茨城県土浦市で開催される土浦全国花火競技大会。
大正時代から続く非常に歴史ある大会で、日本三大花火大会の一つにも数えられます。
全国的にも非常に有名な大会がゆえ、一度は観覧してみたいと考えている方が多くいらっしゃるかと思います。
本記事では土浦全国花火競技大会の見どころと楽しみ方について、なるべく分かりやすく解説いたします。
土浦全国花火競技大会とは
土浦全国花火競技大会は茨城県土浦市で開催される花火競技大会で、概要は以下の通りとなります。
- 開催時期:例年11月第1土曜日
- 場所:桜川畔(学園大橋付近)
- 最大号数:10号玉
- 打ち上げ数:約20,000発
- Webサイト:土浦全国花火競技大会実行委員会公式ホームページ
大正時代から続く歴史ある大会(詳細は後述)で、煙火業者の技術の向上や土浦市の発展を目的に開催されています。
主となる花火競技は3つの部門(スターマインの部、10号玉の部、創造花火の部)で構成され、各部門の優勝者の中から特に優れた煙火店さんに対し、花火界の最高名誉に当たる内閣総理大臣賞が授与されます。
日本三大花火大会ならびに日本三大競技花火大会の一つに称され、全国的にも知名度の高い花火大会となっています。
大正時代から続く歴史ある大会
本大会の始まりは1925年(大正14年)にまで遡ります。
神龍寺の住職であった秋元梅峯師が、 霞ヶ浦海軍航空隊殉職者の慰霊、関東大震災後の不況にあえぐ商店街の復興などを目的に、 私財を充てて霞ヶ浦湖畔で花火大会を開催しました。
この大会が商店街に好況をもたらしたのをきっかけに、土浦をあげての行事として年々盛大に開催するようになりました。
その後、日本煙火工業会(現在の日本煙火協会)の会長を務めた北島義一氏の尽力もあり、現在では日本三大花火大会の一つになるまでに発展を遂げています。
「スターマイン日本一」を決める大会へ
第28回大会(1959年)に「速射連発の部(現在のスターマインの部)」が設けられました。
現在でこそ花火大会における花形プログラムとなっているスターマインですが、当時は仕掛け花火の裏打ちで扱われる脇役的な存在でした。
そんなスターマインをいち早く一つの競技部門として独立。
今日ではスターマイン日本一を決める大会と称され、花火師の誇りと名誉をかけた熾烈な競争が 繰り広げられ続けています。
人身事故への対策
第87回(2018年)および第88回大会(2019年)はスターマインの部において観客が負傷する人身事故が発生。
この影響により、花火競技は2年連続で不成立に…。
第91回大会(2022年)からは台風や大雨などの影響が少ない11月第一土曜日に変更、一本の筒へ複数の花火玉を装填する行為が禁止されるなど、事故の原因となった部分について対策が取られました。
ちなみに第92回大会(2023年)にも10号玉の部において地上で開発する事故が起こりましたが、人的被害はなく競技は成立しています。
コロナ禍における影響と取り組み
2020年初頭から流行した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)により、本大会も影響を受けることに。
第89回(2020年予定)および第90回大会(2021年予定)については通常開催は見送られ、代替イベントがシークレット形式で実施されました。
第91回大会(2022年)については桟敷席の1区画あたりの人数を削減、無料観覧席として開放されていた桜川畔の一部を有料観覧席に変更するなど密集対策を施した上で開催。
花火文化継続のため、可能な限りの取り組みがなされました。
花火大会と花火競技大会の違い
そもそも花火大会と花火競技大会って何が違うのでしょうか?
