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高知「いの大国さま」の古式ゆかしい秋大祭。今昔の想いを繋ぐ「おなばれ」をレポート!

2023/12/8
2023/12/8
高知「いの大国さま」の古式ゆかしい秋大祭。今昔の想いを繋ぐ「おなばれ」をレポート!

こんにちは!オマツリジャパンライターの柴原おかめです。
突然ですが…高知県っていいですよね~~~~!(おかめは愛媛県人です)

南には、荒々しいロマンあふれる太平洋!北には、険しくも豊かなる四国山地にかこまれて…ご飯はおいしい!お酒もうまい!おまけに、歴史も偉人もかっこいいときたもんぜよ!高校生の頃は、幕末が大好きだったので、ほぼ毎週、家族と高知の史跡めぐりをしていました。

さて、そんな魅力あふれる高知県が「民俗学の宝庫」と言われるほど、伝統的なお祭りや独自の文化がのこっていることを、みなさんご存じでしょうか?今回は、高知県いの町で古くから「おなばれ」と呼んで親しまれているお祭りに参加してきたので、その様子などをご紹介していきたいと思います!

いの町ってどんなところ?

いの町は、土佐和紙(とさわし)の発祥地であり、仁淀(によど)ブルーでお馴染み、四国で最も透明度が高いといわれている仁淀川が流れている町です。私の住む愛媛県にも隣接しており、高知の玄関口としても知られています。

そんな、いの町の人々が古くから大切にして親しんできたのが、いのの大国様こと椙本神社(すぎもとじんじゃ)でした。

いの大国さまと椙本神社

椙本神社の御祭神は「大国さま」と呼ばれているとおり、因幡の白ウサギでおなじみ大国主命(おおくにぬしのみこと)。そして、その父君でヤマタノオロチを倒した素戔嗚尊(すさのおのみこと)と、母君の奇稲田姫命(くしなだひめ)です。

この神様の顔ぶれでもわかるように、かなり有名な神様たちが祀られています。まさに最強です。福徳開運や縁結びをはじめ、家内安全、商売繁盛などなどたくさんの御神徳があるそうです。

そんな最強の神社でおこなわれている秋大祭が、古式豊かなお祭り「おなばれ」です。

秋大祭と「おなばれ」とは?

秋大祭は、お葉毛立(おはけたて)という神様降臨をあおぐ行事から始まり、11月22日に古式の宵祭りが開かれます。

大祭の当日11月23日には、ご神霊をのせたお神輿が神社を出て、お供をする獅子舞や稚児たちと行列をなして町を練り歩く御神幸(ごしんこう)が行われます。そして行列は仁淀川の御旅所(おたびしょ)まで行き、神事や舞を奉納し、五穀豊穣や福徳開運を祈願するというお祭りです。

このような御神幸のことを、高知では「おなばれ」と呼んで親しんでいるとお聞きしました。

「おなばれ」の語源については、しめ縄をはるナワハリという言葉からきた説や、古語「ナバル(隠れる)」という言葉からきた説など、様々な解釈があるそうです。
原型となる神送り、神迎えの儀式が行われていた時代を経て、760年前の鎌倉時代には「おなばれ」が行われていたと伝えられています。このことからも分かるように古来、いのの人々に受け継がれてきたとても大切なお祭りです。

おなばれは豪華絢爛!阿鼻叫喚!?

私たちが到着したのは、午前11時30分頃でした。すでに多くの人たちが集まり、出店もたくさん!大変にぎやかな雰囲気です。

「おなばれ」に並ぶお稚児や乙女の方々、煌びやかで凛々しくとても可愛らしい!見とれていたら、本殿で最初の祭事が始まりました。

祭事が終ると、いよいよ「おなばれ」が出発です!
「わっしょい!!わっしょい!!」
子どもたちの元気な声が秋晴れの空に響き渡ります。どうやら先頭は、子ども神輿のようです。

続いて猿田彦(てんぐ)、獅子馬が練り歩く…

てんぐ様から逃げる子どもたち

耳を澄ませば、あちらこちらで悲鳴が…まず獅子が頭をガブリッ!子どもたちは阿鼻叫喚(あびきょうかん)です。

続いて、てんぐ様に祓っていただき、びぎゃーーーーっ!!っと、大暴れのご様子。

でも、獅子のかみつくは「神がつく」ともいわれます。無病息災!がんばれ!なんとも微笑ましい光景でした。

太鼓や台榊、神具のあとをお稚児や乙女が歩きます。

列の最後は、神様をのせたお神輿です。お神輿は、鎌倉時代に奉献された記録がのこっていて、お神輿の上の鳳凰(ほうおう)は、国の重要文化財にも指定されているそうです。

「おなばれ」では、このお神輿を模して制作したものが使用されています。

レプリカとはいえ、大きさや形にいたるまで全く同じように制作されているそうで、とても美しいお神輿でした。

道中たくさんの出店に心を奪われながら進んでいると、お神輿を担いでいた人が叫びます。
「どうぞ~~!!!」
その声と同時に、お神輿の下をささっとくぐる人たちが!!

