ゆかた製造卸「三勝(さんかつ)」(東京都中央区)が運営する「三勝ゆかた博物館」が、2022年の新作ゆかたを発表した。同社が所蔵するアーカイブ柄の中から「蜻蛉(とんぼ)」柄と「薊(あざみ)」柄 のデザインも復刻する。
今回は、300 種類のゆかた反物を用意する。2022年の新作の目玉は、同社が展開する「江戸元禄」シリーズの一つになる「荷宝蔵(にたからぐら)壁のむだ書き」ゆかた。江戸時代末期の浮世絵師・歌川国芳(うたがわくによし)のむだ書き(落書き)をモチーフとしたデザインとなっている。
「荷宝蔵壁のむだ書き」について、代表取締役の天野美香子さんは、「ゆかたのデザインは、時代を映す鏡だと言われるため、コロナ禍という時代を反映するようなデザインを考えていた」と話す。その上で、「歌川国芳が、本社のある日本橋人形町に住んでいたというご縁があったことやシンプルなデザインがコロナ禍にあうと考え、『荷宝蔵壁のむだ書き』をゆかたにしようと考えた」と話す。
「三勝」でのゆかたの制作は例年ならば、前年のゴールデンウィークの時期より、デザインの構想を行い、夏頃からは生地のオーダー、サンプルを作った上で1月の発表会に間に合うように制作を行う。今回の新作ゆかたは、「コロナ禍でゆかたを作って良いのかという迷いがあった」などの理由で例年より遅い昨年の8月頃より始まった。
「荷宝蔵壁のむだ書き」は、ネコの図柄が取り入れられていることも特徴の一つ。歌川国芳がネコ好きで、浮世絵の中でも多くのネコが描かれていたことやネコの図柄があるゆかたが人気があることからできる限りネコのデザインが目に映りやすい場所に配置するようにした。
新作のゆかたに加え、同社が所蔵するアーカイブ柄の中から「蜻蛉」柄と「薊」柄 のデザインも復刻する。天野さんは、「この二つの柄は、以前からずっと気になっている柄であり、お客さんからのリクエストもあった」と振り返る。「『蜻蛉』柄も『薊』柄もゆかただからこそ良さが出るデザインだと考え、復刻した」と話す。
同社は、昨年3月にゆかたの文化を発信する拠点として「三勝ゆかた博物館」をリニューアルオープンした。1 万枚超の伊勢型紙を所蔵展示するほか、人間国宝の故・清水幸太郎の作品、300 点超のゆかたなどを展示している。天野さんは、「博物館を通して、ゆかたの新しい文化を発信していきたい。ぜひゆかた博物館にお越しいただき、ゆかたについて知ってもらえれば」と呼びかける。
開館時間は11:00~16:00(土日祝休み)。事前予約制。ゆかたの注文に関する問い合わせは三勝まで。