栃木・鹿沼の秋祭り
栃木県の中部に位置し、東側で県庁所在地の宇都宮市、北側で日光市と面する鹿沼市。江戸時代初期に今では世界遺産となった日光東照宮が造営されると、鹿沼には日光例幣使街道(にっこうれいへいしかいどう/日光西街道)の宿場町として「鹿沼宿」が設置されました。
鹿沼宿は日光と各所を繋ぐ交通の要所として発展し、幕末には800軒を超える家々が建つ全国でも大規模な宿場町にもなっています。このような歴史ある宿場町では大きなお祭りが伝わっていることが多いですが、鹿沼でも迫力満点なお祭りが繰り広げられているんです。そのお祭りの名は「鹿沼秋まつり」!
鹿沼秋まつりはユネスコの無形文化遺産にも登録されているお祭りで、日光東照宮を思わせるような豪華絢爛な彫刻屋台が有名です。その姿から「動く陽明門」とも呼ばれる27台の彫刻屋台が、例年10月第二土・日曜日の二日間、鹿沼を盛り上げます。
今年は10月7日と8日に実施され、なんと5年ぶりの開催なんです。初日の10月7日に鹿沼へやってきましたので、ここからはそのお祭りの様子をご紹介します!
彫刻屋台の繰り込み
鹿沼秋まつりは、鹿沼市内34か町の氏神である今宮神社の例祭を中心に開催されているお祭りです。今宮神社は日光二荒山神社の分社的性質を持つ神社で、かつては今宮権現と呼ばれていました。また現在の本殿は日光東照宮を思わせるような権現造りで、その荘厳で美しい姿は1681年(延宝9年)に改築されたものと伝わっています。
そして、鹿沼秋まつりの見どころとして知られる「繰り込み」と「繰り出し」が行われるのも今宮神社。一般的な宮入に当たるものが繰り込みで、宮出が繰り出しです。
まずは12時半から繰り込みがはじまりますが、彫刻屋台が次々に今宮神社境内へと入ってくる様子は見応えがありますよ!12時半を目前に鳥居の外側を見渡すと、今年の当番町の蓬莱町(ほうらいちょう)が先頭で準備を進めていました。
さあ時間になり繰り込みです!
列の前方にはカラフルな服を着た手古舞(てこまい)が並び、場を華やかにしてくれます。
彫刻屋台が鳥居をくぐりました!
そのまま社殿の前へ進みお囃子の奉納です。
神職の方からお祓いを受けるシーンもありました。
社殿前での挨拶を済ませたら、くるっと回転して所定の位置に。後輪を上げて対応する様子は見どころですよ!
鹿沼秋まつりが5年ぶりに開催中です!当番町の蓬莱町が今宮神社へと練り込み、お囃子を奏でながら回転を魅せています!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/uHOKRKzi1N
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) October 7, 2023
続いて第二番の鳥居跡町(とりいどちょう)も繰り込みを行っていきます。鳥居跡町は新鹿沼駅周辺の町名なのですが、その由来はかつて日光山の遠鳥居があったことから。また鹿沼宿の南の入り口にあたっていた町でもあります。
鬼板(屋根上部)と懸魚(屋根下部)を迫力のある鳳凰が羽ばたいていますね。鳳凰の周りを飾る牡丹の花も見事です。
社殿前での回転も勢いがあります。
三番目にやってきたのは仲町(なかまち)。意匠が細かいこちらの彫刻屋台は、江戸時代に建造されたもの。仲町をはじめ、江戸時代から残る彫刻屋台は14台もあるんですよ!
また江戸時代からの彫刻屋台には龍が彫られていることが多いようで、こちらも要注目。仲町の龍は火炎をまとっていますね。
側面、後方にもびっしりと彫り物があります。これはすごい仕事です。
麻苧町(あさうちょう)の手古舞は明るい服装でやってきました。各町に手古舞が付いているのも鹿沼秋まつりの特徴の一つです。
こちらは側面に金の龍がいるのが注目ポイントでした。
鬼板と懸魚には牡丹と唐獅子が彫刻されているのも特筆すべきところ。他には無い珍しい装飾となっています。
ここで先ほどまでの白木とは打って変わり、カラフルな彫刻屋台が繰り込みをしてきました。こちらは石橋町(いしばしちょう)です。
一面が菊の花で埋め尽くされた豪華な造りとなっている石橋町の彫刻屋台。この華やかさには目を見張ります!
