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お人形様で悪疫退散!福島県田村市を始め、東北各地の人形道祖神の魅力に迫る

更新日:2021/3/23 いなむ
お人形様で悪疫退散!福島県田村市を始め、東北各地の人形道祖神の魅力に迫る

新型コロナウイルスが流行する中で、悪疫退散に注目が集まっている。福島県田村市には、病気などが村に入ってくるのを防ぐためにお人形様を立てることで魔除けをする風習がある。2021年3月に現地を訪れたり書籍を読んだりして分かったことを元に、お人形様がどうして作られるようになったかをご紹介する。また、東北各地にはお人形様だけでなく様々な人形道祖神があるようだ。生活に根ざした地域特有の風習として、様々な違いと共通点がありそれらについて述べる。

福島県田村市のお人形様とは

お人形様は地域の守り神であり、悪魔払いのため村境に作られる人形道祖神の一種だ。疫病などの災いが入ってこないように祀られた。昔は福島県の三春町からいわき市に通じる道を磐城街道と呼び、この街道沿いに立てられた三春町芹ヶ沢、船引町屋形、朴橋、堀越、滝根町広瀬(一説には船引町光大寺)のお人形様を磐城街道の「五人形様」と読んでいた。江戸時代には既に、これらの地域でお人形様を作る風習があったと言われる。現在あるのが4体で、屋形、堀越、朴橋(ほおのきばし)の各地域と、船引(ふねひき)駅構内に新たに作られたもので合計4体である。

船引駅構内のお人形様(福島県田村市)

福島県田村市のお人形様はどれも大きく、体長が4メートルにもなる大型の人形道祖神といえる。腰に大きな刀、手に薙刀を持ち、鬼のような形相をしている。毎年春を中心に、各地区でお衣替えと称して衣装替えと化粧直しの祭礼を行う。これらは古代の祭礼行事を彷彿とさせ、神様の心象を表現しているとも言える。実際に現地でお人形様を拝見してみて、手を大きく広げ、睨むような仕草にとても迫力を感じた。

そのほかにもある東北の人形道祖神

お人形様(ニンギョウサマ)以外にも人形道祖神は様々な形態があり、東北全域に分布している。その分類を以下にご紹介する。一つの人形に複数の呼称が存在する場合もあり、またニンギョウ道祖神の範囲から外れる川に流す人形にこれらの名前が用いられる場合もあるようだ。

ニンギョウサマ(オニンギョウサマ、ニンギョウ、オオニンギョウ、オヤニンギョウ等)

先ほどご紹介したお人形様はこの分類に入る。実は福島県だけではなく、青森県、秋田県、茨城県など様々な場所で見られるのが特徴。春や秋に人形作りをする場合が多い。人形行事が農作業の後片付けの時期にかぶる場合は、シマツニンギョウ(始末人形)と呼ぶ場合もある。また、福島県や茨城県などでは、巨大なものを特にオオニンギョウ(大人形)と呼ぶそうだ。

ショウキサマ(ソキサマ)

ショウキサマは漢字で書くと、中国の伝説上の人物と同じ「鍾馗様」となる。鍾馗は唐の時代の皇帝・玄宗の病を直した大鬼のことで、魔除けの神とされる。日本の地域によっては鬼の意識が強く「鍾鬼」や「正鬼」と表記する場合もある。また、秋田県や新潟県などでは女の鍾馗様が見られ、中国から日本に伝わって信仰形態も変化していることが窺える。

カシマサマ(カシバサマ、カシガサマ、カスガサマ)

カシマサマは、古代日本において大和朝廷が東国に勢力を拡大していたころの武神で、朝廷が東北各地に勧請した鹿島神社の分布と重なる。カスガサマは鹿島神と繋がりが強い春日神社の呼び方にちなんだものだ。私自身、2021年2月に秋田県湯沢市でカシマサマを3体拝見することができた。武神を連想する堂々とした出で立ちが印象的だった。

ニオウサマ(ニオウ、オニオウサマ)

ニオウサマは漢字で書くと「仁王様」という場合が多く、秋田県内に広く分布する。仁王様といえば、東大寺南大門を始め、仏教寺院を守護するというイメージを持つ方も多いだろう。オニオウサマは「お仁王様」の場合と、「鬼王様」の2パターンがある。

ドンジンサマ(ドジンサマ、ドウジンサ、ドンジサマ)

