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東京ドーム6個分を開墾?“能登を醸す”とは?数馬酒造が循環型の酒造りやSDGsに取り組むワケ

更新日:2022/3/23 タカハシコウキ
東京ドーム6個分を開墾?“能登を醸す”とは?数馬酒造が循環型の酒造りやSDGsに取り組むワケ

数馬酒造は石川県能登町で活動する事業者の一つ。近年ではSDGsなどの文脈から、日本酒造りを軸とした循環型の取り組みが大きな注目を集めています。

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https://chikuha.co.jp/project/

数馬酒造が取り組んでいるSDGsは大きく3つにまとめられています。

①地域資源を最大限に活用した持続可能な原材料調達100パーセントを実現する

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SDGs17の目標中:9.11.12.15.17

②環境負荷に考慮し、社会の貢献するものづくりを行う

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SDGs17の目標中:11.12.14.15

③あらゆる人材が活躍できる多様性のある労働環境を構築する

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SDGs17の目標中:5.8.11

今回は注目を集めている取り組みについて、数馬酒造の5代目・数馬嘉一郎さんへインタビュー。能登の魅力や想い、活動していく上での信念について伺いました。

 

“能登を醸す” 地域と歩む日本酒造り

日本海に大きく突き出た能登半島。その地には、石川県能登町が広がっています。

独特な地形・気候から漁業や農業、発酵産業が発達。交易も盛んに行われ、各地の習俗が混ざり合い、あばれ祭をはじめとしたキリコ祭りなど、独自の文化が形成されていきました。

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数馬酒造の前身となった会社が活動を始めたのは江戸時代のころ。当時は醤油造りを生業にしていました。

醤油の仕込み水が日本酒にも適していたことから明治2年に日本酒造りを開始。数馬酒造としての歴史がスタートしていったのです。

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「先祖代々共通していたのが、能登の文化や自然、人々に対しての強い想いでした。

日本酒造りには欠かせないワードである“醸す”は、まさに先祖たちが大切にしていた想いを現す言葉だと捉えています。

“醸す”と同じように、我々も長期的な視点で時間をかけて、地域に貢献していけるような企業を目指したいと考えております。」

嘉一郎さんの言葉通り、数馬酒造のHPには“能登を醸す”というキャッチコピーが用いられています。

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https://chikuha.co.jp/

「日本酒の原料となる米や水は、地域と密接に関わりあっています。つまり地域の資源がしっかりとしていないと良い酒が造れないんです。自然環境があってこその酒造りなんですよね。」

数馬酒造が活動を続けていくためには、能登に広がる貴重な資源や魅力を守り、後世に伝えていく必要がある。

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そうした考えに基づき数馬酒造は、HPに①としてまとめられている、9.11.12.15.17の目標への取り組みを、SDGsの概念が登場するよりも前から行っているのです。

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当時業界最年少で承継 より良い酒造りのために社内改革を実行

新卒で都内のコンサルティング会社に就職していたという嘉一郎さん。事業承継は突然のことだったといいます。

「実家に戻ったのは先代から『数馬酒造をそろそろ手伝わないか?』という話をもらったのがきっかけでした。」

小さい頃から「経営者になりたい」という想いがあり、30歳くらいで起業しようと考えていたという、嘉一郎さん。しかし23歳の頃に「その7年間は何を待っているの?」と聞かれた際にハッとし、「30歳になるまで待つ必要はないな」と考えていたタイミングだったため、先代の言葉を機にUターンを決めたといいます。

kazumashuzo-14 のコピー

「最初は挨拶回りや配達を担当していましたが、5ヶ月くらいが経過したころ、突然社長室に呼ばれ『来月から社長やるか?』というやりとりがあったんです。そうして24歳のころ、当時業界最年少で数馬酒造の代表に就任しました。」

代表となった嘉一郎さんは、様々な場所へ足を運び、多くの人と意見を交換しながら経営者としての学びを深めていきました。

「多くの社長さんたちとお話していくなかで、日本酒業界の特殊性に気付かされました。

例えば、日本酒造りに欠かせない杜氏さんを筆頭とした季節雇用型の技術集団。日本酒造りにおいて杜氏さんは、醸造の最高責任者を担いますが、数馬酒造での酒造りを終えると農業など別の分野の仕事をされていました。」