側面もこの通り。美しすぎる世界が広がっていますね。
カラフルに彩られた彫刻屋台も練り込みを行いました!見事な装飾ですね!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/YQux7c1Vo8
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繰り込みを終えた彫刻屋台は続々と境内に整列。今年は26台が並びますが、既に見事な装飾に包まれた圧巻の光景が広がっています。
12時半にはじまった繰り込みですが、なんと最後の彫刻屋台が終えるのは15時半以降になるんです。それだけ多くの彫刻屋台がやってくるのですから、見応えがありますよね。
後半に繰り込みを行った町は、社殿の側面へ連なっていきます。これだけの彫刻屋台が停車できるスペースがある境内の広さにも驚きです。
鳥居の外へ出ると、繰り込みを今かと待つ彫刻屋台が並んでいますよ。
鳥居から真っ直ぐに延びる参道へ何台も並びます。下横町(しもよこまち)は一面に蓮の花が飾られ美しい様相です。
参道側から鳥居越しに繰り込みの様子を眺めます。
市街地を元気良く進んできたのは末廣町(すえひろちょう)。老若男女で声を出し賑やかに進みます。「わっしょい!」の掛け声で彫刻屋台を引っ張っていくこともあるんですね。
末廣町は鹿沼の市街地を「わっしょい!わっしょい!」と声を上げながら彫刻屋台を進ませていました!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/zqqlkRaZK8
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今宮神社への繰り込みは4つの組に分かれて実施されているのですが、後半の田町上組が連なってその時を待っていました。ちなみに当番町の蓬莱町の所属している最初に繰り込みを行っていた組は、下組です。
そろそろ田町上組も動き出せそうです。見事な府所町(ふどころちょう)の龍も待ち侘びているかもしれません。
日の丸扇子の合図で動き出しました。めちゃくちゃ威勢の良い出発です!
府所町は、「それ!それ!それ!それーっ!」と盛り上げてからの大回転!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/Io7fTkEeBB
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提灯に照らされての繰り出し
全ての町の繰り込みが終わり、日の傾きはじめた17時頃。今宮神社境内へ止め置かれた彫刻屋台に提灯が付けられはじめました。
付けられた提灯には火も灯され、まもなく繰り出しがはじまります。
時間になり、一番町の繰り出しです。当番町の蓬莱町が社殿前へと進んできました!
奉納演奏を行い、後輪を上げてダイナミックに回転。鳥居の方へと向かっていきます。
繰り出していく当番町、蓬莱町の彫刻屋台。周りの屋台もお囃子を打ち鳴らしていて、これは盛り上がります!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/UI1hs5dlG2
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そのまま鳥居をくぐって繰り出しです!
蓬莱町が繰り出しを終えたところで、社殿前には各町の代表が集ってサークルが。
各自の手には役職の書かれた提灯が握られています。辺りも暗くなってきた中で雰囲気がありますね。
ここで執り行われるのが、手打ち式です。宮司さんをはじめ複数の方から挨拶や注意事項が伝えられ、最後には盛大な手締めが行われました。さあ、夜の部がはじまりますよ!
今宮神社境内で手打ち式が行われました!これから次々に彫刻屋台が繰り出しを実施していき、鹿沼の町々で行われるぶっつけでお祭りは最高潮を迎えていきます!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/CxPj6Oa95O
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手打ち式が終わると、繰り込みの際と同様の順番で、次々に各町の繰り出しが実施されていきます。まずは鳥居跡町から。
今宮神社境内のこの雰囲気がたまらない!繰り出しに向け、鳥居跡町の彫刻屋台が動き出しました!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/k89nJwE4hb
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社殿前に進んで、奉納演奏をして、回転して、という流れも一緒です。
鳥居跡町が今宮神社の社殿前で回転し、繰り出しを行っていきます!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/pO2QR4Yqoo
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鳥居前方へと場所を移してみましょう。こちらでは鳥居すれすれに繰り出しを行う彫刻屋台を見ることができますよ!麻苧町は本当にギリギリです。
石橋町も豪華な菊の花と鳥居の対比が映えますね。
田町下組所属の中田町(なかたまち)も出てきました。各町で屋根への乗り方や人数が違うのもチェックポイントです。
繰り出しの瞬間を、動画でもぜひご覧ください!
下材木町が鳥居をくぐり、繰り出しを行いました!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/tnwnIT9gZT
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寺町の彫刻屋台、繰り出しのシーンです!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/MrjSxCdT4k
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繰り出しの先に広がる参道。日が沈み暗くなった参道を、今宮町の高張提灯が照らします。この後は町に出た組ごとに、クライマックスの「ぶっつけ」が行われていきます!
