みなさん、こんにちは。今回は、お祭りデビューしてから3〜5年目の皆さまに、さらにお祭りが楽しくなるかもしれない豆知識を5つご紹介します。地域により風習や文化が異なるため、必ずしも本稿の内容に当てはまるとは限りませんが、お祭りに参加するときはこちらの記事を思い出してください。
山車の上に止まっている鳥ってなに?
山車(曳き太鼓)の上に止まっている鳥、何かわかりますか。機会がありましたらよく観察してみてください。もしかすると「鳳凰」でなく「諫鼓鶏(かんこどり)」と呼ばれる「ニワトリ」かもしれませんよ。東京神社庁によれば、大坂夏の陣に勝利した二代将軍徳川秀忠が、日枝神社の大祭である山王祭を前に「太平の世を祝って諫鼓鶏の山車を末代に至るまで一番で渡せ」と命じたことにより、それまでの「御幣猿」に代わって「諫鼓鶏」の先駆けになったとされています。
「諫鼓鶏」は中国の神話・伝説に由来します。「諫鼓」とは君主に不満があるときに鳴らすために設けられた太鼓のこと。中国三皇五帝時代の尭帝(ぎょうてい)という聖天子が、自らに対する諫言を民衆から聞こうとして諫鼓を門前に設置します。しかし、尭帝に対する不満はなく、誰も諫鼓を鳴らすことはありません。そして、何時の日か諫鼓はニワトリの遊び場となりました。この故事より、「諫鼓鶏」とは、善政であるため諫鼓を鳴らす必要がなく、止まっているニワトリも逃げることがない「天下泰平」の世を意味しています。
参照:東京神社庁「諫鼓鶏」
お神輿に乗っちゃダメ!
神様をお神輿にお乗せして氏子の手により氏子町内を巡幸することを神輿渡御といいます。
担ぎ棒に乗ることが粋だとする地域もあるようですが、多くの地域では人が神輿に乗ることを禁止しています。安全性の面もありますが、「お神輿は神様が鎮座されているため人が乗るものでない」との思いが一番の理由でしょう。お神輿の上に強引に乗ろうとしたり、SNS映えがするかと渡御に支障がでるような危険な撮影をするような行為は無くても、高い位置から見物しているだけで「神様を見下ろすのは不敬だ」と快く思わない方もいらっしゃるかもしれません。神様に失礼が無く、地域の皆さまにとって気持ちのいいお祭りとなるように心がけたいですね。
ちなみに、渡御の規模にもよりますが、金棒や御幣(おんべ)を持った氏子がお神輿に先行してお伴することがあります。彼らは、金棒で道に潜む邪気を払い、御幣で道を清める、言わば神様の露払いを担っています。
お神輿の鏡は神様に留まってもらう大切な飾り物
お神輿には、鈴や板瓔珞(ようらく)など様々な飾り物があります。とりわけ鏡は重要な飾り物の一つであると、筆者は考えています(神輿の部分名称はこちら(宮本卯之助商店さん)をご参照ください)。
地域により習わしが異なるかもしれませんが、神輿渡御の前、神主さんをお仮宮に招き「みたま入れの儀(お神輿に神社の神様をお遷しする神事)」が執り行われます。「みたま入れの儀」が終わるとお神輿の扉を閉じて、扉の前に鏡を掛けます。その後は「みたま返しの儀(お神輿から神様をお返しする神事)」までのあいだ鏡を外すことはありません。筆者は祭禮の先輩方から「鏡は神様がお神輿に留まっていただく大切な飾り物」と教わりました。長い時間、町内を練り歩いていると、どうしても鏡を留める紐が緩んだり、お神輿の扉が開きかけたりすることもあるかもしれません。もし、そのようなことに気が付つきましたら、触らないでお祭りの役員さんに連絡してくださいね。
※ 「御霊入れ儀」「御霊返し儀」とする表記も見られますが、お祭りの専門家より『「御霊」は「ゴリョウ」と読み、祟り神の意味になる』とのご指摘を受けたため、本稿では「みまた入れの儀」「みたま返しの儀」とします。
お神輿の十二支、「子」は前後どっち?
今度、お神輿を担ぐことがありましたら、彫り物にも注目してみましょう。十二支の動物たちが彫られていませんか。十二支の動物が彫られていたら、正面側の動物を見てみましょう。お神輿が作られた地域や時代により異なりますが、おそらく「巳」「午」「未」の三体の動物が彫られているかと思います。
なぜ、十二支は「子」から始まるのに正面に来ないのでしょうか。それは、多くの神社(社殿)が南向きに建立させているのと同様に、お神輿も南を正面として作られているためです。感の良い方はお気付きかもしれませんが、十二支の動物は時刻や方位にも使用されています。詰まる所、南を意味する「午」が正面で、北を意味する「子」が後ろとなっていることが多いようです。
もし、「午」以外の動物が正面にきている場合は、町内の重鎮の方に理由を伺ってみましょう。もしかしたら、その地域に伝わる興味深いお話が聞けるかもしれません。面白いお話が聞けたら筆者にも、こっそり教えてくださいね。
鯉口や股引、「白」「黒」「紺」の違いは?
特に指定がなければ、鯉口や股引などの色や柄は自由と考えていいでしょう。
一般的には黒や紺が無難とされているいますが、お好みの色や柄を選んでください。もし、迷うようでしたら、昔の職人さんを思い浮かべるとイメージがつきやすいかと思います。藍染めの服は虫よけになったため職人さんに好まれてたともいわれています。
無地だけではなく、江戸小紋や籠目などの和柄を配しらった鯉口もあります。こちらは、刺青のコスプレと捉えるとわかりやすいでしょう。なかには、無地の鯉口に自分でデザインした模様をプリントしているおしゃれな担ぎ手もいます。既成のデザインに飽きた方は、オリジナルの鯉口にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
最後となりますが、宮入りのときや、他町会の神輿を担ぐときは「無地の白」と決めている担ぎ手もいます。宮入りのときは汚れのない白、他町会の神輿は担ぐときは何色にでも染まれる白(貴方の町のルールにしたがいますとの意思表示)といわれています。とは言っても、こちらはお作法でなないので皆さまがカッコいいと思う鯉口や股引を着こなしてお祭りを楽しみましょう。
最後までご覧頂きありがとうございました。