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地域文化を未来へつなぐために——祭り・イベント関係者が語る現状と課題【主催者アンケートから】

2025/3/12
2025/3/10
地域文化を未来へつなぐために——祭り・イベント関係者が語る現状と課題【主催者アンケートから】

日本各地で受け継がれる伝統的な祭りや地域イベント。しかし、その継続には多くの課題が立ちはだかっています。2025年2月にオマツリジャパンが実施した「祭り・イベント関係者アンケート」から、現場のリアルな声を紐解きながら、地域文化の未来について考えます。

(株式会社オマツリジャパン「オマツリリーダーズ」登録者などを対象に2025年2月17日〜28日にWEBアンケートを実施。総回答数20)

<この記事のポイント>
担い手不足と対応策:回答者3割「担い手不足が深刻」。若年層の参加呼びかけにはSNSを利用。

資金不足の対応策:「資金不足」は最大の課題。公的支援だけでなく企業協賛の獲得や入場料の導入を検討。回答者の8割が企業からの協賛に期待。
新技術導入の動向:ドローンショーやプロジェクションマッピング、LEDビジョンなどの新技術導入に前向き。伝統や地域性の維持も重要視。

【回答者のステータス】

アンケートに回答していただいたのは、自治体職員、観光協会関係者、神社・仏閣の関係者、保存会メンバーなど、多岐にわたる祭り・イベントの運営者の方々です。関わる祭りの来場者規模は500人未満から50万人以上と幅広く、その開催頻度も年1回のものから年に複数回開催されるものまで様々です。

【直面する課題——担い手不足と資金問題】

担い手不足

抱えている課題の中で全体の30%を占めたのは「担い手不足」。特に若年層の参加が減少しており、「後継者がいない」「世代間の断絶が深刻」といった声が聞かれました。

【主な対応策】

  • 若年層へのPR活動(29.4%)
  • 外部ボランティアの募集(29.4%)
  • 他地域との団体連携(41.2%)
  • 特に対策を講じていない(41.2%)

 

一部の団体では「特に対策を講じていない」という回答も見られ、抜本的な解決策が見つかっていないのが現状です。

資金不足

もっとも深刻だったのが「資金不足」。祭りの運営には多額の費用がかかるものの、公的な支援に頼るだけではなく、協賛金の獲得を軸に、入場料の導入など自助の試みが主要な対策になっています。

 

【資金確保の手段】

  • 企業からの協賛募集(42.1%)
  • 自治体の補助金活用(26.3%)
  • 入場料やチケットの導入(10.5%)

 

企業協賛では、地域企業からの協賛だけではなく、大企業からの支援・協賛の期待も。8割を超える主催者様が期待する一方で、「地域性を大切に」という願いも垣間見えました。

【祭りを観光資源として活用する取り組み】

祭り・イベントのPR方法としては、SNSを活用したPRが75%と最も多く、他地域とのコラボイベントや新たなプログラムの導入も検討されています。

また、「プレミアム観覧席」や「祭りの裏側ツアー」といった有料コンテンツの導入にも関心が高まっています。また、コンテンツ造成を検討しながらも、実施に向けてはさらにアイデアを煮詰めていくことが必要と考えておられるようです。

 

【行政との関係——協力と課題】

行政との関係については、円満な関係を感じさせる回答もある一方、「補助金申請や安全対策の手続きが煩雑」「予算の確保が難しい」といった声がありました。自由回答では、「行政の関心が薄い」「担当課以外との連携が取れない」というご意見もありました。

【祭りの運営について:日程変更や女性参加】

近年苛烈を極めている夏の暑さ対策として日程変更がトレンドになっていますが、アンケートでも夏の祭りの開催日変更を検討した、という回答がみられました。警備費などの高騰のために、祭りが集中する時期を避け、人手や来場者を確保しようという視点もあるようです。

祭りの開催日の変更を検討したことがありますか?ある場合は、その理由も教えてください。

ある(した):8件

<理由>

・熱中症対策等のため

・警備費等必要経費の高騰により、長期のまつり開催が困難になる可能性があったため。

・祭りが行われる時期は他のイベントと日程が重なるため客が少なくなる.

・祭事に関してはなし。自主事業に関しては、天候の問題のため変更あり

・旧暦正月14日を新暦に直した時に2月14日とした経過があるが、実際その日に近いのは2月24日ではないかと考えており、気候的にも良いかもしれないと考えています。しかしながら、一旦浸透した期日の変更に伴う混乱を予想して、躊躇しています

・夏場の高温対策

・運営する人材が集まらないため

・土日に変更済み

また、こちらもニュースなどで話題になりますが、祭りの運営組織への女性参加については9割の回答者が参加の制限はなく、参加しやすい環境づくりに取り組んでいるという回答でした。一方、伝統的なしきたりを守っていく価値についても重要視するご意見もいただきました。

また、ドローンショーやプロジェクションマッピング、LEDビジョンなど、祭り・イベントを盛り上げるために新しい技術を取り入れることに55%の方が前向きな気持ちでいると回答。さらに20%は、「伝統や雰囲気」を損なわない前提で、良いと思うと回答しました。必要ないとの回答は15%でした。

 

【祭りを続ける想い】

全国の主催者の皆さんは、「伝統文化を次世代に伝えたい」「地域の結束を深める」「観光誘致に貢献する」など、祭りを続ける意義を強く感じている関係者が多いことも、アンケートから明らかになりました。

【私たちにできること】

担い手不足や資金問題といった課題がある一方、地域文化を守りたい、地域の人々の楽しみを支えていきたい、という主催者の皆様の熱意を強く感じるアンケート結果でした。また、大手企業による支援や協賛、ドローンショーやプロジェクションマッピングなど新しい協賛のあり方についても、取り入れることに前向きな姿勢とともに、それが地域の伝統文化を損なうことのないよう慎重でありたいという気持ちも汲み取れる結果でした。

少子高齢化に伴う地域経済の縮小、過疎化が避けえない状況の中で、行政や企業、そして地域住民が一体となり、祭りの未来を支えていくことが求められています。祭りを継続したいとお考えの皆様、支援したいとお考えの皆様、ぜひオマツリジャパンにご相談ください。支援のあり方を地域に寄り添って一緒に考えてまいります。

 

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