2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
勇壮な白い獅子舞、港町を舞う
石川県加賀市橋立町では、毎年秋祭りで大漁と豊作を祈願する勇壮な獅子舞が開催される。明治期のコレラの流行によって県内の内灘地区から移住してきた人々が始めたのがきっかけだ。毎年、9月中旬に2日間開催され、橋立漁港を中心ににぎわいを見せる。
2019年に知人の誘いでこの祭りを訪れた。空は青く澄み渡り、太鼓や笛の音、「ロッコイ」という威勢の良い掛け声が響き渡る。橋立町の獅子舞は、海の荒々しさに影響しているのかひときわ激しい。舞い手は20キロ近い巨大な白い獅子頭を持ち、早朝から夜遅くまで舞い続ける。
これだけ激しい舞いなのに獅子の性別は雄ではなく雌と言われる。棒振りは花の香り(花棒)によってこの雌獅子を誘い出し、最後にとどめをさす。いわゆる獅子殺しの舞いだ。棒振りは子どもたちが担うことも多く、華やかな衣装を着て舞う。小中学校の行事日程をずらすほど、獅子舞は地域にとって優先されるべきお祭り。校内で「獅子舞ごっこ」が行われるなど、子どもたちにとても人気がある。
祭りの一番の見どころは、最終日のお昼に橋立漁港で開催される獅子舞である。橋立町、田尻町、小塩町の3町が各町で獅子舞を舞った後、この橋立漁港に集う。たくさんの大漁旗がはためき、大きな漁船が立ち並ぶ中で舞われる獅子舞は、とても迫力がある。「大漁鍋」という魚介の汁も振る舞われ、100人以上の人々が集まりにぎわいをみせる。
現在、新型コロナウイルスの影響により、日本全国でお祭りの開催ができない地域も多い。そんな中、橋立町の獅子舞の歴史から学ぶことは、コレラという感染症の流行が地域で新たな獅子舞を始めるきっかけにもなったということ。私たちは今、コロナ禍で伝統芸能の本質である厄払いや祈りに立ち返り、伝統芸能をどう若い世代につないでいくか考えねばならない。地域の生業と共に現代まで続いてきた橋立町の獅子舞を見ていると、歴史の重みや悪疫を払いのけるほど勇ましさを感じる。