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郷土芸能を一か所で見られる!岩手県宮古市「郷土芸能祭」の魅力とその狙いとは?

更新日:2022/3/15 いなむ
郷土芸能を一か所で見られる!岩手県宮古市「郷土芸能祭」の魅力とその狙いとは?

様々な芸能団体を一か所で見てみたい。そういう想いは少なからず存在するのだろう。岩手県宮古市では3月6日に市内を中心とした郷土芸能団体が一堂に会する「みやこ郷土芸能祭」が行われた。

この郷土芸能祭は今年で13回目を迎え、地元の方々を中心に賑わいを見せた。新型コロナウイルスの影響により、周辺の郷土芸能祭が次々と中止になる中で、観客席の間隔を空けるなどの感染対策も徹底され開催できたようだ。僕は岩手県各地で行われているこの「郷土芸能祭」というイベントに興味を持っており、今回宮古市に伺ってきた。

郷土芸能祭とは?

郷土芸能祭は岩手県各地で開催されている、地域の郷土芸能が一同に集まるお祭りだ。ステージ上で、郷土芸能団体が順々に演目を披露していく。普段は地域ごとに行われる祭りの日程が重なるなどの理由で、なかなか他地域の祭りに足を運べないという方でも、一気に多彩な郷土芸能が見られるチャンスとなる。また、お互いの郷土芸能の魅力を知り、高め合い、同時に自分たちの郷土芸能が唯一無二のものであることを知ることができる機会にもなる。

会場の宮古市民文化会館へ

岩手県宮古市は本州最東端の町で、多彩な郷土芸能が残る町として知られている。また、沿岸と内陸を繋ぐ交通の要衝であり、三陸鉄道の中央拠点でもある場所だ。今回は、宮古市全体の郷土芸能祭である「みやこ郷土芸能祭」が開催されるということで、宮古市民会館に伺ってきた。

宮古市民文化会館は三陸鉄道リアス線の「磯鶏駅」から徒歩5分の場所にあり、車では宮古駅から10分でたどり着く。看板には「みやこ郷土芸能祭」の文字。さっそく中に入ってみよう。

宮古市や盛岡市の郷土芸能を上演

案内されたのは客席がずらりと並ぶ大ホール!指定席のため整理券に表記されている席の番号を見ながら自分の席を探す。お客さんはご年配の方が多い印象で、仲間うちで連れ立って来ている場合が多いような印象だ。郷土芸能談議に花を咲かせながらも、開演を待っている姿も見られた。今回は宮古市内外の4団体が公演してくれるようだ。

◎澤目獅子踊り


ステージの幕がぐぐっと上がって、まず最初に登場したのが、盛岡市の指定無形民俗文化財の澤目獅子踊り。獅子の表情がおおらかで、ほのぼのとしているのが印象的だ。300年以上にわたって伝承されてきた歴史ある踊りである。

後で運営側の方に伺った話によれば、こういう宮古市以外の団体も演舞してもらうことで、地域にとっては刺激になり「花を添えてもらうような意味もある」という。これは郷土芸能祭が始まった当初からの取り組みではなく、途中から取り入れた工夫のようだ。澤目獅子踊り以降は全て宮古市の郷土芸能団体による演舞が行われた。

参考動画はこちら。

◎末角神楽


次に披露されたのが末角神楽の舞い。太陽が昇るようなデザインの神楽幕を背景に舞う姿が印象的だった。毎年8月の加茂神社、9月の早池峰新山神社の祭礼などで神楽の奉納を実施されている。早池峰山を信仰する漁業者によって、大漁成就や海上安全などを乞われ、三陸沿岸を回った歴史もあるようだ。今回は山の神舞をメインに披露していただいた。

参考動画はこちら。

◎黒森神楽


その次に登場したのが黒森神楽。国指定の無形民俗文化財になっており、迫力があり見応えのある舞いだった。演者が体に力をみなぎらせて震える様子や太鼓や鉦の軽快で深妙なリズムが、まさに神の出現を想起させるようで感動した。