花火大会は一般の観覧客向けに行われるイベントで、夏祭りのフィナーレや慰霊・鎮魂など多種多様な目的で開催されます。
一方で花火競技大会は煙火店さんが審査員に向けて作品を披露する場で、あらかじめ定められたレギュレーションに従って作品を披露し、花火に知見のある審査員によって評価が行われます。(近年では観覧客参加型の花火競技大会もあります)
学校行事に例えるなら、花火大会は文化祭、花火競技大会は合唱コンクールといったところでしょうか。
見どころ① 花火競技
土浦全国花火大会の見どころはなんといっても花火競技です。
先述でも触れたように、本大会の花火競技は3つの部門で構成されます。
- スターマインの部
- 10号玉の部
- 創造花火の部
以下、それぞれの部門における見どころを解説していきます。
スターマインの部
スターマイン(速射連発)を通じて競う部門。
参加する煙火店さんは幅40mの区画から2.5号玉〜4号玉、最大400発の範囲内で作品を披露します。
花火の色彩や鮮明度、打ち上げのリズムと間が主な評価ポイントで、優勝者には経済産業大臣賞が授与されます。
本大会は先述のように”スターマイン日本一”を決める大会と称されていますが、それゆえか本部門を制した煙火店さんが内閣総理大臣賞を制する傾向にあります。(2023年現在、第79回大会を除く)
10号玉の部
10号玉1発を通じて競う部門。
例年、本部門で披露される作品は日本古来の芯入割物花火が大多数を占めますが、これに該当しない作品が披露されるケースもあります。
打ち上がった花火玉が開く場所(玉の座り)、開いたときの形(盆、肩)、消えるタイミング(消え口)が評価のポイントで、優勝者には中小企業庁長官賞が授与されます。
ちなみに、四重芯や五重芯といった難易度の高い多重芯の花火が綺麗に決まった際はより高評価となります。(第83回大会以降の優勝作品はすべて五重芯で占められています)
創造花火の部
5号玉7発を通じて競う部門。
「創造花火」の名にもあるように、各煙火店さんの創造力を活かしたユニークな花火が披露されます。
近年では同じ形の花火を7発打ち上げるだけでなく、複数の花火でを打ち上げて一つのイメージとして魅せる作品もあります。
独創的なアイデアや新しい技術に対して高い評価が与えられ、優勝者には茨城県知事賞が授与されます。
見どころ② 大会提供「土浦花火づくし」
花火競技の合間に余興の花火がいくつか披露されますが、特に注目なのが「土浦花火づくし」です。
本プログラムでは花火競技で使用する打ち上げ場所をフルに活かしたミュージックワイドスターマイン(最大幅500m)が繰り広げられます。
打ち上げは茨城県内に拠点を構える煙火店(丸玉屋小勝煙火店、山﨑煙火製造所、野村花火工業)さんがおおむね3大会毎に持ち回りで担当し、自社を含む県内の煙火店さんが製造した花火玉を交えた演出を行います。
まさに「オール茨城」の名にふさわしいワイドスターマインを堪能できます。
おすすめの観覧スポットは?
さて、土浦全国花火競技大会を現地で観覧するならどこがおすすめなのでしょうか?
やっぱり最強は桟敷席
やはり一番のおすすめは桟敷席でしょうか。
桟敷席は桜川河川敷に設けられる観覧席で、全マス(最大4名)と半マス(最大2名)があります。
すべての花火プログラムが綺麗に見えるだけでなく、大会開始前のセレモニーでは参加する花火師さんが一同に集うスペシャルな光景も!!
よっ!花火師登場っ! pic.twitter.com/bgS5HkgGks
— -♥✈たけちゃん🇯🇵✈︎ (@takechandesutfs) October 6, 2018
抽選方式なので絶対に入手できる保証はありませんが、一度はぜひ味わっておきたいスポットです。(詳しい当選倍率は非公表ですが、おそらく相当高いと思われます)
椅子席ならA席がおすすめ
第91回大会(2022年)より新設された観覧席で、桟敷席と同じく桜川畔に設けられます。
桟敷席に近い側から順にA、B、C席となっていて、桟敷席寄りのA席が個人的におすすめでしょうか。
桟敷席と同じく抽選方式となっているため、確実に入手できる保証がない点には注意が必要です。
会場外でも意外と楽しめる?
有料観覧席の抽選に漏れてしまったら現地で楽しめないのか…いえいえ、決してそんなことはございません!
