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柴又帝釈天参道を中心とする門前町が映画『男はつらいよ』の舞台
東京の下町、江戸川の西岸に位置する葛飾柴又は江戸時代初期の寛永年間1629年に柴又帝釈天が建造されてから、門前町として発展を遂げました。柴又帝釈天では、2月の節分会、4月の帝釈天出現祈祷大法要、8月のみたままつり、11月の水神祭など数多くのオマツリが開催されています。帝釈天の二天門と京成電鉄柴又駅を繋ぐ参道は、オマツリ開催日には大勢の人々で賑わいます。
帝釈天への参拝者が利用した参道は、時代とともに変化しています。1960年代から山田洋次監督の映画『男はつらいよ』の舞台となったため、寅さん映画ファンの聖地となったのです。参道の左右の土産店や飲食店は旅情に溢れ、一年を通して観光客が訪れるようになりました。
『男はつらいよ』第1作でさくらと博が結婚式を挙げた「川甚」
山田洋次監督は葛飾柴又の原風景を巧みに活かしスクリーンに流し込みましたが、今も営業を続けるうなぎ店でも印象に残る映像が作り上げられました。記念すべき第1作で「さくら(倍賞千恵子)」と「博(前田吟)」の結婚披露宴の会場となったのが、帝釈天の裏に店舗を構える「川甚」です。本館の門構えを見ると、式の開始に間に合わなかった「タコ社長(太宰久雄)」が原付で乗りつけるシーンを思い起こされる方もいらっしゃることでしょう。「フーテンの寅」こと「車寅次郎(渥美清)」の小学校の同窓会の会場ともなりました。玄関の「川甚」の字体は1969年の第1作公開の当時と変わっていません。
「川甚」の創業は江戸時代後期の寛政年間に遡り、220余年もの間、伝統の川魚料理と四季折々の季節料理をメニューとする老舗料亭として営業を続けています。寅さん映画の他にも、夏目漱石が『彼岸過迄』、 尾崎士郎が『人生劇場』、谷崎潤一郎が『羹』、松本清張が『風の視線』などの作品で「川甚」が描かれています。店内には尾崎士郎、三島由紀夫、岸信介などのサインが額に入れて飾られています。
『男はつらいよ』第23作『翔んでる寅次郎』の結婚式シーンで寅さんが仲人役を演じた「川千家」
第23作『翔んでる寅次郎』では、何故か寅さんが結婚式の仲人役を務めています。式場に選ばれた「川千家」で結婚の披露をしたのは、「入江ひとみ(桃井かおり)」と「小柳邦夫(布施明)」です。「川千家」は、他の作品でも繰り返しスクリーンに映し出されており、寅さん映画ファンにとって見逃せない聖地となっていることでしょう。
「川千家」は1770年代の創業以来、うなぎや鯉などの川魚料理店としての営業を続けています。店内は和風の中庭を囲んでテーブル席、座敷席、個室、宴会場が設けられています。キャパシティは400人を超えるので、ゆったりとした雰囲気で伝統の味を体感することができます。
葛飾柴又に溢れる『男はつらいよ』の旅情
「川甚」や「川千家」でうなぎを味わえば、すっかり寅さん気分になることができることでしょう。ところが、葛飾柴又には『男はつらいよ』の撮影スポットが溢れています。寅さんが歩いた下町を散策すると、豊かで人情味に満ちた旅情を感じることができるでしょう。シリーズの第1作から第4作で、寅さんの実家となったのが「とらや」です。
「高木家老舗」では、映画のロケ合間に出演者やスタッフが休憩をとりました。
うなぎや草だんごを味わった後、江戸川沿いの博物館「寅さん記念館」に立ち寄れば、映画の世界と現実が入り乱れることになるかもしれません。
東京の下町、葛飾柴又は帝釈天を中心とする門前町として発展を遂げました。柴又帝釈天の二天門に繋がる参道には下町の旅情と人情が溢れています。1960年代からは『男はつらいよ』の舞台となり、寅さんの聖地となりました。映画のスクリーンに映し出されたうなぎ店やだんご屋を訪れると、寅さんになった気分を味わうことができるでしょう。