この黒森神楽は普段、正月に権現様を携えて陸中沿岸の地域を廻り、家の軒先で悪魔払いの祈祷を行う。また、旧盛岡藩の領内である宮古市から釜石市までと、かなり巡業範囲が広いことでも知られている。

参考動画はこちら。

◎花輪鹿子踊り


ラストに演じられたのが、花輪の鹿子踊り。鹿の角がどこか武将の兜のようにも見えた。根城館というところに居を構えた閉伊頼基の家臣、花輪次郎なる人物が芸を求めて旅をして、越後から習ってきたのが始まり。それから約400年にもわたって受け継がれている。毎年4月の華森神社例大祭で披露され、お盆には先祖供養の踊りをする。

参考動画はこちら。

このように踊り系が2団体、舞い系が2団体で、それぞれ演目の内容も成立背景も異なるため、見ていて楽しむことができた。宮古市の郷土芸能の多彩さを知ることができてよかった。

みやこ郷土芸能祭の狙いとは?

今回、みやこ郷土芸能祭の運営側の方にもお話を伺うことができた。開催目的としては市内の芸能団体に発表の機会を提供することや、その伝承と保存をすること、市民への普及啓蒙とともに後継者育成をすることなどの狙いがあるようだ。地域の祭りだけではなく、郷土芸能祭という形で様々な地域の郷土芸能を一か所で見られるようにすることが重要だという。

また、みやこ郷土芸能祭の立ち上げに携わった方にお話を伺うこともできた。元々、郷土芸能祭というのは平成に入ってから始まった取り組みで、行政が主導で岩手県全土に郷土芸能を実施する機会を増やしていこうという機運の高まりの中で始まった。出演団体は自薦で募っており、去年はどこが出演したのかを確認しながらあまり被りすぎないようにして、多くの団体に出演の機会を提供しながら毎年開催しているようだ。

郷土芸能を披露する場が増加!その効果は?

宮古市内の郷土芸能祭としては現在、川井、津軽石という地域単位のものと、宮古市全体ものとで合計3つが存在する。
基本的には市町村単位で行われているものの、川井のように合併で宮古市に組み込まれた地域は、合併前の郷土芸能祭をそのまま続けているという場合もある。津軽石に関しては2021年12月に取材させていただいたので、その時の記事はこちらをご覧いただきたい。
また、宮古市では郷土芸能祭だけでなく、例えば新里祭りや酒あわび祭りなどの地域のイベントで郷土芸能団体に出演してもらうという動きも活発になっている。

これらの動きによって、実際に地域の郷土芸能の継承が促進されているかということについては「まだまだです」とおっしゃる方もいた。人口減少が進む中で、担い手を増やすなど取り組んでいかなければいけないことは山積みのようだ。ただし、東日本大震災以降、郷土芸能が被災者を励ますような場面もあり、今まで以上に熱を込めて練習に取り組んでいる地域が多くなったともおっしゃっていた。

みやこ郷土芸能祭を訪れて感じたこと

改めて考えてみると、岩手県のように県全域で数多くの郷土芸能祭が開催されている都道府県は珍しい。まず、郷土芸能が盛んな土地だからできることでもあると思う。前述のように宮古市内には市単位だけでなく、もっと狭いエリアでの郷土芸能祭もある。

郷土芸能祭があるからこそ、他の地域の郷土芸能を見て、自分たちの郷土芸能に誇りを感じられる。また、他の団体に刺激を受けて自分たちも頑張ろうと奮起する。そういう良い循環が地域の活気に繋がっていくようにも思える。郷土芸能はその地域の空気感、雰囲気を作っていくような存在でもある。そのためには、自分たちの土地で伝承していくのを基本としつつも、いくつかの地域が一同に会して郷土芸能を披露し合う機会も必要なのだろう。

今回開催された「みやこ郷土芸能祭」の開催概要はこちらのHPからご覧いただきたい。

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
獅子舞マニアです。ライターやカメラマンをしています。趣味は、獅子舞の鼻を撮影することです。その他クレイジーな祭りにも潜入します。

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