コロナ禍で宴会等の自粛に伴い、今年はお花見を楽しむ機会も殆ど無いままGWに突入し終了してしまいましたが、一部の企業ではこのような状況下においても日本文化を大切にし、桜を愛でる文化の維持・発展に尽力されておりました。そのような代表的な企業とその取組みを知ることで、日本の桜の発展の外郭が分かって来ると共に、有事においても出来る限り継続的活動を行っていく上場企業の発想を学ぶことで、皆さんの今後の活動のヒントになればと思います。
伊藤忠商事、新入社員と桜の歓迎
コロナ禍で一堂に会しての入社式は中止されましたが、東京・北青山の本社で120人の新入社員を励まそうと岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)が発案したサプライズ企画がありました。本社の1階エントランスにレッドカーペットが敷かれ、東北等各地から集められた約300本の満開の桜のもと、会長自ら、石井敬太社長COO(最高執行責任者)と共に、出社した新人を拍手で出迎えたことが、いくつかのニュースで取り上げられていました。
朝日新聞DIGITALの記事によれば、オンラインも活用して実施されたサプライズ。海外12拠点の社員ら約90人と本社をつなぎ、新人を歓迎する駐在員らを映し出し世界中で社員が活躍していることを伝えたそうです。岡藤会長は「費用は昨年の何倍もかかっているが、みんな(新人)のことを考えたら安いもんだ。一生に一度のことなので、記憶に残るものにしてあげたい、という親心です。親の気持ちを忘れず、脇目もふらず、与えられた仕事を一生懸命マスターしてほしい」と話されたそうです。
この企画は新しい年度を迎えた4月1日に行われました。ライターはこの記事を目にした次の日、2日に伊藤忠商事の本社に行って来ましたが、話題の桜はとても綺麗に咲いておりました。新入社員の方向けの演出は現地の桜の美しさ以上のとても雅なものとなっており、こちらは動画を見て頂ければどのような様子かお分かりになるかと思います。
コマツと日本花の会の活動
1962年4月、当時経営再建を任されたコマツ(株式会社小松製作所)の社長 河合良成さんの提唱により「花によって、少しでも人々の心を和らげたい」という願いを込めて「日本花の会」が創立されました。全国の会員や各地の住民団体の方がすすめる花や緑を活かしたまちづくりをサポートすることが、日本花の会の活動の中心になっています。またコマツは現在では社会貢献活動の一環として、その活動を支援し桜の名所づくりや花のまちづくりを進め、美しく潤いのある地域環境づくりを推進しています。
日本花の会の支援 https://komatsu.disclosure.site/ja/themes/112
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昭和天皇の在位60周年を記念して、1986年に皇居やお濠沿い等に沢山の桜が植えられたそうですが、先日記事にした皇居外苑の桜も日本花の会から皇居の馬場先門や乾門の周辺に寄贈されたものになります。現在では茨城県結城市に桜見本園・結城農場があり、国内外から約350種の桜の品種を収集し、野生種の系統ごとに品種を植栽するとともに、品種の特性調査や優良品種の選抜、保護育成に関する研究に取り組んでいます。多彩な品種を活用したモデルガーデンを設け、個性的な名所づくりを提案しているそうです。
また赤坂見附駅近くのコマツビル屋上には、コマツビルが建てられた1966年当初につくられた、日本の屋上庭園の先駆けが存在します。初めは“桜庭園”のみだったそうですが、コマツ創立80周年を記念して2001年に“デッキガーデン”を増設、さらにその2年後の2003年に“スクエアガーデン”をつくったことにより、都心のビル群の中にあって心地よい花と緑を楽しむことが出来ます。現在は新型コロナ禍で一般公開しておりませんが、再開したら是非足を運んでみて下さい。
■コマツビル屋上庭園の桜 | 歩いて知った麻布ガイド
http://www.azabu-guide.tokyo/komatsu/
住友不動産、さくら玉と泉ガーデンの桜