観光客の方も地元の方も定期的に止まるお神輿の下をくぐられています。

これは一体?と思い、お聞きしてみると「お神輿の下をくぐると無病息災、御利益が得られるのです!よかったらどうぞ!」と、教えていただきました。

これはトライするしかない!おそるおそる、お神輿の下をくぐるとなんだか生まれ変わったような気持ちになりました。こりゃ、みんな御利益をいただけるわけだ。ありがたや、ありがたや。

仁淀川にある御旅所に到着!舞の奉納が始まる

ススキの美しい仁淀川に到着しました!フォトジェニックな景色に思わずうっとりです。

まずは、宮司さんたちによる厳かな神事が行われます。

次に、神様をおもてなしする舞の奉納が始まりました。最初は小さな男の子たちによる朝日舞です。

続いて、小さな女の子たちによる乙女舞です(椙本神社の杉を手に舞をされているそうです)。

そして、お姉さんたちによる浦安の舞です。こちらは扇と鈴バージョンがありました。

扇の舞の最後に、お顔を隠して行くのが奥ゆかしくて、すごく素敵でした!

なんかキュートな和製ビートルズみたい。このままジャケットにしたいぜ…。

どの舞も本当に美しく感動的です。緊張しながらもやり遂げた子どもたちの姿は、見ている私たちまで成長させてくれるような、ありがたい気持ちになりました。

そして、最後は、大国さま獅子舞復元保存会による獅子舞の奉納です。

まずは、太鼓とお囃子にあわせて獅子がやってきます。

続いて、お祭りを楽しんで帰る途中の男が大国さまの古式福俵(こしきふくだわら)を片手にやってきました。

ん?どうやらこの男…お酒を飲んでいるのか?千鳥足です。
おーーーっと!!!
獅子に驚き、持っていた福俵を落っことしてしまいました!しかも獅子の目の前です。

獅子が怖い男は、お尻をだしてブルブル。そこで子どもたちがはやしたてます。
「お尻噛まれるぞ~~!」「おしりやん!おしりやん!」
うんうん…わかるよ、おしりはおもしろいよね。

怖いけど、なんとか福俵を取り戻したい男、そ~~~っと近づいて足で取ろうとします。

うわぉ!危ない!足を噛まれるんじゃないかとヒヤヒヤです。

何度か男がその仕草を繰りかえすと、子どもたちはたまらず叫びだします。
「足、足!やめろーー!!」
「うわーーーーっ!!」「セーーフ!!」
「危ないって!!!」「セーーフ!」

もうやけになった男がお酒をのみだすと、子どもたちは一斉に
「ええ~~なんで飲んでるのーーー!!」「だめだこりゃ~~」
絶妙な緊張と緩和に会場はハラハラ、子どもたちのツッコミにつられてどっと笑いがおこりました。

そんな子どもたちの声援を聞きながら、ぼんやりと脳裏をよぎったのは「志村~うしろ!うしろ!」でした。

そうか…!この楽しさとデジャブは…ドリフ!?さっきまで獅子に怯えていた子どもたちは、ゲラゲラと笑い、大人たちもつられて大笑いしています。

なんだか会場全体がこの獅子舞によって一体化したような、そんな不思議でとても気持ちのいい空間になっていました。

その後、なんやかんやあって獅子と男は意気投合!

すると獅子舞を見ていた小学生くらいの女の子たちから
「ねぇ、獅子ってなんかかわいくない?」
「わかるー!!私好きかも」
と声が上がりだしました。令和女子の乙女心までつかんでしまうなんて…すごいぞ獅子舞!!

