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古墳時代~現代まで!美しい日本髪を当時の衣装とともに堪能できる「櫛まつり」とは?

2023/9/23
2023/9/23
古墳時代~現代まで!美しい日本髪を当時の衣装とともに堪能できる「櫛まつり」とは?

2023年9月25日に京都・安井金毘羅宮で「櫛まつり」が開催されます!

女性の髪を飾る「櫛」に感謝を込めて行われるこの祭り。この記事では、2022年の現地レポートとともに2023年の開催情報をお届けします。

美しい日本髪を当時の衣装とともに堪能

京都といえば舞妓さん!
舞妓さん、芸妓さんの髪型、綺麗ですね。

そんな美しい日本髪ですが、現在は花嫁さんも「新日本髪」や洋髪にする方が多く、目にする機会は減っています。

そういえば私、カメラマン佐々木も着物は好きで着るものの、日本髪を結ったことはありません。歌舞伎などの舞台や映画以外ではまず日本髪、見ないなぁ。。。日本髪にはどんな種類があるんだろう?

知り合いの美容師さんに聞いてみると「櫛まつりを見てください!和装や伝統が好きなら見るべき!」という答えが。

そこで、この記事では毎年9月第4月曜に京都の安井金比羅宮で行われ、日本髪の時代行列が見られる「櫛まつり」についてご紹介いたします。

(コロナ禍により、残念ながら3年連続で時代行列は中止。式典のみのため、以前の写真を元にどんなお祭りかご紹介いたします。)

美容師さんが櫛に感謝を捧げる「櫛まつり」

境内にある「久志塚」で櫛供養の式典が行われる

「櫛まつり」は美容師さんがいつも使っている櫛に感謝を捧げ、折れた櫛を供養するというお祭りです。

午後1時頃、まず最初に「久志塚(くしづか)」にて神事が始まります。

後からみると念願の日本髪の髪型を一気に見られます。んーーー、壮観!!
後ろ側がしっかりと見られて、とても良いです。

奉納舞踊「西川流 黒髪」

午後1時30分頃から本殿に向かって奉納舞踊「西川流 黒髪」が行われます。

舞妓さんではなく日本舞踊をされている方が奉納しているとのことですが、なんとも優雅で美しい…!髪飾りも豪華です。

髪型は「先笄(さっこ、さきこうがい)」といい、舞妓さんが芸妓になる「衿替え」の挨拶回りに結う髪型です。この見たことのない漢字「笄(こうがい)」は簪(かんざし)のような結髪用具のこと。まさに櫛まつりにぴったりな舞踊です。

古代からの髪型が見られる「時代風俗行列」

そして、いよいよ「時代風俗行列」が開始!
奉納舞の後、午後2時頃になると地毛結いの伝統的な髪型と風俗衣装での時代風俗行列が始まります。

京都美容文化クラブ会長 南登美子さん

なんとモデルの一部は美容学生さん。
こういう伝統芸能に参加することが出来るなんて素敵!!

境内の舞殿に一人一人、紹介されて出て来ます。

古墳時代の髪型

まず一人目は古墳時代の男性の「美豆良(みずら)」。
美豆良は平安時代以後、少年の髪型になっています。

続いて女性の「古墳島田」。頭頂部に髪を平たく畳んでいます。飾りは日蔭蔓(ひかげかずら)を巻いています。

古墳時代からも日本髪のジャンルになるんだ!と驚き。

奈良時代の髪型

貴婦人の髪型「双髷(そうけい)」は唐代の女性の俑(よう/死者と一緒に副葬する陶器の人形)の髪型をもとにしています。薬師寺の吉祥天画像や、法隆寺金堂の女神像もしている髪型です。

「高髷(こうけい)」は当時の壁画や絵画に残っている形です。

平安時代の髪型

男装の麗人「白拍子」。
烏帽子、平安時代のYシャツである水干、緋袴に太刀と男性の装束を身につけています。
当時のカラオケである「今様」に歌詞を載せて謡い、舞を演じます。現代でいう宝塚やアイドルのような存在だったようです。

 

鎌倉時代の髪型

「侍女」の髪型は平安、鎌倉時代は大垂髪(おすべらかし)よりも髪が少しずつ短くなっていき、短垂髪という腰のあたりまでの長さになりました(腰でも髪が短いという時代!)。首の下で元結(もっとい)を使い結んでいます。

「虫の垂れ衣」は武家の夫人が神社参拝など旅に出るときの姿です。特徴的な虫の垂れ衣のついた市女笠(いちめがさ)をかぶっています。姫カットのような顔の両側の髪は「鬢(びん)そぎ」という成人のあかしです。

室町時代の髪型

勤労層の婦女子がする「巻き髪」は垂髪を後頭部でくくって、頭のまわりにぐるぐると巻きつけ、白い布で巻くスタイル。京都の桂女(かつらめ)が飴や鮎を売りに出たことからはじまった髪型で「桂巻(かつらまき)」「桂包(かつらつつみ)」と呼ばれています。

