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インタビュー

映画「盆唄」中江裕司監督インタビュー。庶民の遊び「盆踊り」、根っこにあるのは故郷、そして男女の営み?

映画「盆唄」中江裕司監督インタビュー。庶民の遊び「盆踊り」、根っこにあるのは故郷、そして男女の営み?

福島県双葉町に伝わる盆踊り「双葉音頭」を題材にしたドキュメンタリー映画「盆唄」が2月15日に公開。東日本大震災で散り散りとなった人々を通じ、双葉盆唄のルーツを探っていくこの作品は、お祭り・盆踊り好きならずとも多くの人々に観ていただきたい映画です。

公開を控えた2018年12月、オマツリジャパンでは中江裕司監督へインタビューを行い、日本中の盆踊りやお祭りと関わってきたオマツリジャパンならではの視点でお話をお聞きしました!

準備していた質問内容がふっとんでしまうくらい魅力的だった、監督のお話する姿、つむがれる言葉にインタビュアー一同、存分に感動し笑わせていただき、あっという間の時間でした。
では、そんなインタビュー、ほぼノーカットでお楽しみください!

インタビュアー:イケちゃん(イ)、ゆかり(ゆ)、早川春子(春)

「盆唄」は「双葉の盆踊り」を後世に伝える記録映画でもある

(ゆ)地方の盆踊りによく行っています。東京にはない「受け入れる雰囲気」があって良いなあと思っています。そんな盆踊りを広めたいと常々思っています。今回このような機会をいただけて本当にありがとうございます。

(イ)監督は今回この映画を製作するにあたって「盆踊りの持つパワー」を伝えたいというような意図があったのでしょうか。

(監督)特に「盆踊りのパワーをつたえたい」という思いはなかった。「当然そうでしょう」というものですよね。(この映画の中心となる)福島県双葉町の盆唄のメンバー、横山さんたちがやることだから、楽しいし、力になるものだと思っていました。横山さんのような方じゃなかったら、ハワイまでもって行こうとか、やぐらの共演という困難なことを実現しようとは思わなかったでしょうね。

盆踊りの原点は「やってる自分達が楽しい」だと思います。「人を楽しませよう」ではなくて。ただ、横山さんたちはそこよりもうちょっと先を行っていらした。自分たちが楽しいのは当然として、みんながそこに集まる場、懐かしい人と再会する場、社会や村の中心にあった「盆踊り」だからこそ、無くしてはいけない、との認識をもたれていらっしゃったのだと、今考えると思います。

(イ)コミュニティーである盆踊りだったり、神輿、祭り、という観点から「祭りで日本を元気に」を使命とするオマツリジャパンとしても、とても共通項のある映画でした。

(監督)コミュニティーを作るために盆踊りをしているわけではないんですよね、「自分達が楽しんで踊っていた結果」というのが良いんでしょうね、横山さんたちは。

中江裕司監督

(ゆ)ご先祖様から受け継がれたものを大切に守っていきたいという思いもありますよね。

(監督)そうですね、ただ、伝統を守る、ということだけでもないんですよね。

(ゆ)伝統というくくりではないですね。

(監督)そうですね、しかも、おっしゃっていたのが、最後のやぐらの共演は「地区」ごとに違うことが重要で、それを記録したい、ということでした。僕らもある意味共犯関係でした。一緒に映画を作る関係は「単に撮る、撮られる」という関係以上のものとなっていました。僕は「やぐらの共演をしっかり撮る」。横山さんは、「双葉盆踊りを映像に残すためにハワイにつなぐ」など、いろんな種を残していらした。

同時にやぐらの共演をやってみんなに引き継ぎたい、そして映像に残すことによって、どうなっても双葉盆踊りが残っていくような方法を横山さんたちはとられていた。実は2時間20分ほど撮りまして、しっかり編集してお渡ししております。

(ゆ)双葉の中でも地区によって演奏が違いますものね

(監督)そうなんです。事前にどの地区のどこが違うかと聞いて、それがちゃんと撮れるカメラポジションにカメラも配置しました。そこで僕らはドツボにはまりました(笑)

「30年撮り続ける覚悟だった」作品に終止符を打ったラストシーン。暗闇に浮かぶやぐらが表現しているものとは…

(監督)ドキュメンタリーって終わるのが難しいんです。始めるのは簡単なのですが。始めるのは「撮りたい」と思ったら撮ればいいのですが、終わるのは「撮り終わった」という実感がわくまで、10年でも20年でも撮影は続くんですよ。

