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あじさいの名所が満ち溢れる鎌倉
神奈川県鎌倉市には、1192年に日本初の武家による幕府が開かれました。南は海に面し、その他の三方は山に囲まれる地形が、天然の要塞となっていたのです。現在ではこの地形の特徴が数多くの景勝地を作り上げ、観光地となっています。一年を通して多くの観光客が訪れていますが、市内の各所であじさいが花を咲かせる梅雨のシーズンは、市全域を会場として「あじさいまつり」を開催しているかのようです。
(この記事は2020年に公開されたものを再編集しています。 2021年5月18日 編集部更新)
「明月院ブルー」に包まれる「あじさい寺」明月院
JR横須賀線の北鎌倉駅から徒歩約10分の明月院は、「あじさい寺」の通称をもつ鎌倉市内でも屈指のスポットです。1394年に上杉憲方によって開基されたと伝わる臨済宗建長寺派の寺院です。標高約147メートルの六国見山の麓に、細長く境内が繋がります。公道から敷地内に入ると左右にはあじさいの花が帯をなし、別世界に入ったように感じられます。
総門を潜ると苔庭が広がります。庭の四方をあじさいの花が囲み、一画に建つお茶処の月笑軒では、和の情緒に浸りながら抹茶や和菓子を味わうことができます。
月笑軒の南に架かる桂橋を渡ると中庭園です。園内は「明月院ブルー」と賞されるヒメアジサイの淡い青色の花で包まれます。足元から頭の上までが、「明月院ブルー」で覆われる花園です。
中庭園の南に接して、本尊の聖観音菩薩坐像を祀る方丈が建造されています。方丈に設けられた円窓は、悟りや真理、大宇宙などが象徴的に表現され、「悟りの窓」と呼ばれています。「悟りの窓」の先には後庭園が広がり、あじさいの他ハナショウブが季節の彩りをつけています。
イワガラミ、ハナショウブなどと仲良く初夏の訪れを知らせる花の寺、東慶寺のあじさい
※2021年より東慶寺の「イワガラミ特別公開」は無期限で取りやめることになりました。詳しくは東慶寺のHPをご確認ください。
明月院から西に約500メートルの東慶寺は花の寺として知られ、梅雨の時期にはあじさいの花で彩られます。北条時宗の子、貞時を開基として1285年に開創された臨済宗円覚寺派の寺院です。玄関の山門からあじさいの道が始まります。境内には石畳の道が繋がり左右からあじさいの花が忍び寄ってくるようです。
寺院の本尊の釈迦如来坐像を祀る本堂は、宝形造の特徴的な屋根で装飾されています。堂の裏側は、イワガラミの花が彩りをつけています。
あじさいやイワガラミの他にも、松岡宝蔵をハナショウブに季節の化粧をつけています。茶室の白蓮舎では季節の彩りを眺めながら抹茶などのドリンクを楽しむことができます。
御霊神社に接する江ノ電の線路を左右から挟み込むあじさいの花
鎌倉の中心から市内の観光スポットを繋いで藤沢に向かう江ノ電沿線にもあじさいの名所が数多くあります。長谷駅から徒歩約3分の御霊神社は平安時代に湘南地域を治め、鎌倉武士の鑑とされた鎌倉権五郎景政を祭神とする神社です。境内を江ノ電がかすめて走りますが、線路沿いにあじさいが植栽されています。江ノ電のレトロな車両をあじさいの花が鮮やかに彩ります。
江ノ電の線路に接する山門の両側から語りかける極楽寺のあじさいの花
江ノ電の極楽寺駅から徒歩約2分の極楽寺は、鎌倉では唯一つの真言律宗の寺院です。鎌倉幕府弟2代執権の北条義時の三男重時が1259年に建立したと伝わります。江ノ電の線路に接するように建つ山門の両側から、あじさいの花が訪れた人々に季節の彩りをつけて語りかけてきます。
神奈川県鎌倉市は市内には、数多くのあじさいの名所が満ち溢れています。例年初夏のシーズンには、市全域が「あじさいまつり」の会場のようになります。明月院、東慶寺、御霊神社、極楽寺では、あじさいの花が異なる風情を漂わせています。