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大陸渡来の高麗神社に舞う華やかな獅子舞!400年変わらぬ伝統を繋いでいる秘訣とは

更新日:2022/4/14 稲村 行真
大陸渡来の高麗神社に舞う華やかな獅子舞!400年変わらぬ伝統を繋いでいる秘訣とは

桜満開の中で、舞い歩く華麗な獅子!赤、紫、緑と彩り豊かな珍しいデザインをしている。この獅子舞が登場したのは、埼玉県日高市の高麗神社で行われた「桜祭」。春の訪れを祝い、毎年この時期に行われている。
2022年4月3日に、現地で桜祭の獅子舞を拝見することができたので、その様子をお届けする。

高麗神社と獅子舞の由来は?

高麗神社は歴史が古く、奈良時代に創建された神社だ。高麗王若光、猿田彦命、武内宿弥命を祀っている。高麗王若光は高句麗から派遣された外交使節団の1人で、高句麗から渡来して武蔵国高麗郡の長官になった人物だ。渡来してきた人々の守り神として、この神社が作られた。

獅子舞は江戸時代の初期から氏子一同によって始まった舞いであり、400年間舞いの所作や式次第は変わっていない。これは高麗神社への尊崇の念から来るとも言われており、かつては獅子の舞い手は氏子の長子と決まっていた。

また、世話人が4人いて後輩の担い手達の舞いの所作伝承に力を入れていることがよくわかる。獅子舞奉納には天下泰平、五穀豊穣、家内安全、商売繁盛などの意味が込められている。

華やかさと躍動感が溢れる獅子舞の演舞

では、当日の獅子舞の様子を振り返っていきたい。高麗神社はJR川越線の高麗川駅から徒歩20分ほどのところにあり、車が停められる大きな駐車場もある。

参道脇の駐車場まで来ると、なんと大きな将軍標(チャンスン)が!これは朝鮮半島の魔除けに使われる境界標であり、高麗神社がもともと渡来系の神社だということを実感する。桜も綺麗に咲いている。

境内に入ってみると、拝殿まで長い列!今日は桜祭ということもあり、参拝者がとても多いのだろう。日曜日ということもあり、家族連れで来ている方も多かった。

獅子舞が始まったのは、午前11時すぎ。雨が降る寒い天気の中での開催だった。獅子舞は元々10月19日の例大祭で奉納されてきたが、昭和50年頃桜祭を始める時に、この機会にも奉納しようということになり、一部を奉納している。この日行われた獅子舞は30分程であった。

まずは宮参りといって、客殿から出発した獅子たちはまず境内を外回りに鳥居に向けて舞い歩く。獅子舞の担い手といっても様々で、導き、天狗(猿田彦命)、オカメ(天女命)、貝吹き(山伏)、ササラッコ、棒使い、ハイオイ、獅子、笛などの役柄がある。

鳥居に向かって、境内を宮参りしていく。太鼓をドンドンドンと叩く獅子の姿はとても勇ましく感じられた。獅子舞では場面ごとに役者が替わる場合、その場面の一つずつを「庭」と呼び、ここでは3つの庭があるため3人の獅子の役者が必要になる。獅子の役者は小学生高学年くらいから始まり、15~20年くらいは現役で行う。まさに、子供から大人まで、世代を超えた獅子舞なのだ!

さあ、ここから鳥居を越えて、参道を通り境内へと入っていく。行列が常に移動しているため、人垣も散らばっており、写真も撮りやすい上にコロナ禍でも密にならずに助かる。

獅子はドンドンと参道を進み練り歩いていく。両手にバチを持ち、腰付近で太鼓を鳴らす一方で、足を振り上げるなどしてリズムを取っている。

境内の中ほどにある祓所に到着!ここで獅子舞の演舞が行われた。後ろに控えるのがササラッコたち。ササラのジリジリと硬い音が強く響く一方で、心地よい笛の音色が軽快な雰囲気を作り出している。太鼓の音も相まって、様々な音が響いている空間は躍動感に溢れていた。

祓所での演舞が終わると、再び行列を作り、出発地点である客殿に戻っていく。人々は名残惜しそうにそれを見送る一方で、カメラマンたちは最後まで一瞬の隙を逃すまいとシャッター音が鳴り響く。

獅子たちも祓所を後にして客殿へと向かう。

コロナ禍のためここまで約30分と短縮版で、そのうえ雨の中での開催ではあったが、地元の方々をはじめとした観客もたくさんいて賑わっていた。当日の宮参りの内容を中心に、こちらの動画にもまとめさせていただいたので、ぜひご覧いただきたい。

その他にも、神社境内にある斎館では、飛鳥時代の装束や高句麗古墳の壁画などの展示が行われていた。また、神楽殿では日光さる軍団による公演や巫女舞なども行われ、かなり見どころ満載のお祭りだった。

氏子のみでも多世代で担い繋ぐ400年の伝統

獅子舞を拝見していて、まず高麗神社の氏子のみで継承していることが興味深く感じられた。氏子なので、とりわけ神社に対する崇敬が深い人々によって、受け継がれるということになる。日本全国を見渡せば、獅子舞は町単位で行われることも多く、公民館を拠点として行われる場合も多い。

そして、この獅子舞を継承する役者は氏子の中の子供から大人まで約50名に及ぶ。獅子舞の役割がたくさんある分、担い手も確保しなければならない。そういう意味では、3頭の獅子に入れる年齢を小学校高学年以上、高校生以上、社会人という風に年齢別に分けているのも興味深い。さらに、この獅子を教える立場の世話人も存在する。

全国的には青年団や若連中のような組織で若い世代だけが獅子舞の役者を担うこともある。一方で高麗神社の獅子舞では、多世代が関われる仕組みが自然とできているようにも感じられた。これが400年間舞いの所作や式次第が変わらず、継承されている秘訣のようにも思える。

秋にも見られる!高麗神社の獅子舞

今回、桜祭で拝見した獅子舞は、本来は毎年10月19日の高麗神社の例大祭で奉納されている。秋に行われる獅子舞なので、収穫に感謝する意味があるようだ。春の訪れを祝う桜祭とともに、秋の収穫を祝う例大祭もある。季節の変わり目とともに出現する高麗神社の華やかな獅子舞に、ぜひ今後もご注目いただきたい。

参考文献:日高町教育委員会『日高町史民俗編』(平成元年3月20日)、日高町教育委員会『日高町史文化財編』(平成2年3月31日)

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
日本全国500件以上の獅子舞を取材してきました。民俗芸能に関する執筆、研究、作品制作等を行っています。

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