秋田県北部大館市内の山間部で見られる道祖神がドンジンサマ。「土神様」や「道祖神様」など、漢字とその意味の解釈は様々な説がある。木造の人形で、絵具で真っ赤に塗られているのが特徴的だ。

ジンジョサマ(ジゾウサマ)

秋田県北部田代町山田などに見られる呼び名で、「地蔵様」のことだと解釈されている。地蔵菩薩はインドのバラモン教由来で大地の命を包み込むように苦悩する人々を救済するという意味がある。日本全国に分布する石仏の地蔵様を思い浮かべる方は多いと思うが、こちらでは人形道祖神として藁で作られており、「道祖神祭」も執り行われる。

以上のように、様々な人形道祖神がある。これらの内容は、大島健彦著『道祖神の源流』(1991年)を参考に書かせていただいた。ちなみに、秋田県の人形道祖神巡りの際は、秋田人形道祖神プロジェクト(ANP)の書籍『村を守る不思議な神様』シリーズもおすすめである。詳しい内容がイラストともにわかりやすく書かれている。

2021年2月に訪れたカシマサマ(秋田県湯沢市)

人形道祖神は何を祈っているのか

福島県田村市のお人形様をはじめ、以上のような人形道祖神の共通点としては、どれも豊作と悪病退散が祈願内容として主流となっている。とりわけ悪い病気が村に入ってくるのを防ぐためという場合が多く、昔から人々の悩みの種として大きな割合を占めるのがそのような事柄だったと考えられる。ただし時代や場所によっては、泥棒避けや交通安全、武運に関する祈願として考えられる場合もある。

人形道祖神は何で作られているのか

人形道祖神には顔や手足があり、人間を模して作られていることは明らかだ。人形道祖神の素材と構造は様々。人形全体を藁や木製で作る場合もあれば、木材や石を土台として藁人形を作る場合がある。また、藁人形にお面をつけることもあるので、千差万別と言えるだろう。少なくともそこに農業生産などの暮らしの営みの延長として芸術作品のような形で人形道祖神が作られているとも考えられる。毎年、作り変えられることで、生活サイクルの中に人形道祖神づくりが組み込まれていると考えることもできるだろう。

お人形様の手(福島県田村市屋形)

人形道祖神と近い神々

その他にも、テンノウサマ、ドウロクジンサマ、テングサマ、オオスギサマ等の人形道祖神がある。また、塞神(さえのかみ)、塞神三柱神、久那斗神(くなどのかみ)、道祖神(どうそじん)、猿田彦神(さるたひこのかみ)、牛頭天王(ごずてんのう)、厄神(やくじん)、疫神(えきじん)など人形道祖神とかなり近い事例もあるので、調べてみると面白い。猿田彦神は日本の神話に出てくる道案内の神であり、牛頭天王は仏教発祥の地である祇園精舎の守護神として祀られたものが日本に入ってきて疫病を統率する神として祀られるようになったものだ。

人形道祖神で悪疫退散!

コロナ禍で悪疫退散に関心が集まっている中、その信仰の歴史的な背景を知るとともに、現地を訪れて迫力のある人形道祖神を巡るのも良いだろう。人形道祖神が立っている場所は常に人が出入りするような場所でないのがほとんどであり、混雑する心配もない。人が集まる場所に行くのにためらいがあるという方もぜひ、気軽に散策気分で悪疫退散の思いを込めながら人形道祖神を巡ってみると、地域の信仰についての新しい発見があるかもしれない。

参考文献等

船引町『船引町史 民俗編』1982年
大島健彦『道祖神の源流』川崎市民ミュージアム 1991年
萩原秀三郎『境と辻の神』東京美術 1988年
石倉敏明, 田附勝『野生めぐり 列島神話の源流に触れる12の旅』, 淡交社, 2015年
船引町お人形様保存会連絡協議会作成の観光パンフレット
各お人形様の前に設置された看板(福島県田村市教育委員会作成)
秋田人形道祖神プロジェクト『村を守る不思議な神様』シリーズ(2018年,2019年)
以上の資料等をもとに執筆致しました。

アイキャッチ画像:お人形様の手(福島県田村市屋形)

いなむ
この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
獅子舞マニアです。ライターやカメラマンをしています。趣味は、獅子舞の鼻を撮影することです。その他クレイジーな祭りにも潜入します。

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