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地域コミュニティと新居浜太鼓祭り。コロナ禍で子供太鼓台を出す意義とは?

新居浜BuzzSpot!
2022/4/30
2024/3/5
地域コミュニティと新居浜太鼓祭り。コロナ禍で子供太鼓台を出す意義とは?

久しぶりに太鼓台を見た!

毎年10月に行われる新居浜太鼓祭りが新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年より2年連続で中止となり、大人の太鼓台と同様に運行を自粛している各地区の子供太鼓台。「いつになればお祭りを楽しめる世の中が戻ってくるの?」という重い世間の空気の中、先日田の上(たのうえ)子供太鼓台の展示が町内で行われました。

実は昨年も時期を見計らって子供太鼓台を出していた田の上地区。今回展示の様子とコロナ禍の中で子供太鼓台を出し続ける想いを取材してきました!

田の上子供太鼓台展示

2022年3月27日朝、田上(たがみ)神社の太鼓倉のシャッターが開き、田の上子供太鼓台が姿を現しました。

太鼓倉から出てきた田の上子供太鼓台

田の上子供太鼓台は大人の太鼓台と同じ図柄を採用しています。

大きく口を開けた布団締めの昇り龍、日光東照宮を模した上幕と太鼓台をグルリひと巻きする高欄幕の龍、そして左右に配置された名古屋城。日本の繁栄と隆盛の象徴を存分に取り入れた飾り幕の迫力と精細さは大人の太鼓台と見紛わんばかりの素晴らしさです。

大人の太鼓台に負けない迫力

新居浜太鼓祭りが好きな方はご存知かと思いますが、本祭では田の上太鼓台(大人)の演技も見事で、近年のかきくらべでは上位常連となっています。

市内屈指の重厚感を誇る田の上太鼓台。筆者も舁いた経験がありますが、差し上がった田の上太鼓台が肩に降りてくるときの「ドスン!」という感覚は他の太鼓台ではなかなか味わえません。見るからに重そうな太鼓台が人の力で担ぎ上げられる姿は大迫力です!

なんて新居浜太鼓祭りへの想いを巡らせているとさっそく子供たちが集まってきました。

子供太鼓台は子供たちにとってまさに動く城です

まずはみんなで記念撮影。

はい!チーズ!

このように当たり前だった「地元の子供たちが一堂に会する場」がこの2年新居浜に無かったと考えると本当に寂しいですね。

ふと自分の子供時代を振り返ってみると、学校では関わりの少ない異性や学年の違う友達と仲良くなり、歳を重ねた今でも顔を合わせると「あーじゃがね!こーじゃげや!」と話すことができるのは、子供太鼓台のおかげなのかもしれません。お祭りを中心に紡がれていく地元愛とコミュニティが子供太鼓台の魅力なのかなと、嬉しそうに駆け回る子供たちの姿を見て改めて感じさせられました。

さて、田の上子供太鼓台が展示場所に向けて移動を始めます。

移動開始! 房の中はこんな風になってます


この日は町内の主要数箇所で子供太鼓台展示が行われました。

本来であれば大人の太鼓台よりひと回り小ぶりなサイズを活かして町内をくまなく練り歩く子供太鼓台ですが、今回は感染対策で移動は粛々と最小限に。それでも久しぶりに目にする太鼓台の姿に地域の皆さんは大変嬉しそうな様子でした。

神郷わくわく公園 田の上スポーツ少年団の子供たちと保護者の皆さん

田の上自治会館にて 棒端のロープはいつも取り合いです

地域によって違いはありますが子供太鼓台が運行するのは5月のGWと10月の本祭期間中の2回です。今回の子供太鼓台展示は6年生の卒業を祝っての特別なもの。

新型コロナウイルス感染拡大前であれば「特別な事情で太鼓台が出る」という話はアッという間に広まり、当日は太鼓台の周りに人だかりができるのですが、今はそうもいきません。

コロナ禍以前にあった、他の地区のお祭り好きに「あんたんとこ今度太鼓出すんだろ?」と聞かれて初めて地元の太鼓台が出ることを知るといった「お祭り好きたちのありふれた日常」が筆者は大好きだったのですが、そんな空気感をまた新居浜で感じられるようになるのはもう少し先になりそうです。

榎本広場にて この春は元気に房が割れる姿が見たいですね!

