目次
勝運の神「藤森(ふじのもり)神社」は刀剣乱舞や紫陽花で人気の社
藤森神社は京都洛南深草の里に平安遷都以前より祀られている古社で、古来朝廷から武家、庶民にいたるまで崇敬の厚い神社です。神功皇后が三韓征伐より凱旋された後、深草のこの地を清地と撰ばれ軍中の大旗を樹て兵具を納め、塚を作り、神祀りをおこなった事が神社の始まりです。主祭神は素盞嗚尊(すさのおのみこと)で、他にも神功皇后、舎人(とねり)親王、早良(さわら)親王など12柱の多くの武神をお祀りしており、武運長久・勝運の神として信仰されています。
近年は「紫陽花宮」と呼ばれる美しい紫陽花苑をはじめ、オンラインゲーム『刀剣乱舞』に登場する「鶴丸国永」の縁の神社として刀剣ファンにも人気のある神社です。
そして藤森神社は菖蒲の節句の発祥地。「菖蒲(しょうぶ)」は武道の「尚武(しょうぶ)」や勝負に通ずると、勝運を祈願する方も多い神社です。
藤森祭の神幸祭
藤森祭(深草祭)は毎年5月5日に行われる藤森神社の春祭です。朝7時から神幸祭の神事が始まります。
伏見稲荷大社や東福寺にも武者行列や鼓笛隊、御神輿の渡御
8時半から4基の御神輿が出発しはじめます。最初は宮本下之郷です。藍色の法被に赤い帯が映えます。
続いては女神輿です。差し上げの際は背伸びするほど高く差し上げられていました。
次に進んで来たのは東福寺郷神輿。屋根の上の部分が鳳凰ではなく、千木(ちぎ)になっているのが特徴的です。
子供神輿がやってきました。御神輿を差し上げる姿がどこか健気で可愛かったです。
最後は深草郷の御神輿です。「ほいっとほいっと!」と威勢よく参道を進んでいきます。
各地区の神輿は、江戸時代に氏子・民が財力をつぎこみ造ったもので、京都においても最も優雅と名高い立派な御神輿です。
9時から鼓笛隊行列・武者行列がそれぞれの氏子地区を巡行します。鼓笛隊の衣装がかっこよくて目が釘付けになりました。
神役行列には七福神の姿もありました。ご利益がいただけそうですね。
他に、祭神の早良親王(さわらしんのう)が戦勝祈願したときの行装をした朝渡(あさわたり)、藤森祭のもととなる「深草祭」(国の平和と清和天王の長寿を祈願する祭)の行装の皇馬(こんま)、この地に神祀り給うときの行装(神功皇后の凱旋の様子)の払殿(ほって)などの厳かな姿が見られます。
最後を飾るのは藤森太鼓。
節分の時に見た勇壮な姿を思い出します。また見に行きたい!
藤森神社を出発した行列は伏見稲荷大社にやってきました。このあと、東福寺の方面に向かいます。
猛スピードで多彩な戦(いくさ)の実戦騎乗術「駈馬神事」
藤森神社は洛南、つまり御所から見て午の方角にあることから、馬の守護神ともされています。勝運を求めて競馬関係者も参拝しているそうですよ。また祭神の早良親王が東北討伐の勅命を受け、勝利祈願をした結果、敵を滅ぼすことができたという故事を元に、出陣した5月5日にあわせて駈馬(かけうま)神事が行われています。1200年以上前から伝わる伝統行事で、京都市無形民俗文化財に登録・指定されています。
馬場のお祓いが終わると、最初は「素駈(すがけ)」が行われます。この素駈はいわば準備体操。スタートから止まるまでの距離感やどれくらいのスピードを出せばいいかを馬に教えるために行っており、素駈では技自体は行いません。しかし、目の前を駈け抜けるその速さや人馬一体となった迫力に歓声があがります。
印象的だったのは、左足の甲を荒縄で縛った状態で鐙(アブミ)の中へ足を入れ、指先を上に反り左足だけで体を支える騎乗だということ。馬匹と身体の繋がりは左足一本という状態でした。
駈馬の衣装はかつて防具だったものが今は飾りのようになっています。たとえば頭につけている「バッチョ笠」は昔のヘルメット。赤いシャツに羽織っている黒い網襦袢(あみじゅばん)は鎖帷子(くさりかたびら)を表しています。
駈馬神事は南門から割拝殿(わりはいでん)まで伸びる約200メートルの参道で行われます。
素駈が終わり、いよいよ技の披露!発送すると、走る馬の背の上で乗子さんがスラスラ文字を書き始めました。
「一字書き左り馬」という前線より後方へ情報を送りながら、駈けぬける技が見事に決まりました!