でも、わかる。私もそう思っちゃった。なんか最後は、大型犬みたいでかわいかったもんね…。そう、気がつけば、みんなすっかり獅子舞の虜になっていました。

驚くことなかれ…実は、この獅子舞のストーリーは、保存会の方々の手作りだとお聞きしました。

というのも、このお祭りの獅子舞は長い間、途絶えてしまっていたそうです。昭和40年頃に保存会をたちあげ復活されたそうで、その時には、どんな舞をしていたのかという記録もありませんでした。
なので、保存会の方々が獅子舞について見聞し、研究して作り上げたストーリーなのだと教えていただきました。

一度失くしたものを復活させることは、始める事と同じくらい難しいと思います。それを現在まで継続されている方々の努力や技術、そして心意気にモーレツに感動しました。

その後は、地元のおばあちゃんが、なぜかコッソリと耳打ちで教えてくれた榊(さかき)合戦なるものがありました。老若男女関係なく「よーい、どん!」で、榊を取り合うというワイルドな合戦です。この榊には、ご利益があるそうで、持ち帰って大切にお家に飾るのだと教えていただきました。

大きな榊をいただく人たち

最後は餅投げもあり、本当に楽しいイベント盛りだくさんの「おなばれ」でした。

秋大祭と春大祭について宮司さんにお聞きしました!

椙本神社に「おなばれ」が御還幸(ごかんこう)すると、宮司の杉本泰郷(すぎもとやすくに)さんから少しお話を伺うことができました。

椙本神社の宮司、杉本泰郷さん

――秋大祭「おなばれ」お疲れ様です。本当に素晴らしく感動的でした!すごく楽しかったです!

杉本さん:楽しんでいただけてよかったです。舞については、みんなで夏休みから集まり、11月のお祭りにむけて子どもたちも一生懸命練習してきました。この後も獅子舞は、夜の8時頃まで奉納を行っています。

――夜も続くのですね!子どもたちがこんなに活躍するお祭りは、私の地元ではあまりなかったので、とても新鮮でした。
また、春にも大祭があるとお聞きしたのですが、どのようなお祭りなのでしょうか?

杉本さん:春は2月3日に行われ、大国祭といいます。大国舞や獅子舞が奉納されますが「おなばれ」はありません。基本的には、みなさんにご参拝していただくので、秋大祭とはまた違った雰囲気のお祭りになっています。
こちらも古式に則り、福徳開運・五穀豊穣の願いが込められた笹の葉を稲に見立てて、俵と短冊を結んだ手作りの古式福俵で春の訪れを喜び、みんなでお祝いします。

――なるほど、そちらも古式に則った素敵なお祭りなのですね!大国祭の方もますます楽しみになりました!
お忙しい中、今日は本当にありがとうございました。

時をこえて受け継がれてきた「お祭りを楽しむ心」

お祭りを守り続けていくということは、とても大変なことだと思います。事実、私の住んでいる地域でも歴史あるお祭りがゆっくりと淘汰されていっているからです。

しかし椙本神社では、子どもたちも大人に負けないくらい一生懸命、このお祭りに携わり、盛り上げていました。昔ながらの伝統や祭事を大切にしながら継承していく方々の姿には、胸を打たれる思いです。

神様と一緒に笑いながら、お祭りを楽しむことは、その長い歴史を肌で、心で実感しているような気持ちになります。そして、この実感こそが、あの時の会場の一体感に繋がったのではないだろうかと感じました。
もしかするとこれは、お祭りを存続していくための秘訣のひとつなのかもしれません…。

実は、椙本神社は「実感」という感覚を大切にした民俗学者、折口信夫(おりぐちしのぶ)氏とも縁深い神社だそうです。実感とは、学ぶこととはまた違う大切なナニカを私たちに教えてくれます。理屈では言い表せない、今の日本人にとって、とても貴重な感覚ではないだろうかと感じました。

時代や、その時の状況により様々な変化を遂げてきたお祭り、「おなばれ」もきっとそうだろうと思います。でも、お祭りを守り受け継いできた人たちの気持ちは変わらない!椙本神社の秋大祭は、自分の中の大切な感覚まで思い出させてくれました。

豊かな自然に囲まれて、魅力たっぷりのお祭りを守り続ける心をもつ人々に出会える町、いの町!ぜひ、この感動を実感しに行ってほしいなと思いました。

最後は、初獅子舞に無事、大泣きしたわが息子。

<参考文献>
・高知県立文学館『高知県文学館ニュース 第20号』(平成15年4月1日)
・杉本瑞井『いの大国さま 椙本神社誌』椙本神社社務所(昭和57年9月19日)
・上野誠『折口信夫 「まれびと」の発見』幻冬舎(令和4年4月27日)

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