ぶっつけでクライマックス
今宮神社を繰り出した各町の彫刻屋台は、所属の組ごとで鹿沼市街地各所に集合します。こちらは下組7町が集まりはじめている日光例幣使街道の様子です。
下材木町交差点に停車をはじめました。こちらで最初のぶっつけを行うようです。「ぶっつけ」という名前がついていますが実際に屋台をぶつけ合うわけではなく、お囃子の競演が披露されるものになります。
寺町の彫刻屋台が下材木町の交差点に到着し、下組の7町が揃いました!これから、ぶっつけが披露されていきます!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/acE5M5zD2d
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彫刻屋台が対峙し合い、交差点内には各町の人が溢れていよいよはじまりそうですよ!
お囃子が盛大にかき鳴らされ、ぶっつけスタート!これはものすごい活気。
みんな手を上げ騒いで、たまらないですね!「そーれ!そーれ!」と声が上がります。
5年ぶりのぶっつけということで、これは気持ちが熱くなっていくところ。「若いの前行け!」なんて大人からの声も飛んでいました。
下組のぶっつけが披露されました!ものすごい活気で、これは熱くなりますね!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/y36F34ppxg
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右も左も四方八方、これは大変な盛り上がりです!
もうたまらない盛り上がりですね!四方八方から聴こえてくるお囃子も最高です!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/zcEjJ7yaJL
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そろそろ一旦ぶっつけ終了のお時間に。最後にかけて、一段と上がる声も大きくなっていました。
ぶっつけが終了すると、再び平穏な雰囲気に戻ります。ぶっつけは一度だけではなく、この後も各所で行われていきますよ。
所を変えて、こちらは田町下組6町が集まる下田町2丁目交差点。こちらはぶっつけの開始に際し、代表が交差点中央に集まっていました。各組でぶっつけのやり方も多少の違いがあるとのことです。
いざ、ぶっつけがスタートしていきますよ。
こちらはぎゅうぎゅうになりながら盛り上げます!曳き別れの瞬間ギリギリまで盛り上がっていました。
田町下組6町でのぶっつけからの曳き別れシーンです!こちらもすごい活気でした!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/VUJUwAK69e
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石橋町交差点へやってくると、再び下組がぶっつけ。提灯や扇子を空高く振って最高潮を迎えています!
石橋町交差点でも、下組がぶっつけ!せっかくなので、石橋町の彫刻屋台横から眺めています。#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/wErJO1l5lr
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最後は手締めが決まり、きれいに締まりました!
ぶっつけが終わり、会場一同での手締め!この雰囲気が良いですよね!#鹿沼秋まつり #祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/YRbSGag65n
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) October 7, 2023
露店のグルメ・鹿沼名物も必見!
お祭りへやってきたら、お祭りグルメも楽しみたいところですよね。
お祭りのメイン通りになっている日光例幣使街道にはたくさんの露店が連なり、焼きそばやお好み焼きといった定番のお祭りグルメからりんご飴やかき氷といったデザートまでが楽しめますよ!
また「まちの駅 新・鹿沼宿」や「屋台のまち 中央公園」といったスペースにはテントも出現。こちらでもご当地グルメ等を楽しむことができます。
そしてグルメ露店の中で特筆すべきなのがこちら、「煮いか」を提供する露店です!
北関東では定番ですが、鹿沼でも何店舗も出ています。前を通ると漂ってくる、食欲をそそる煮いかの匂い…ぜひお試しください。
ここからは鹿沼名物もご紹介していきます。一つ目は「ニラそば」。元々有名だったそばに鹿沼特産のニラを加え生まれた一品で、これが案外おいしいんです。
香り豊かなそばに、クセのない甘みの広がるニラがマッチング。食べて帰らないと損な鹿沼名物ですよ!
二つ目はこんにゃくです。ニラと並び、古くからこんにゃくの生産地でもある鹿沼。在来のこんにゃく芋もあるそうで、ぷりっぷりのこんにゃくを食べたらやみつきになりますよ!
最後は鹿沼秋まつりにぴったりな「屋台もなか」。彫刻屋台の運行ルートにある「御和菓子司 松月」さんの名物です。
小倉とゆずの二種類があるのもありがたい銘菓で、お家に持ち帰ってもお祭りの余韻を味わえるのが嬉しいですね。
鹿沼へのアクセス
・新宿駅よりJR湘南新宿ライン 特急スペーシア直通で新鹿沼駅まで約90分
・東武日光駅より東武日光線で新鹿沼駅まで34分
・宇都宮駅よりJR日光線で鹿沼駅まで14分
鹿沼秋まつりは本日10月8日も開催されています。22時頃までぶっつけも行われる予定ですので、お近くの方はぜひ来てみてください!