1949年(昭和24年)の財閥解体により株式会社住友本社の不動産部門を継承する会社として泉不動産株式会社が設立され、その後1957年(昭和32年)に住友不動産株式会社に商号変更して以来、日本の不動産業界をリードして来ました。名称等に活用されている「泉」は住友の江戸時代の屋号「泉屋」にちなんだものだそうで、令和になっても江戸時代のブランドが継承されています。そのような「IZUMI GARDEN」では、東西の街区を“桜並木”が、館内を“さくら玉”等の桜アートが彩っていました。
テレビ東京の入っている六本木グランドタワー内にある“和紙×光”の巨大「さくら玉」です。ライターは4月16日の最終日に見に行ってきましたが、とても大きく幻想的な雰囲気で、見る人を楽しませておりました。沢山の撮影機材を持って、さくら玉を撮影されている方もいました。
このように青い光で照らされる場面もあり、ずっと見ていても配色が変わるので飽きません。伝統の和紙とミラーボールを使用したアートが融合した「春の芽吹き、生命力の強さを表現した巨大な桜の球体」は、視点の高さ・角度で見え方が異なり、行き交う方々それぞれの感性で楽しむことの出来る作品となっていました。こちらの作品は、アーティスト集団「MIRRORBOWLER」がデザイン監修を行ったとのことで、オフィスビル内に桜×デジタルを感じさせる先進的な取り組みでした。
こちらは泉ガーデンタワーのエントランス付近の桜になります。『桜舞―ひらり―』というタイトルが付けられており、ATELIER TAMAMOの作品となります。作品の解説では、「日本の四季の中で、色鮮やかな春。出会いや希望、新しい出発、自然の芽吹きを感じながら煌めく春の訪れは人々の心を躍らせるような気持にさせます。そのような日本の叙情詩表現したフラワーオブジェ」とあり、作品への思いが読み取れます。このオブジェは技術的な工夫もあり、抗菌・抗ウイルスの光触媒加工をしているそうで、花の周りの空気を綺麗にしてくれるとのことです。いい作品は細部にもこだわっていることが正に体現されています。
企業とサクラ 感想
コマツ、伊藤忠、住友不動産と各企業の桜の取組みを見て参りましたが、いかがだったでしょうか。どの企業も世界的に活躍する名門ばかりでしたが、日本の桜文化の継承と発展に尽力されていることが分かります。このような着実な取り組みが、日本の代表企業としての底力を生み出し、世界的な評価にも繋がっていくんだなと思いました。
日本の企業が海外で活躍するには、外交官の活躍も欠かせません。日本と国際社会の繁栄に向け、多国間や二国間でのルールづくりに参画するとともに、各国との重層的な経済関係の構築に取り組む経済外交。このような企業が活躍するための下地を支えている外交官にちなんだ桜の話がありました。
■外交官と桜 一般社団法人霞関会
https://www.kasumigasekikai.or.jp/13-04-05-1/
ワシントンDCのポトマックの桜の話でしたが、1度は虫がつくと断られてしまいますが、改善を加え2度目のチャレンジで成功と言う話ですが、この2度目のチャレンジは起こらなかった可能性もあり、このチャレンジが無ければ現在の日米友好の「全米桜祭り」は無かったでしょう。歴史的なロマンを感じます。最後の方では「外務省の桜並木が、東京の春の名所のひとつになって久しい。これは東独、ポルトガルなどの大使を務めた谷盛規氏が、昭和30年代末に官房の会計課長だった時、植えたものと聞いた」(記事抜粋)と言う話もあり、桜が外交官など様々な人に愛されていることが分かります。
また海外と桜と言ったら最近では2019年のラグビーワールドカップで「桜の戦士達」が大活躍しました。なぜ、桜なのか。そこには初代日本代表監督を務めた香山蕃さんが「正々堂々と戦い、敗れる際には美しく敗れよ」という思いを込めたとされることからはじまったそうです。日本のお花見シーズンは全国的に終わりかけておりますが、ラグビーだけでない様々な桜の戦士達が、日本の桜を通して、これからも活躍して行くことをお祈りいたします。桜を育てるように新入社員を大切に育て上げ、活躍させて行きたいものです。
<おまけ -泉ガーデンタワーのお得情報>