逆に言うとその「実感」がない限り撮り終えてはならないという厳しいジャンルです。だから何年も撮る勇気、覚悟があって始めるのか?というのは最初問われること。

(ゆ)扱うテーマも深いですものね

(監督)そうですよ、30年と思って始めました。でもなるべく短いほうがいいなと思ってはいました(笑)けど、やぐらの共演を撮影するとなった時に、「あ、これで映画を撮り終えられる」と思ったんですよね。で、ハワイに行ったメンバーがそこで踊ってラストだって思ったんですよね。それが僕の浅はかさ、です(一同笑)

(イ)このラストシーンになったのは偶然の流れでしょうか?

(監督)横山さんからすると「各地区の踊りを記録することが大事」だった。なので、映画班が撮ってくれるなら一緒に動きましょう、ということなんですが、ハワイに行ったメンバーは各集落の選抜メンバーなんですよ。で、彼らは「俺らはやらない」と。横山さんは「裏方をするから太鼓はやらない」と。(苦笑)

主人公たちの演奏を見れないということはこの映画としてはありえない。(笑)何度も「映画のためにしてもらえませんか」とお願いするも「筋が違う」と。それはそうですよね。

なので、やぐらの共演とは別に、みなさんの演奏する映像を撮らせてください、これはあくまで映画の都合です、とお願いしました。それはいいよ、と。筋さえ通せば、というとっても「かっこいい」方々なんですよ、横山さんたちは。なので、最後の暗闇の演奏につながったんです。

やぐらの共演が撮れないと分かったときに、ラストシーンはそれ以上のものを絶対撮ると決めてました(笑)やぐらの共演のときは、実際に踊っていたりと、スペースの制限もあり、クレーン等使うことはできなかったのですが、ラストシーンは移動車もクレーンも持ち込んであらゆるところからかっこよくと、こだわって撮影しました。

盆唄
© テレコムスタッフ

(イ)あの場面はとても印象的でした。

(監督)未来を撮ったんです。50年先100年先の未来を。震災で亡くなった方やご先祖様もみんなその場にいて、2万人くらいいるつもりで撮ってました。だから、そういうセリフもありつつ、踊り手はみせずに音、囃子で表現しました。

中江監督が「郷土愛」にふれることで知った、その「強さ」とは

(ゆ)京都ご出身で沖縄に移られたようですが、郷土愛がないと聞きました。

(監督)そうなんです、無いんですよ。放浪する感じ。京都というか滋賀県だったのです。京都っていうと創業100年じゃあ老舗なんて呼べないっていう雰囲気で、なので、親も「京都の人」にはなれないって言ってて。かといって滋賀県で育っていないので滋賀県に愛着は持てず、京都にも愛着は持てず、で。なので、兄貴も僕も世界中どこでもいい、ていう。ふるさとが無いって、簡単に言ってしまえば世界中どこでも一緒なんですよね。人間にとって土地って「ふるさと」と「それ以外」ってことになりますよね、簡単に言ってしまえば。

盆唄
© テレコムスタッフ

(ゆ)双葉町の郷土愛を知ってうらやましくもあります。

(監督)そうですよね。僕は沖縄に行ってそのプライドや郷土愛にふれ、すごく考えるようになりました。人間にとってのふるさと、というか。全面的に協力してくれる。「どこにいって働いてもいいけど、失敗したら戻っておいで、全部受け入れるから」っていう。そういう土地だから、絶対的に強いなって思ってました。どっかに帰るところがある。ビビらなくていい、というのは強いなあと。うらやましいなあと思いながらいましたね。

(ゆ)沖縄に惹かれる理由はそこなんでしょうかね。すべて受け入れてくれるというところ。

(監督)そうですね、あと面白い人間もいっぱいいるので(笑)野生の王国みたい。

(ゆ)昔の日本ってそうでしたよね。

男女の出会いの場だった盆踊りを復活させたい。その心は…

(ゆ)盆踊りが好きで全国の盆踊りを回っています。そんな中、岐阜県のダムに沈んでしまった村の盆踊りを引き継ぎたいと、今年イベントを行う予定だった矢先にこの映画のことを知り、見させていただいたのでとても面白かったです。私は郷土愛がないので、持っている人に会うととてもパワーをいただきます。うらやましいと思います。(イベント情報:踊らまい!徳山おどり 〜人々の記憶に生きる 岐阜県・旧徳山村の盆踊り〜