実は有料観覧席以外でも花火を楽しめるスポットがいくつか存在します。
大会公式では交通規制図を通じて、有料観覧席以外から花火が見えるスポットが紹介されています。(双眼鏡マークが目印)
また、メイン会場の北側には地主の方々のご厚意で私設の有料観覧席(おおむね1,000円/人程度)がいくつか設けられます。
いずれも花火の迫力や音楽とのシンクロは楽しみにくいですが、チケットを入手できなかった方は一つ参考にしていただければと思います。
現地で観覧する際のポイント・注意点
さて、実際に土浦全国花火競技大会を現地で観覧するにあたって、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか。
ここからは僕自身の観覧経験なども踏まえながら、ざっくりと紹介いたします。
公式パンフレットは必携
本大会を楽しむにあたり、公式のパンフレットをぜひ手元に用意しておきましょう。
特に目を通していただきたいのが「花火の楽しみ方」と「プログラム」の2つ。
「花火の楽しみ方」には花火の種類や花火競技における評価のポイントなど、花火観覧に役立つ情報が記されています。
「プログラム」には打ち上げ順の他、作品に関するコメントが記載されています。
花火競技を存分に楽しむためにも、ぜひ入手しておきましょう。
なお、大判のパンフレットについては第91回大会(2022年)より電子版でのみ提供されています。
大会当日は通信回線の混雑などでサイトへのアクセスが困難になる可能性が高いため、事前にお手持ちのスマートフォンやタブレットへダウンロードしておくことをおすすめいたします。
防寒対策は必須
本大会を観覧するにあたり、防寒対策は必須です。
気象庁のデータベースによると、土浦市における11月上旬の平均最高気温は18.3℃、平均最低気温は8.8℃となっています。
日中は比較的暖かいからと油断すると、想像以上に冷え込みにしんどい思いをする可能性が十二分にあり得ます。
あらかじめコートやマフラーなどを準備した上で、観覧するようにしましょう。(足元が冷えると非常に辛いので、ブランケットや足用のカイロなども備えておくと良いでしょう)
混雑はある程度覚悟が必要
全国的にも知名度が高いかつ首都圏から近いがゆえ、混雑についてはある程度覚悟が必要です。
本大会の観覧客数はおよそ60万人(第92回大会)…ちょっと数字がぶっ飛びすぎてて意味不明ですが、渋谷駅(JR線のみ)や大阪駅の1日の利用者がすべて押し寄せるとイメージしていただくと、その凄まじさが分かりやすいかと思います。
特に開始直前や終了直後の土浦駅は大変な混雑となり、周辺の道路も渋滞によって移動が困難なレベルに…。
土浦駅花火大会混雑による入場規制中#土浦花火 pic.twitter.com/g2VIywEfjJ
— マツ丼 (@NambuMatoLocal) November 5, 2022
混雑する大会全般に共通する対策になりますが、時間に余裕のある方は早めに現地入りし、終了して少し待ってから帰ると良いでしょう。
ちなみに、大会当日は土浦駅東口から学園大橋を結ぶ高架道路(土浦ニューウェイ)を活用したバス輸送が行われます。
土浦の花火は混雑するけど輸送力は半端じゃないよ、常磐線と関鉄バスが本気を出すから。花火終了後の土浦駅カオスだけど。関係者の皆様ありがとうございました!#土浦全国花火競技大会 pic.twitter.com/R99RQYs0Am
— アイスくん (@113icecream) November 4, 2023
土浦駅方面からお越しの方は、大会当日ならではの狂気の輸送力にも注目してみてくださいw (大量の観客の移動を支える関東鉄道バスさんには感謝しかありません)
まとめ
本記事では土浦全国花火競技大会の見どころと楽しみ方について紹介してまいりました。
大正時代から続く非常に歴史ある大会で、全国各地の煙火店さんによる珠玉の花火作品を堪能できるのが見どころとなっています。
すべての花火作品を間近で堪能できる桟敷席や椅子席(特にA席)での観覧が個人的におすすめですが、抽選方式となっているがゆえに必ずしもチケットが入手できるわけではない点に注意が必要です。
本大会が開催される11月上旬の夜間は冷え込むため、現地でご覧になる際はコートやマフラーなどを準備した上で観覧するようにしましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございますm(__)m