駈馬の世話方、乗子さんによると、「駈馬は鞍装着が命、完璧な装着を要求されます。鞍が緩むと落馬等の乗子が危険な状態になる。そのため普段はドラム缶で和鞍の装着と技の練習をしています。馬匹に騎乗をするのは静止や歩行の状態での練習です。参道が専用馬場ではなく整備及び傷害保険などの費用が必要になるため、走る馬で技をするのは本番だけです。」と教えていただきました。
技を決めるのは実は一発勝負!?思わず「えー!?」と大きな声をあげてしまいました。
実際、本来止まるべきところで止まらずに馬の本能で、猛スピードのまま拝殿に飛び込むことが2度もありました。幸い、乗子さんは無事!良かった!!救護員(医師と看護師)も現場に待機しているため、何かあっても安心です。
乗子さんたちも、ぶっつけ本番ということですが、この希少な機会を逃すものかと参拝者の方もみなさんたちも前のめりで見ています。馬の速度によって、技を決めるスピードや場所も異なるため、撮影もとても難しかったです。
今回は最初、3頭いた馬のうち2頭が、本能のまま乗子の制御に反応せず駈けてしまいました。まず最初はとても速い馬か、ゆったりとした馬の二択。最後はゆったり走る1頭のみになりました。走るスピードで出来る技も変わるため、技が出来るか出来ないかを瞬時に判断し、素駈にするかどうかも乗子さんの大事な能力だそうです。
こちらは「逆乗り(地藏)」。振り向いて敵の動静を見ながら駈ける技です。走る馬をわざわざ後ろ向きに乗るなんて怖い!敵もおもわず見逃してくれるかもしれないですね。
次は「手綱潜り」。敵矢の降りしきる中を駈ける技です。かっこいい!
最後は大技「藤下がり」。敵矢が当たったと見せて駈ける技です。
おお〜!これは見応え抜群!落ちる途中のように見える技です。足で扇子を広げているのも凄い!!
4代続く乗子さんや、若手から大ベテランまでが繰り広げる胸熱の神事。血が騒ぐ貴重な技を見せていただきました。ありがとうございます。
藤森祭スケジュール
藤森祭 5月1日〜5月5日
5月1日 御出祭
5月3日 神輿神霊遷(みこしみたまうつし)、藤森太鼓奉仕
5月4日 宵宮祭
5月5日 神幸祭
7時 神幸祭
祭典の後 宮本下之郷神輿、深草郷神輿、東福寺郷神輿、女神輿、鼓笛隊、武者行列、藤森太鼓 町内巡行
13時と15時 駈馬神事 馬をならす素駈けの後、戦の実戦騎乗術(藤下り・手綱潜り・逆立ち・横乗り・逆乗り・矢払い・一字書き)
「藤の花があふれる藤森」を復活させる!
現在、藤森神社の周辺に藤はほとんどありません。「藤森なのに藤がないのは悲しい」と藤の花を復活させようという活動が行われています。神社の境内に約40メートルの藤棚をバリアフリーで楽しめるようにと準備しているそうです。
他にも、おすすめの年中行事として節分祭追儺式や紫陽花まつりの蹴鞠奉納などがあります。
ここにまた藤の景色が加わるのが楽しみです。
藤森神社では藤森神社神輿三郷連合会(宮本下之郷、深草郷、東福寺郷)、藤森神社駈馬保存会、鳴鳳雅楽会、藤森雅楽会、藤森神社女神輿会、藤森太鼓保存会とたくさんの人たちに支えられ、年間の神事行事が行われております。皆様もぜひ一度、ご参拝ください。