盆唄
© テレコムスタッフ

(監督)盆踊りって昔は「男女の出会いの場」だったんですよね、今はみんな避けてるじゃない?ちょっと。エロ歌の部分避けてるでしょ?男女の自由恋愛がそのときだけはオッケーだった、という。盆踊りって誘われる誘いたい日なんですよね。それが本来の人間の営みだし、そこを道徳的な観点から出さなくなったことで、盆踊りの面白みが無くなり、盛んじゃなくなってきていると思っている。そこを復活させてたらまた盛んになるのではないかと。

(監督)花火大会もそうですよね。
(ゆ)出会いの場とかありますものね。

(監督)人間の根本的なところを呼び起こすことがもっとできたら日本がもっと良くなるのではと思う。日本はエロ国。双葉の人も「下の松茸なにみて伸びる」ってね。

(イ)もっと聞きたいです(笑)

(監督)春歌は面白い。書き残すとすごいエロになってしまうから書き残せない。書き残せなくて残っているもの(口伝いに残っているもの)は、つまらないと残らないので、非常に面白いものなんです。

中江裕司監督

(春)お祭りとかフェスって人間の本能を出して良いよっていう場ですよね。
(監督)横山さんもおっしゃってたけど「2時間演奏してたら完全にトランスしてしまう」と(笑) この映画のラストは「見てるだけではなくてお祭りを実感してほしい」という意図もあります。

ラストシーンではみんなで立って踊って!エロ歌詞もみんなで歌ってほしい!

(イ)オマツリジャパンで記事を読んでいるみなさん向けにメッセージをお願いします

(監督)映画館で是非、ラストでみんなで立って踊っていただきたいです!ロッキーホラーショーのようになると良いですね!

中江裕司監督

(一同)ありがとうございました。

(春)(オマツリジャパンの活動に協力してくれる)サポーター集めて貸切上映したいですね。

(監督)みんなでつっこみながら踊りながらの上映回してほしいです。絶対面白い。おわったらエロ歌詞うたっていただいて。

(ゆ)歌詞本はあるんですか?

(監督)歌い手さんがメモってますね。

(ゆ)地方にいって80歳のおばあちゃまが、エロ歌うたって、でもやらしくなくてみんな大笑いで。

(監督)ドキュメンタリー撮りたいです。どこでできるかなあ、いい媒体あれば。

(ゆ)全然いやらしくないんですよね。

(監督)うまいこと(歌詞の言葉の意味を)かけてるところがまた良い。面白くないことは残っていかないってシンプルなこと。
ハワイの踊っているなかで「べっちょ、べっちょ」って囃していて。ハワイでもハワイ島以外では禁止されている。日本でも昔はそうだったんです。福島では確かに「べっちょ」っていってて、昔はそう囃してた、って言ってました。

ステップも変なステップだったけど、「三角踊り」というのがルーツらしい。
楽しんだもの勝ち!人が楽しむことはだいたいみな同じ。村によってかっこよさを競ったり。昔は仮装したり。

(イ)話はつきないですが、、、

このへんで、、、

続きは映画館で!

(踊り上映やりましょう!)

 

中江裕司(なかえ ゆうじ)
1960年京都府生まれ。沖縄県在住。
代表作に『ナビィの恋』(1999)、『ホテル・ハイビスカス』(2001)など。

盆唄 オフィシャルサイトはこちら

日時:平成29年12月19日(木)15時5分〜45分
場所:ビターズ・エンド会議室(渋谷区渋谷3-26-10ネクスト渋谷2F)

インタビュー後記
春:監督にお会いする前は、扱うテーマのこことか考えると神妙になってしまいそうだったのですが、いざ監督にお会いし、インタビューさせていただくと、とにかく監督が楽しそうに話してくださるのにつられて心から大笑いしてしまいました。そして映画のファンになってしまうともに監督の大ファンになってしまいました。そんな監督が「かっこいい男」とおっしゃる双葉の横山さんたちにもお会いしてインタビューしたくなりました。貴重な機会をありがとうございました。「踊り上映」準備体操して臨みたいと思います!

トップ画像提供:盆唄オフィシャルサイト

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