「この仕組みを説明すると、異業種の社長さんたちからは口を揃えて『どうやって会社に技術が残っていくの?社内で醸造しないの?』と言われていました。

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また従来の季節雇用型の杜氏制度では、タイムリーなコミュニケーションが取りにくくせっかくいただいたお客さまからの声を、酒造りに活かすことが難しい状況でした。働き方から見ても厳しい環境で、このままだと働き手が減ってしまい、酒造りの文化が衰退してしまうかもしれない。この状況をなんとかしたいという想いがありました。」

こうして取り組んだのが通年雇用の正社員をメインに据えた醸造体制への転換でした。加えて採用を強化したことで、醸造メンバーの若返りが加速していったのです。

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しかし当時は斬新な取り組みであったことから、先代との衝突もあったといいます。

「先代は僕が代表となってから、基本的に経営に口を挟むことはありませんでした。

ですが、若手社員をメインとした醸造体制に切り替えていくと伝えたときは『そんな甘い世界じゃない』と怒られましたね(笑)

とはいえ私なりに“能登を醸す”を追求していった結果の取り組みだったので、意志をもって進めていきました。

この件について、その後何か言われることはありませんでしたが、先代は亡くなる直前に『あいつが次に何をやるか、楽しみだ』と言ってくれていたそうです。最終的には期待してくれていたんだと思います。」

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嘉一郎さんが進めた社内の改革は、社員一人一人が自由な発想で酒を仕込む“責任醸造”と呼ばれる取り組みを生みだし、そこから新たな日本酒が開発されていくこともあるそう。

また働き方が改められたことで会社の風通しも良くなり、お客さんの声を反映した日本酒造りも可能になったといいます。

これらは数馬酒造HPにおいて、5.8.11の目標への取り組みとして、③にまとめられています。

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理念を実現すべく、能登の課題に立ち向かう 耕作放棄地の開墾

嘉一郎さんは社内だけでなく、視点を広げて新たな取り組みを進めていきました。

「数馬酒造の代表として活動をしていくなかで、おいしさを追求し、お客様にお酒をお届けすることだけが“能登を醸す”なのか?といった想いが湧いてきたんです。」

そんなとき学生の時代の友人で農業法人を立ち上げた株式会社ゆめうららの裏社長と再会し、現在能登の農業では耕作放棄地が多くなってしまい景観も悪化してきている、といった課題を聞いたといいます。

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「私たちの取り組みはすべて地域の課題から思考をスタートしており、耕作放棄地の問題は立ち向かうべきものだと感じました。

能登で活動していると、ネガティブな話題がたくさん飛び込んできます。でもそれは一つの事実でしかなく、ネガティブにしているのはその人の価値観。捉え方次第で、その事実はチャレンジの切り口になりうると考えています。」

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「能登の魅力を守りながら、数馬酒造として活動を続けるため、農業の課題を切り口に、酒米を育てていく取り組みをスタートさせました。」

2022年には東京ドーム6個分の耕作放棄地を開墾し、数馬酒造の日本酒造りに用いる酒米の約6割を供給するに至っています。また酒造りの過程でできた米ぬかは、地元企業と連携して飼料などに活用。日本酒造りをはじまりとした地域資源の循環を実現しています。

数馬酒造のHPでは、②にまとめられている、環境への取り組み。SDGs・17の目標でいうと、

11.12.14.15 に当てはまります。

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私たちは2014年からこうした取り組みを始めていますが、2015年にSDGsという概念が生まれたこともあり、年々反響が増えていっているように思います。

講演の依頼をいただくこともあり“能登を醸す”という想いのもと、考え、行動してきたことをお話しています。」

能登の魅力を引き出す起点となりたい 数馬酒造のこれから

社会的にSDGsへの意識が高まっていることもあり、注目を集めている数馬酒造。嘉一郎さんに、これまでと今後の取り組みについて伺いました。

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「これまでの取り組みはすべて、“能登を醸す”という理念を追求した結果、行ったものです。これからもパートナー企業さんたちと協力しながら、理念を実現して行けたらいいなと考えています。

能登は今、とても盛り上がっている地域です。その盛り上がりを少しでも後押しできるよう、真っ先に課題へ挑戦していく企業でありたいと思っています。

人や自然、文化といった、能登の魅力を引き出す起点になれたらいいなと考えています。」

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
地域のお祭りやインタビュー、由来を調べるのが好き。いろんなお祭りを知りたいと思っています。

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