力いっぱい叩かれる太鼓、元気なかけ声と笛の音が町中に響き渡るお祭りの本来の姿が早く戻ってきてほしいですね。6年生の皆さんご卒業おめでとうございます!

卒業おめでとう!!

展示を終えて太鼓蔵に到着した田の上子供太鼓台と自治会長

太鼓台を出し続ける想いをインタビュー

新居浜市内の子供太鼓台のほとんどは、単位自治会内組織である子供会・愛護会(部)などによって運営されています。今回子供太鼓台展示を終え、5月の春祭りに向けて着々と準備を進める田の上子供育成部の皆さんにお話を伺うことができました!

子供たちに地元愛を

およそ15年前、現在の田の上子供太鼓台新調を執り仕切った岩崎さんは子供太鼓台について「地元愛を育む大切なもの」だと語ります。そもそもは神事に供する山車である太鼓台ですが、現在の新居浜の太鼓台・子供太鼓台にはその他に様々な存在意義があるとのこと。

古くより地元の人から愛される太鼓台ですが、維持にかかるお金や手間から「若者や移住者を遠ざけるものである」と考える人が多くいます。しかし岩崎さんは、太鼓台が逆に「地元で生まれ育った若者を繋ぎ止める唯一の手立て」になり得ると考えているそうです。

四国三大祭りのひとつと称される新居浜太鼓祭りも人口減少や若者のお祭り離れによって苦境に立たされており、近い将来さらに人が減っていくのは明らかである中、「自分達の愛する街や祭りを子供たちに託そう」と考えるのは大人たちのエゴなのかもしれません。

ただ、太鼓台・子供太鼓台が他の地域にない魅力を持つものなのは間違いない事実であり、与えられる経験もまた特別なものです。そういった環境を求める子供たちがいる限り、子供太鼓台を維持しようと考え田の上子供育成部の皆さんは尽力しています。

辞めるのはいつだってできる

新型コロナウイルス感染拡大の中、子供育成部長として難しい舵取りを務めた永易さんは子供太鼓台を出し続ける理由を「私たちは地域の皆様から田の上を元気にするための大事な道具をいただいているからだ」と言います。

「子供」太鼓台といっても新調や維持管理にはウン百万〜ウン千万円という莫大な費用がかかります。そんな地元愛の結晶である子供太鼓台を子供たちのため・田の上のために出すことに対し、最後まで検討の限りを尽くすべきだという考えのもと田の上子供育成部はコロナ禍の中活動してきました。

幸い地域の皆様から多くの理解を得られ子供太鼓台を出し続けていますが、一度でも出すことを諦めてしまったら次に始めるときにはさらに大きな力が必要になるのではと不安も感じているとのこと。小学校6年間という限られた期間を受け持つ組織の特性上継続には苦労もありますが、今後も地域の方の想いに子供育成部の活動という形で応えていきたいそうです。

いつも通りを目指して

新年度から新たに子供育成部長を務めることになった伊藤さんは「今年は過去2年とは違う雰囲気を感じている」とのこと。GWに開催予定の春祭りは全て例年通りとはいかないものの、子供たちに最低限の新居浜らしい思い出を作ってあげられそうだと心躍らせています。

また田の上子供育成部の活動が、様々な理由で太鼓台運行を断念せざるを得なかった他地区の子供会・愛護会の皆さんの今後の後押しになればと考えているそうで、コロナ禍の中での子供会・愛護会運営について情報交換などできればとおっしゃっていました。

最後に

今年は少しでも多くの太鼓台が見られますように!
太鼓台の周りに笑顔が溢れる新居浜のありふれた日常を目指し前を向く田の上子供育成部の皆さん、本当にありがとうございました!

※過去写真 田の上子供育成部の皆さんありがとうございました!

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