですね。それ、嬉しいって言っていいのかわからないですけど(笑)

小野
小野:
コロナ禍で、盆踊り大会が数年中止となっていましたが、その間、竹田さんは何をされていたんですか?

竹田
竹田:
死んでました。自分って何のためにいるんだろう……ぐらいの感覚ですよね。何も役に立たないじゃないか?っていう。

小野
小野:
それぐらい盆太鼓にかけていたということですね。

竹田
竹田:
本当、ずっとお酒飲んでました(笑)。いつの間にかアラサーになっていて、何か一番体力があり余っている時期を無駄に過ごしてしまった気がするんですけど、もし今年お祭りが復活して、太鼓を叩くことができれば、その数年間もチャラになるくらい、はっちゃけることができそうです。

小野
小野:
今年は、すごく楽しみにしています!

竹田
竹田:
はい。何かイベントとかあったら、ぜひ呼んでください。ビール一缶500mlで飛んで駆けつけますので(笑)。もっと踊りやすく自分も楽しく叩けるように精進しますので、よろしくお願いします!

おわりに

盆踊り大会で太鼓を叩いている方々。盆踊り好きの自分でも、これまではあまり強く意識する機会は少なかったのですが、実は私たちが気持ちよく踊りに集中できているのも、盆太鼓の方々あってこそだということが、竹田さんへのインタビューを通じて実感することができました。

2023年は、数々の盆踊り大会が復活しそうな予感。もし久しぶりにお祭りに参加することがあれば、ぜひヤグラの上の叩き手たちにも注目してみてください!

2023年開催の最新盆踊り情報はこちらでチェック!

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
東京在住のライター/編集者。千葉県船橋市出身。2012年に佃島の盆踊りに参加して衝撃を受け、盆踊りにハマる。盆踊りをはじめ、祭り、郷土芸能、民謡、民俗学、地域などに興味があります。共著に『今日も盆踊り』(タバブックス)。
連絡先:[email protected]
Twitter:koi_dou
https://note.com/kazuono

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