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山田の春祭り。屋台囃子が聞こえると高鳴る気持ち、いかに継承していくか。

2023/3/12
2024/2/29
山田の春祭り。屋台囃子が聞こえると高鳴る気持ち、いかに継承していくか。

秩父地域へ春を告げるお祭りとして知られる「山田の春祭り」。旧山田村(現在の埼玉県秩父市山田)の中心地にある恒持神社の例大祭として、毎年3月第二日曜日に開催されています。
新型コロナウイルスの影響で、実に4年ぶりとなる本来の姿に近い形での開催が目前に迫った、山田の春祭り。今年のお祭りを執り仕切る金田行事長に、山田の春祭りへの想いや今後のお祭りの在り方ついてお伺いしました。

―金田さんは生まれも育ちも山田とのことですが、地元の方にとっての山田の春祭りとはどのような存在ですか?

子どもの頃から慣れ親しんできた春祭りですが、地元の人間にとってはお祭りがあると言うことが心の拠り所になっていると思います。お祭りを中心に一年を生きている方もいますし、お囃子が聞こえてくるとやはり興奮するものですね。私が運営側でお祭りに関わるようになったのは学生だった20歳の時ですが、若行(山車に乗りフロントで活躍する)になり活動し、改めてお祭りっていいなと感じたものでした。

山田の春祭り

―山田の方にとって欠かせないお祭りなのですね。その歴史や文化的側面にはどのようなものがありますか?

山田の春祭りには笠鉾が1基と屋台が2基出まして、この3基を総称して山車と呼んでいますが、全てが秩父市の有形民俗文化財に指定されています。春祭りは恒持神社のお祭り(例大祭)として行われていまして、2基の屋台は江戸時代の1800年代に作られたものと伝わっているんです(笠鉾は明治時代に建造)。また山車を飾る絹織物も特徴的で、こちらは秩父銘仙と呼ばれる絹織物の生産地として山田が盛んだったことから、豪華な装飾になっています。当時は絹織物が主要産業で、織物工場もたくさんあって、景気も良かったことから、お祭りも盛大になってきたと言う話もありますよ。

―「山車に山田の歴史が刻まれているのですね。他にも山車の特徴はありますか?

珍しい話では山車の車軸の潤滑油に、ちょうど収穫時期のネギを使用しているんです。葱油だと温度が上がらないようで山車の運行に良いとされ、お祭りの最中はネギが箱で山車に積まれています。これも他には無い文化かもしれないですね。また山車の上で行われる「所作事」と言うものがありまして、地元の子どもたちにより継承されてきた舞踊が行われます。曳き踊りと言ったりもしますが、着飾った子どもたちが長唄に合わせて踊る姿はかわいらしいですよ。もちろん若行によるホーリャイの掛け声や団扇を仰ぐところも名場面です。

山田の春祭り秩父まつり会館に展示されている、山田の春祭りの祭り道具を紹介する金田さん

―山車を運行するのにも人手が必要ですが、続けていくために工夫されていることはありますか?

高齢化や人口減少などの影響で、お祭りの運営も年々大変になってきていると言うのは事実としてあります。またお祭りは寄付で成り立っていますので、如実にその影響は出てきていますね。お祭りを行うためには事前準備もとても大切で、笠鉾に付ける花を作ったり、子どもたちは屋台囃子の練習をしたりと、それぞれが準備を行っています。こう言ったように人的に行わざるを得ず大変な部分は存在しますが、文化的なことだけでも継承していきたいと言う望みは強く持っているところです。そのためには変化も必要ですが、実際に変わってきている点がありまして、以前は山車に乗る若行を女性が務めることはできませんでしたが今では可能になっています。また、地元に住む海外の方や、他地域の方にも参加していただいて、もっと多くの方に山田の春祭りへ関わってもらえるように取り組んでいけたら、お祭りも盛り上がっていくのではと考えています。今後はより多くの方に参加してもらえるよう、発信にも力を入れたいと考えています。

山田の春祭り白い紙が笠鉾に付けられる花。地元の方が一つずつ手折りで花を作り上げている。

―お祭りを開かれたものにすることをはじめ、未来に繋がる形を試しているところなのですね。

繋いでいくと言う話では、有志の保存会が活動していて、山田の春祭りの行事自体を市指定の無形文化財に登録できるように記録を集めたりしています。なかなか記録の残っていない山田の春祭りなので大変ですが、できる限り情報を集め登録できるようにと願っています。また今では全国で音楽を流しながら花火の打ち上げが行われていますが、その発祥が山田の春祭りなんです。音楽花火と呼ぶもので山田が日本で初めて開催したのですが、2008年に諸々の事情から一度中止になってしまいました。ですがそれも有志で工夫し、音楽花火ではないですが、時代に合わせた形で2012年に復活させています。

―新型コロナウイルスの影響で4年ぶりの本格開催となりますが、意気込みを教えてください。

4年ぶりと言うことで、お祭りの運営方法などの引き継ぎや開催に当たっての調整で大変な部分がありました。また今年は終了時間の繰上げや山車の巡行ルートを短くするなど、感染症対策を施しての実施になります。ですが山田の春祭りが本来に近い形で開催され、お囃子が地域に響き渡るのはとても楽しみですね。花火も打ち上がる予定で、花火をバックに提灯に明かりが灯った山車の姿はとても綺麗ですので、ぜひ見に来ていただきたいです。

<金田行事長プロフィール>
1970年に埼玉県秩父市山田に生まれる。2023年山田の春祭り行事長。普段は秩父市役所の職員として働く。子どもの頃から春祭りに慣れ親しみ、特に中学校の卒業式同日に行われていたのが想い出深いと話す(当時は3月15日固定でどちらも開催されていた)。大学生だった20歳の時に初めて若行になり山車に乗る。その後は消防団員として20年以上春祭りの警護に従事。お囃子を聞くと興奮してしまうと言う一面も持つ。

山田の春祭り

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