6月11日の土曜日、晴れ渡る空のもと、久しぶりに美しい装具を纏った馬コ達が、滝沢市の鬼越蒼前(おにこしそうぜん)神社から盛岡市の盛岡八幡宮までの14キロをゆっくりと行進しました。
久しぶりの「チャグチャグ馬コ」に笑顔も弾む
「チャグチャグ」と馬コが歩くたびに聞こえる鈴の音と馬コの美しい装具、そして馬コに乗る小さな子供たちの笑顔に、沿道の人々から大きな拍手が送られていました。
3年ぶりとあって馬コに乗る子供たちも例年より嬉しそう。手を振る姿に沿道から大きく手を振り返す観客の姿もありました。
盛岡市長を先頭に行進
晴天の中、コロナを気にしてか、少し早いスピード!
この投稿をInstagramで見る
町全体がお祭り気分に
今年の「チャグチャグ馬コ」について盛岡の谷藤市長は「今年度こそ失われたにぎわいを取り戻し、世界的に類を見ない貴重な伝統行事の保存継承に努めたい」と話しています。
チャグチャグ馬コは、見る、聞く、香りそして街の雰囲気を感じる祭りです。参加する人、沿道で観覧する人それぞれが3年ぶりの祭りを堪能しているようでした。
街中にはためくのぼり
コロナ対策もしっかりと
今回はコロナ対策として、馬コの休憩地点を変更。いつもは5団体ほどが行う踊りなどの演目を今年は2団体で計15分としました。
また、観覧時の飲食自粛や大声を出さないことも求め、隣の人との距離の確保のためプラカードを持ったスタッフを増員し、注意を呼びかけるなどの対応も取っていました。もちろん観覧する際は、マスク着用です。
コロナ対策、観覧者へ呼びかけ
ルールを守って馬コの行進を待ちます
チャグチャグ馬コの民謡にあわせて躍ります。素敵な笑顔!!
今年は2団体の演舞となりました
この投稿をInstagramで見る
チャグチャグ馬コの歴史
岩手県は遠く奈良時代から南部駒という優良な軍馬の産地でした。
戦国時代が終わり江戸時代に入ると、人々は農耕馬として家族同様に馬への愛情を持って生活をするようになります。母屋と馬屋をL字型につなぎ、母屋の暖気を送って馬を冬の寒さから守る南部曲り家という家の造りは、当時の人々の思いを今に伝えています。
馬を大切にする気持ちから馬への信仰心が生まれたのでしょう、蒼前様と呼ばれる農業の神・馬の守り神の男子騎馬像が鬼越蒼前神社(旧・駒形神社)に祀られています。
姿、形が美しく気性も温和な南部駒
農耕馬として親しまれてきた。写真は材木を運ぶ様子
やがて旧暦の端午の節句の日は農作業を休み、重労働で体を酷使している馬も休ませるようになりました。その日に無病息災祈願のため馬を連れて鬼越蒼前神社に詣でた蒼前詣がチャグチャグ馬コの起源と言われています。蒼前詣がいつから行われていたかは不明ですが、江戸時代初期と考えられています。
明治に入って行事は一時的に衰えたものの、明治20年代に復活しました。岩手県では日清戦争、日露戦争などにより軍馬の育成も行われたことからチャグチャグ馬コ行進も盛んになり、当時は1,000頭もの馬が参拝したのだそうです。
しかし、その後第二次世界大戦が始まると丈夫な馬は次々と戦地に送られ、行事は次第に廃れていきました。終戦後、しばらくして保存会が結成され復活し、開催日が旧暦から新暦の6月15日に変わったのは昭和33年(1958年)のこと。平成13年(2001年)からは6月の第2土曜日に行われるようになりました。
今年は、59頭の馬が参加しましたが、現在は馬主の高齢化が進み、参加する馬が減っているのが悩みだそう。滝沢市の福祉施設が農耕馬の牧場経営をしたり、餌代を援助するためのクラウドファンディングの取り組みも行っているそうです。
盛岡B級グルメも欠かせない
祭りに欠かせないのが、「うす焼き」です。
お店特有のダシを混ぜ込んだタネを薄く焼き、小海老を散りばめ、焼き海苔を乗せます。ひっくり返して出来上がり。
祭りに欠かせない「うす焼き」はこの日も行列
香ばしい香りに誘われて
海苔をのせてできあがり
しょうゆかソースを塗ってもらう
お好みで、ソースか醤油を塗ってもらって、食べ歩きがたまらない(今はコロナの影響でテイクアウトのみです)。
うす焼きのお店は、沢山ありますが、筆者は、毎年盛岡八幡宮の境内に出店している「ささきのうす焼き」がイチオシです。
初詣やお祭りの時には、長い長い行列が出来ていて、その人気に毎回驚かされます。
この看板が目印
今はテイクアウトのみ。公園のベンチで食べようかな
盛岡っ子は、お正月、花見、夏のお祭り「さんさ踊り」、秋の盛岡八幡宮例大祭など一年中何かのイベントで「うす焼き」を食べて祭り気分を盛り上げています。
来年は、ぜひあなたも盛岡におでってくなんせ
きれいな装束姿の馬コに体験乗馬もできます(小さい子供のみ)
チャグチャグと涼やかな音と馬の蹄の音、そして美しい馬の装具や馬に乗る可愛い子供たちの笑顔。
ゆったりとした時間が流れる、小京都・盛岡の初夏の風物詩「チャグチャグ馬コ」が今年は開催され、やっと盛岡にも夏がやってくるなあと感じました。
車でお越し際は、東北自動車道盛岡ICより盛岡方面へ向かうと駅周辺でも観覧できます。
来年は、ぜひあなたも岩手盛岡におでってくなんせ。