お祭りの舞台は埼玉・東松山
今回のお祭りの舞台は、埼玉県東松山市。埼玉県のほぼ真ん中に位置し、都内から行く場合は池袋より東武東上線に乗ること50分強で到着できる街です。
東松山は古くから交通の要所として発展してきた街で、市内には鎌倉街道や日光裏街道など、複数の街道が通っています。また比企地域の中心地として、長く松山城や松山陣屋の城下町・陣屋町として繁栄してきました。そんな歴史ある街のお祭りはユニークなことが多いですが、市内の箭弓稲荷神社(やきゅう いなり じんじゃ)で行われる「火伏神事(ひぶせしんじ)」は、まさにそんなお祭りに当てはまります!
珍しい!?3月の初午に行われるお祭り
東松山駅西口から、徒歩3分程で着くことができる箭弓稲荷神社。境内への入り口では、大きな鳥居が出迎えてくれます!
今回紹介する「火伏神事」は、初午大祭に合わせ実施されるお祭り行事です。箭弓稲荷神社では、毎年3月に入って最初の初午の日の前日に行われています。2020年の今年は、3月3日に開催されました!
全国の稲荷神社で大切にされている初午のお祭りですが、実は基本的には2月の初午の日に行われることが多く、3月に行う箭弓稲荷神社は珍しい神社になります。なぜ一ヶ月のずれが生じているのかと言うと、そこには暦が関係しています。そもそも初午は2月最初の午の日を指しますが、多くの稲荷神社は新暦に合わせています。ですが、箭弓稲荷神社は旧暦に合わせて行っているので、約一ヶ月遅れて初午のお祭りを行っているのですね!東松山では初午以外にも、お正月やお盆をはじめ、様々なお祭りや行事が旧暦に合わせ行われているそうです。
境内を見渡すと、稲荷神社らしく狐がいました!口には達成のかぎを加えています!
※達成のかぎ、初午祭についての詳細はこちらの記事をご覧ください
伏見稲荷大社 初午大祭へ福参りに行こう!しるしの杉、達成のかぎと呼ばれるパワーアイテムが有名!?
砂でつくられた炉に火が入れられる
火伏神事がはじまる13時、境内に神職の皆さんが入ってきました!
後ろからは稲荷神社の使いとされる白狐もやってきます!
まずは境内に設置されている神棚に向かってお祓いを行います。
続いて火伏を執り行う砂でつくられた炉へもお祓いを。
いよいよ炉の中に組まれた木に、火が点けられます。
一気に炎が燃え上がりました!境内中に熱気が増していきます!
「エイ、エイ」と火を消す!
火が燃え上がり、いよいよ火伏が行われていきます。
まずは宮司さんによる火伏です。杉の葉に、奥の桶で水を付けてしぶきを飛ばし火を消していきます!
次は地元の消防署長による火伏。今度は砂をかけて火を消していきます!
関係者の火伏が終わると、続いて参拝客による火伏に移ります。炉を囲む正方形の結界の四隅では、白狐が見守ってくれています!
参拝客が火伏に使用するのは、火伏具と呼ばれるこの青菜!境内で100円で授与しているので、ぜひゲットして火伏に参加してみてください!
白狐に見守られながら、次々に火伏を行っていきます。
ついに私の順番がやってきました!炉の中は、すでに青菜で緑色になっています。
「エイ、エイ!」と青菜を投げ、私も火伏をさせていただきました。そしてこちらは、青菜をいただく際に一緒にもらうことができるお守り。火事除けに大切にしたいですね!
最後は白狐による火伏
いよいよ最後はこの方が登場!白狐による火伏が行われます!
一斉に火伏が行われ、境内には「エイ、エイ!」と言う声が響き渡ります!
火伏の後にはこんなファンサービスも!凛々しくカッコいいですね!
県指定文化財の社殿が豪華!
火伏神事を見終えた後は、ぜひ埼玉県指定文化財に登録されている、豪華な箭弓稲荷神社の社殿をご覧ください!この社殿は天保6年(1835年)に上棟式が行われ、日光東照宮と同じ権現造で10年の歳月をかけ建てられたそうです。天保6年は、新選組副長の土方歳三や三菱創始者の岩崎弥太郎が生まれた年でもあり、歴史を感じさせますね。
この社殿のすごいところは技巧を凝らされた装飾の数々です!
早速社殿の下部には見事な龍がいました!この龍には、火除けの祈りが込められているんだとか。
こちらは本殿裏にある大羽目彫刻「仙人の烏鷺(せんにん の うろ)」!烏鷺とは囲碁の別名で、仙人が囲碁に講じ、斧の柄が腐って折れるほど長い時間を過ごしてしまったと言う故事に因んだ彫り物だそうです。本当に見事な装飾ですね!ちなみに烏はカラス、鷺はサギを表し、その色から黒石と白石を連想して囲碁を表す言葉になっています。
お次は珍しい山椒魚(サンショウウオ)の彫刻がありました。山椒魚は水辺の生き物と言うことで、こちらも火を避けるための願いが込められているんだとか。ちなみに山椒魚は長寿の象徴、仙人の化身と言う説もあるそうですよ!
他にも数多くの見事な彫刻がありますので、ぜひ箭弓稲荷神社へ来た際にはチェックしてみてください!
”やきゅう”稲荷と野球
箭弓稲荷神社でもう一つユニークなものがあります。それは「やきゅう」です!
ベースボールの野球と同じ音の神社名を持つ箭弓稲荷神社。そのつながりから、野球をモチーフにしたおみくじや絵馬が販売されています。こちらはボールを模ったおみくじです!
続いてはバットとホームベースを模った絵馬!これは箭弓稲荷神社にしかないのではないでしょうか!?
この縁を担いで、地元埼玉のプロ野球チーム「西武ライオンズ」の選手も度々来ているそうですよ!
箭弓稲荷神社火伏神事、いかがでしたでしょうか?旧暦の初午、また火事が起きやすい3月に行われるお祭り。稲荷神の使い「白狐」のパワーも借りて、火を伏せて過ごせるようにしていきたいですね!