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「二本松の提灯祭り」秋夜に浮かぶ幻想的な紅提灯|観光経済新聞

2021/3/6
2021/3/10
「二本松の提灯祭り」秋夜に浮かぶ幻想的な紅提灯|観光経済新聞

2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)

秋夜に浮かぶ幻想的な紅提灯

福島県中央北部に位置する二本松市。二本松藩の城下町として栄え、約5万5千人が暮らすこの街で、約370年続く伝統的な祭りが開催されている。日本三大提灯祭りの一つ「二本松神社例大祭 二本松の提灯祭り」。福島県重要無形民俗文化財にも登録されている。

 開催時期は、キンモクセイが香り始める10月の第1土・日・月曜。そのため地元民は、キンモクセイの匂いによって祭りの訪れを感じ取り、街全体がそわそわとし始める。

 祭りは、宵祭り、本祭り、後祭りの3日間にて開催され、7台の太鼓台と呼ばれる山車に約300個の鈴なり提灯を灯し市内を練り歩く。

 祭りのメインイベントである、宵祭りの七町合同引き廻しの出発式。御神火が、二本松神社より600メートルほど離れた太鼓台の待機場所まで、人の手で運ばれていく。

 点火場所に到着するやいなや、一斉に提灯に火が灯されていき、その場は異様な熱気であふれ返る。字の代表が神社からつないだ思いを御神火に託し、太鼓台が紅提灯の灯りをまとっていく。

 祭りのハイライトの一つが1日目の最後である。出発式から市内を練り歩いてきた7台の太鼓台が、二本松駅前に横一列に整列し宵祭りを締めくくる。飲み込まれそうなほどの秋の闇夜に、煌々と浮かぶ2千個以上の紅提灯には、日本人の陰影礼賛のような風情を想起させられる。

 総重量が2トン近くになる太鼓台には、ハンドルがなく車輪(わっぱ)と綱のみによってかじを切る。出発や停止などの基本動作から、交差点での90度方向転換など、ささいな一動作が大仕事である。そんな困難さの中でさえ、演出としての同心円1080度回転を行う字まである。

 祭り終了後もしばらく道路に残る車輪のわだちは、1年に1度の祭事の余韻とともに徐々に薄れゆく。そんなわだちの消えゆく様は、後ろ髪を引かれながら非日常から日常へ回帰していく人々の心情を表しているようだ。

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