桃山時代の髪型

「唐輪(からわ)」は中国や朝鮮の風俗が元になった髷です。

江戸時代前期の髪型

「立兵庫(たてひょうご)」は摂津国兵庫の遊女がしていた「唐輪髷」の変形。一般夫人の髷にもなりました。

「笄髷(こうがいまげ)」は女官がしていた髪型。「笄」というかんざしの周りに下げ髪を結います。

「元禄(げんろく)島田」は「かもめ髱(つと)」と呼ばれているように、横からみると細く長く後ろに突き出したカモメのような髪型です。

婦女の外出姿の「元禄笄髷」は紫ちりめんの輪帽子が特徴です。

江戸時代中期の髪型

「横兵庫」は粋な商売女たちが結っていた髪型。兵庫髷を横に倒したものです。

「お梶」の髪型は遊郭からはじまったようです。額に被っているのは「揚げ帽子」といいます。

「丸髷」は遊女が結った髪で、歌麿の美人画に描かれた女性はほとんどがこの髪型です。

「春信風島田」は町家の娘がする髪型。当時の浮世絵にもよく描かれていました。

江戸時代後期の髪型

御殿女中といえば「片はずし」という髪型。髷は一方だけが笄に巻きつけてあります。

「葵髱(あおいづと)つぶ髷」は女官見習いの方々の髷です。あまり膨らみがないため「押さえ髱」とも呼ばれます。

「長船」は武家奥方の格式を示す髪型。京風の特色が出ています。
「葵髱下げ上げ」は17〜23歳までに結う髪型。笄の下にくぐらせてから上にあげる結び方からついた名前です。

「おしどり」は、15〜16歳くらいまでの上方の町家の娘の髪型。
「娘島田(町家姉娘)」は、未婚の若い婦人の髪型。少女や遊女も結っていました。

明治時代の髪型

「京風芸者」の芸妓さんの島田髷は「投げ島田」といい、各花街のおどりのお茶席で結われます。

「稚児髷」は七参り、十三参りや、祭礼のお稚児さんにこの髪型の名残があります。

大正時代の髪型

「耳かくし」は洋髪の雰囲気が入った髪型。大正時代に大流行しました。

時代行列は巽橋や花見小路へ

安井金比羅宮の本殿前で日本髪の紹介が終わると、行列一向は雅楽の音を奏でながら祇園周辺を巡ります。

撮影のおすすめポイントは「巽橋 辰巳大明神」のある新橋エリア。
行列が進む場所は白川沿いで、緑の背景が綺麗に映るため、撮影しやすいのが嬉しい!

また、巽橋のあたりでは行列のモデルさんたちは10分ほどの休憩があり、飲み物を飲んでから出発します。

そのあとは舞妓さんたちの街、花見小路でも櫛まつりの行列が通ります。

有名な料亭「一力」さんの前の赤い壁が京都らしくて撮影にぴったり。

素晴らしい行事だった…!

しかし、特に舞台ではみなさん恥ずかしいようで、下を向いて足早に通り過ぎてしまいます。
横、後ろと全く形が違うのでそこからも撮影したい…!と思うものの、見に来ている人も多く前から撮るだけでもなかなか大変でした。

そして焦って撮影するなかで聞きなれない日本髪の解説。小さな舞台の上に3人ほどあがっており、どの方の解説なのか聞き逃してしまうことも多数。そこが少し残念でした。

それなら櫛まつりを主催している京都美容文化クラブに日本髪について聞いてみよう!とお伺いしてみました。

舞妓さんの現役の結髪師 山中恵美子先生が語る「櫛まつり」

山中美容室の入口「結うております」の看板はTVで活躍を見たファンからの贈り物

今回は京都美容文化クラブの副会長、山中恵美子先生にお話しを伺いました。

2022年に93歳になり、黄綬褒章を受賞した山中先生。現在も舞妓さんの結髪師(けっぱつし)として活躍されています。
また、山中先生はこの櫛まつり以外にも京都三大祭りの一つ、葵祭の斎王代のお支度もされております(ちなみに祇園祭では「弓矢町武具飾り」で参加。昔からお店に甲冑を飾っています)。

山中先生:櫛まつりは元々、5、6人の東山の役員会がはじめました。それが話題を呼び10人くらいになり、どんどんとやりたいという人が増えていきました。
美容師はいつも櫛を使うでしょう。折れた櫛に感謝をする意味ではじめたのです。今も毎年、折れた櫛を「久志塚」の中に入れています。

佐々木:ちゃんと櫛は久志塚に納めているのですね!あの大勢の時代行列はどうやって、お支度をされているのでしょうか。

山中先生:美容学校の生徒さんたちが日本髪をお勉強されているんですよ。櫛まつりは通常、4月から月2回の講習会を行います。人気のある髪型に集中してしまうため、担当する髪型を決める方法は「くじびき」で決定しています。着物はお借りして行事を行っています。

佐々木:学生さんたちにいつまでも技術を伝えていきたいと、今も教えていらっしゃるのですね。櫛まつりの見どころはどこでしょうか。

「奴島田(やっこしまだ)」は武家の娘の髪型。高島田の別名です。

山中先生:ななめ後ろからが見どころです。また小さい鬢(びん)が時代とともに横に張り出していき、長い髱(つと)がなくなっていきます。そういったところを見ると良いですよ。

鬢は頭の左右側面の髪のこと。髱は襟足近くで髪をたわめ、後部に張り出した部分のことです。

山中先生:あと日本髪に興味がある方は京都三大祭りの一つ「時代祭」の江戸時代の婦人列をご覧ください。地毛結いを見ることができます(他の時代行列はカツラです)。

櫛まつり作品集「日本伝統の髪型」にサインをしていただきました!感激。

90代になっても現役で活躍されている山中先生。ずっと櫛まつりの取材をしたいと思っていたため、とても嬉しい時間をいただきました。先生、ありがとうございます!
10月22日の時代祭で先生が結った地毛結いを見るのも楽しみです。
今後も美しい日本髪の伝統が続いていきますように。

2023年の開催情報!

日時:2023年9月25日(月)  神事13:00

場所:安井金比羅宮

主な催し:

・時代風俗行列 14:00〜

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