Now Loading...

夏越の祓とは?6月に神社で見かける「茅の輪」にはどんな意味がある?

2023/6/23
2024/3/13
夏越の祓とは?6月に神社で見かける「茅の輪」にはどんな意味がある?

毎年6月後半になると、全国の各地の神社には「茅の輪」が設置されます。読者のみなさんの中にもこの茅の輪をくぐった経験を持つ人はいるのではないでしょうか。これは「夏越(名越)の祓(なごしのはらえ)」に関わる行事のひとつで、実は季節や社会を大きく反映しているのです。

この記事では「夏越の祓」の歴史を紐解き、その意味に迫ります。これまで何となく茅の輪をくぐっていた方も、より深い体験を得られると思いますので、ぜひ最後までお読みください。

夏越の祓とは?どのような歴史がある?

夏越の祓とは、毎年6月と12月に行われる「大祓(おおはらえ、おおはらい)」のひとつです。「大祓」とは、日常生活を過ごしている間についてしまった、心身の穢れや災厄、また、犯してしまった罪や過ちを祓い清めることを指します。

大祓には、6月30日に行われる「夏越の祓」と、12月31日に行われる「年越の祓」の2つがあります。この成り立ちについて、神社本庁では「記紀神話に見られる伊弉諾尊の禊祓を起原としている」としています。宮中行事としての大祓は大宝元年(701)の「大宝律令(たいほうりつりょう)」により、正式な宮中の年中行事に制定されました。

宮中行事としての大祓は衰退していき、応仁の乱を機に途絶しましたが、江戸時代の17世紀末には再興が図られます。民間にも年中行事として定着し、心身を清めて厄災を祓い除こうとする人々が神社の境内に設置された茅の輪をくぐる姿が、当時の世の中を記録した書物にも残されています。

諸国図会年中行事大成 巻四諸国図会年中行事大成 巻四 速水 春暁斎, (1767-1823)著 文化3年(1806)刊

年越の祓よりも夏越の祓のほうが比較的一般に浸透している理由としては、夏に疫病が流行ることと素戔嗚尊(スサノオノミコト)の説話が絡まったためと考えられます。素戔嗚尊は牛頭天王と同一視されたうえで、備後国風土記に「武塔天神(むとうてんじん)」として登場し、下記のような内容の言い伝えが伝わっています。

『その昔、武塔の神(素戔嗚尊)が旅の途中に宿を頼もうと将来兄弟にお願いをしたところ、豊かな弟・巨旦(こたん)将来は断り、貧しい兄・蘇民(そみん)将来は宿を貸し御馳走でもてなしました。その恩がえしに蘇民に対し家族の腰に茅の輪を付けておくようと言いました。その後、茅の輪を持っていない巨旦将来の一族は、疫病で滅んでしまいました。そして「後の世に疫病があった時には、蘇民将来の子孫だと云い、茅の輪を腰に着けた者だけは疫病から逃れることができよう」とおっしゃいました。』

この言い伝えが元で、全国各地に茅の輪が広がり、世間一般にも親しまれるようになったと考えられます。

夏越の祓では何をする?

夏越の祓では神社にて神職による大祓詞の奏上(読み上げ)などが行われますが、私たち一般人が行うこととしては「茅の輪をくぐる」「人形(ひとがた)に穢れを寄せる」「水無月を食べる」などが代表的です。

①茅の輪をくぐる

この時期の風物詩でもある神社の茅の輪。前述したように、くぐることで半年の穢れを祓い、無病息災を願います。

なお、茅の輪くぐりには下記の通り作法がありますので、試してみてはいかがでしょうか。

1:茅の輪の前に立ち一礼を行い、左足からまたぎ、輪をくぐります。左回りに回って元の位置に戻ります。
2:再度茅の輪の前に立ち一礼します。右足からまたいで輪をくぐり、右回りに回って元の位置に戻ります。
3:茅の輪の前に立ち一礼し、左足からまたいで輪をくぐり、ご神前まで進みましょう。二拝二拍手一拝の作法でお参りしてください。

茅の輪をくぐっているときに神拝詞(となえことば)の「「祓い給へ(はらいたまへ) 清め給へ(きよめたまへ) 守り給へ(まもりたまへ) 幸え給へ(さきはえたまへ)」と唱えながらくぐりましょう。ただし、この神拝詞は地方や神社によって変わる場合もあるそうです。よって、参拝された神社の神拝詞を唱えてください。

②人形に穢れを寄せる

穢れを人形(ひとがた:紙を人のかたちに切り抜いたもの)に託し、祓い清めて川や海に流したり、お焚き上げをしたりします。映画「千と千尋の神隠し」をご覧になった方は人の形をした紙が登場するシーンを思い浮かべてみるとイメージしやすいかと思います。

神社によっては人形が置いてあります。体に寄せたり息を吹きかけて神社に残しておくことで穢れを祓うことができますので、見かけたら試してみてはいかがでしょうか。ただし、自分の穢れを移した人形を家に持って帰るのは、穢れを持ち帰ることになるためNGですのでお気をつけください。

③水無月を食べる

夏越の祓の時期、京都などの一部の地域では、上に小豆をのせた三角形のういろう「水無月」を食べる風習があります。

水無月

この独特の形に歴史的背景があり、旧暦の6月1日に宮中で行われていた「氷室の節会(ひむろのせちえ)」という氷を食して暑気払いをする行事で、当時高級品だった氷を入手できない庶民がそれを模して水無月を作ったと言われています。

ご近所の和菓子店などをチェックして三角形に小豆をのせた「水無月」を探してみてはいかがでしょうか。

夏越の祓を体験するには?

夏越の祓は全国の各神社で行われていますが、祇園信仰に基づいて素戔嗚尊を祀っている神社にお参りをしてみてはいかがでしょうか。素盞嗚神社、八坂神社、氷川神社、八雲神社、須賀神社などの名前の神社がそれにあたり、天王祭、祇園祭と名のつくお祭りが行われていることも多いです。

素戔嗚尊を御祭神とする神社の中でも、武蔵一宮・氷川神社(埼玉県さいたま市)は地元で育てている茅を使って茅の輪を作るなど、より昔ながらの形こだわっており、参拝者もそれを体験することができます。

また、神社の中にはこの時期限定で茅の輪を模ったお守りを授与しているところもあります。蘇民将来の言い伝えに出てくる茅の輪も腰につけるサイズのものでしたので、こちらのほうがより言い伝えの世界に近いと言えますね。

茅の輪をくぐり損ねてしまった方にオススメなのが、京都で行われる祇園祭です。この祭りでは茅の輪と同じ効果を持つといわれるお守りの「ちまき」を手にすることができますし、豪華絢爛な山鉾を楽しむことも可能です。


この記事では「夏越の祓」について解説しました。1年の半分を迎えるタイミングで、改めて健康を意識し、気持ちを新たにスタートさせるのにもちょうど良い時期です。今年は茅の輪の意味を改めて意識しながら、古来からの風習を体験してみてはいかがでしょうか。

トップ画像:写真AC

タグ一覧