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Cheer Up!花火プロジェクト舞台裏レポート「全国163業者の花火師が自費で花火を一斉に打ち上げ」でコロナウイルス退散祈願<前半>

Cheer Up!花火プロジェクト舞台裏レポート「全国163業者の花火師が自費で花火を一斉に打ち上げ」でコロナウイルス退散祈願<前半>

世界中を震撼させているコロナウイルスの影響で、今年の花火大会がほぼ中止になり花火業者は壊滅的な被害を受けています。どれぐらい大変な状況かと言えば、第二次世界大戦で花火会社は廃業か大日本帝国の軍需産業として爆薬を作っていた以来の歴史的にヤバい状況にある様です。

それでなくても、昨今は景気の影響で市町村からの補助金も減り、町の中小企業や商店からの協賛金も少なくなり、小さな花火大会から消滅しつつある斜陽産業の花火業界。

その一方で、ここ数年だけ見ても日本の花火技術は飛躍的に上がり、海外からも一目置かれ、世界レベルで見れば日本の優秀な花火は海外の大きな花火イベントの際にも使用され始め、いよいよこれから変わるかもと言う矢先に荒波に投げ出されてしまいました。

インタビュー:「Cheer Up!花火プロジェクト」を始めた切っ掛け

2020年6月1日(月)花火業界で前代未聞の日本全国の花火業者163社が一同に花火を打ち上げる「Cheer Up!花火プロジェクト」が行われました。

実は以前からこのイベントの存在は知っており、これまでのツテを使って、5月下旬には同じ福島県に住む有限会社糸井火工の糸井秀一社長にアポイントを取って会社でお話を伺い、当日も花火現場まで伺わせて貰いました。今回はそんな2週間に渡って取材させて頂いたレポートです。

須賀川市にある糸井火工 工場

蛭田(ライター):本日はありがとうございます。本当に花火業界に携わる皆様には何と声を掛ければいいのか困っております。早速ですが今回の「Cheer Up!花火プロジェクト」は自費で行うと伺いました。

個人的には、ただでさえヤバい状況なのに自費で花火を打ち上げるよりも、来るべき時に向けて体力を温存しておいた方がいいと考えているのですが、どう言った目的で花火を打ち上げようと思ったのでしょうか?

糸井社長:目的はそれこそ色々とあります。古くは8代将軍の徳川吉宗(暴れん坊将軍)の頃に享保の大飢饉が起こり、餓死者や疫病で亡くなった方の慰霊を目的に打ち上げられたと言われている花火本来の意味である疫病退散。

また日本が大変な今だからこそ「みんなを花火の力で元気にしたい!」とか、頑張っている医療従事者や物流など人々の生活を支えている人への感謝の気持ちとか色々です。

まぁ表向きはそんな感じですが、やはり一番は自分たちがこの歴史的な危機に何かやらなくてはと思っていたのが大きいと思います。

正直な所、状況だけを考えると自分たちはとてもじゃないけど、他人に構っている余裕はありません。今年の花火大会が中止になると言う事は花火屋としては1年半も収入がないと言う事です。

知っている人もいるとは思いますが、花火大会は夏に行われますが花火の玉は一朝一夕でできるものではなく、冬の間に時間を掛けてコツコツ作って火薬庫に貯蔵していきます。もしコロナが落ち着いて来年に花火大会が開催されたとしてもお金が入るのは来年の秋。

大企業なら1年半くらい耐えられるかもしれないけど、花火屋は家族経営が中心の零細企業が多いし、資金力がないところは経営を続けて行くのは難しいのかもしれません。

それに仮に資金力があっても今回の状況は手広くやっていた会社ほど被害が大きいので、花火業界全体がコロナウイルスで今後どうなるか分からない状態だと思います。それでも業界が団結して今回何かを取り組んだと言う実績を残せれば、まだ花火業界は頑張っていけるなと考えています。

蛭田(ライター)それでは、この花火イベントはいつ頃からやろうと思っていたのでしょうか?それに参加業者の数がかなり多いのですが、よくこんなにも多くの業者が賛同してくれましたね。

糸井社長:コロナウイルスが全国的な話になった時から構想自体はずっと考えていました。ただ時期をいつにするかをずっと見計らっていて、国民がパニック状態になっている中であまりにも早過ぎてしまうと世間からの共感も得られず、反感を買うのは火を見るよりも明らだったと思います。

まず、参加業者がこんなにも集まったのは、全国の花火業者がそれほどまでに花火業界が危機的状況だと考えていたからなのではないでしょうか?

また自費だからと言う点も集まりやすかったポイントだと思います。もし、これが公的な資金や企業からの支援金だったら、色々な制約がついたりと身軽に動けなかったでしょう。

あと、みんなが一同に行うって事が大きいかもしれません。あまりいい例えではないけど、「赤信号みんなで渡れば怖くない」じゃないけど、人を集めてしまう花火を打ち上げるのは、やはりいい顔をしない地域もあると思います。しかし、全国的に行うのであれば自治体も後ろ指をさされる心配がありません。

それに全国各地で行う事により、ある一定の条件を満たせば「花火を打ち上げてもいいんだ」と言う良い前例を作れます。たくさんの人に花火業界にも目を向けて貰う為には数を揃えて一斉に打ち上げると言う強いインパクトが必要です。

蛭田(ライター):一定とは、どう言った条件を考えているのでしょうか?強いインパクトと言っても道を歩いている人が偶然に花火を見てSNSに投稿しても、あまり意味がないかと思いますが、その辺はどう考えているのでしょうか?

糸井社長:こちらが主催者で決めた条件になります。
①自費で行う
②同一日時、同一時刻で行う
③打ち上げ場所が用意できる
④人を集めない様に5分以内に留める
⑤原則、無許可消費量
⑥他言無用

今回は日本煙火協会青年部に在籍する11人が主体になって企画しました。母体である日本煙火協会にも話を通し、今回の企画は自分たちが中心に行うことが決まり、それぞれオンラインミーティングツールを使って1回の会議につき、2~3時間ほどの打ち合わせを何度も行ってきました。

まず、①、②は説明したので省略して、③の打ち上げ場所を用意できる事。これは市町村の許可も絡む問題なので用意できず、当初は不参加にせざるを得ない花火屋もあった様です。

④はコロナウイルスの問題で、人を集めない様にする為。長時間の開催で人が集まり、ウイルスの拡散にでもなってしまったら何の為の花火なのか意味が分かりません。
その為、短時間で終わらせる必要がありました。人を集めてこその花火なのに皮肉な状況ですが今はやれる事をやるだけです。

⑤は、無許可消費量で打ち上げる事。無許可消費量とは、何も本当に無許可で打ち上げる花火ではなく、花火師が使う用語です。4号玉(開花直径120m)を10発以下、3号玉(開花直径約90m)を15発以下、2号玉(開花直径60m)を50発以下と最大75発までの花火の打ち上げであれば、消防署に簡単な届け出をするだけで、普段の大規模な花火大会の様に都道府県知事へ届け出を出す必要もありません。

花火屋はこれからの収入が絶望的で、みんな懐事情が厳しい状況であり無理をさせない為にもある一定の基準は設ける必要はありました。ただし、大曲や新潟など花火が当たり前に打ち上げられている地域では尺玉など大きい花火が打ち上がります。

そして⑥の他言無用。④と重なる所もありますが、この前代未聞のイベントのインパクトを出す為にはマスコミ各社の協力が必要です。マスコミ各社には開催する日時・場所を公開し、当日も打ち上げ現場で取材して貰う事を取り付けました。おかげ様で日本だけでなく、海外からも問い合わせがあり毎日の様にマスコミ対応に追われて大変です。他の運営メンバーも花火業界の為に頑張ってくれています。

当初は日にちも打ち上げ時間も出さない様に固くお願いしていたのですが、某新聞社に約束を破られてしまい日時が公開されてしまいました。しかし、自分たちは最後まで何も公表しないと言うスタンスを取ります。

マスコミとしてなら日時・場所を公開するとの事で、この時点でライターとしての当日参加が決定。当初はいつも応援してくれている花火好きの皆さんには教えようかと言う話も出ましたが、やはりこの情報化社会、SNSで誰が発信してしまうか分からない状況は避けようと言う事になりました。それぞれが付き合いのある花火好きには自己責任で教えると言う結果になった様です。

後半に続く

written by
蛭田 眞志

蛭田 眞志

花火専門カメラマン&花火専門ライターです。
日本の良質な花火文化を後世に残すために記録し、花火に携わる人達を応援しています!
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