「日本一歩きたくなる町」を掲げ、町を挙げてウォーキングコースなど観光周遊コースの整備に取り組む埼玉県秩父郡横瀬町。観光協会を中心に開発した、町内8寺で頒布される「切り絵御朱印」は、2023年の「埼玉県新商品AWARD」も受賞しました。
オマツリジャパンも支援させていただいたこの御朱印の開発の裏側を横瀬町観光協会事務局長の金子るみさんに伺いました。
<この記事のポイント>
- 観光客にもっと町内を周遊してもらいたいという課題があった。
- 開発した「切り絵御朱印」の効果で町内8寺を巡る女性が急増!
- 補助金をきっかけに、継続的に効果のある仕組みを作ることができた。
「日本一歩きたくなる町」を目指して
埼玉県の横瀬町は、秩父の霊峰・武甲山に連なる豊かな里山の景観が広がるまちです。横瀬町では、かねて富田能成町長のもと、「日本一チャレンジする町」を掲げてまちづくりに取り組んできました。
「横瀬町は、まちづくりのアイデアを形にできるプラットフォーム『よこらぼ』を2016年に立ち上げたのをきっかけに、住民やベンチャー企業のアイデアを活用してまちづくりをしてきた経緯があります。その取り組みが実を結び、2021年には民間企業が発表した『住み続けたい街ランキング』で県内4位になるなど、住民の満足度が高くて、コミュニティも強固なのです」と金子さん。
「よこらぼ」を通じて、高齢者の生きがいづくりや先進的IT技術の実証実験の場として町の施設やロケーションが活用される一方、もともとたくさんあった観光果樹園に加えて、横瀬産にこだわってお米から作っているどぶろく「花咲山」など新商品、人気の絶景スポット「あしがくぼの氷柱」を活かしたイベントなど観光資源づくりも進展。そして、こうした町の魅力と人の魅力を余すところなく味わってもらうための取り組みが、「日本一歩きたくなる町」を目指して進められているウォーキングコースの設定です。
「これはまちぐるみでやってきた取り組みですが、2次交通手段が少ない中で、観光客の皆さんに町を周遊してもらうにはどうすればいいのか?歩いていただくにしても、何か魅力的な目的があればもっと楽しんでもらえるのではないか、という悩みがあったんです。オマツリジャパンとは、それを一緒に整備していきましょうと協業するようになったのです」(金子)。
新しい観光客層を生んだ「切り絵御朱印」開発
横瀬町とオマツリジャパンは、2021年から国土交通省(観光庁)の「誘客多角化等のための滞在コンテンツ造成」実証実験事業で、「あしがくぼの氷柱」会場において、横瀬町の伝統芸能である神楽と獅子舞を実演するイベントなどで協業の実績がありました。
「秩父地域はお祭りや伝統芸能が豊かな地域なのですが、オマツリジャパンの発信力を通じてローカルなものを多くの人に知ってもらえるいい機会になりました。こうした経緯で、2022年4月には一緒にウォーキングコースの提案と、観光情報の発信を行うウェブサイト『いくぜ、よこぜ!』を立ち上げるに至りました」(金子)。
各ウォーキングコースでの有料のガイド付きツアーなども企画され、複数のツアーに参加する〝横瀬ファン〟の創出に貢献。サイトは現在も町の魅力を発信し続けています。
そして、横瀬町に新たな観光客層を呼び込むことになったのが、町内8つの寺で頒布されている「切り絵御朱印」です。これは2022年度の観光庁補助金「地域独自の観光資源を活用した地域の稼げる看板商品の創出事業」に基づく新企画として、8寺の協力のもと限定の切り絵御朱印を販売する「横瀬まいり」の目玉として誕生しました。
美しい切り絵で各寺らしさを表現するとともに、8つ集めると横瀬の風景が感じられるデザインで、御朱印集めに興味のある若い女性を中心に、多くの観光客を呼び込むものとなりました。「西国三十三所、坂東三十三所とともに日本百観音に数えられる秩父札所34観音は、横瀬町にも点在します。お寺ごとに思いや考え方が異なりますが、多くの方々に巡礼を楽しんでほしいという思いは共通しており、オマツリジャパンと共に調整し、採択された補助金を使ってお寺に大きなご負担をかけることなく最初の第一歩を始められたのは大きかったですね。当初(2022年11月)は各寺(8寺)限定100枚頒布で始まった切り絵御朱印ですが、反響が大きく、約1年で累計3500枚以上も頒布するに至りました。現在はお寺にも還元できるような仕組みを作れています。また以前は年齢層の高い男性中心だった参拝客に、新しく若い女性層が加わり、町の観光施策面でも新たな展開やチャンスを得られています」(金子)。
2023年「切り絵御朱印」新商品Awardを受賞
「切り絵御朱印」は、埼玉県の事業者が販売した魅力的な商品を選ぶ「埼玉県新商品AWARD 2023」で金賞(大賞に次ぐ2位)に選ばれました。
「横瀬の景色や人の魅力など、横瀬に来ないと伝わらないものを伝えたいと思って作った商品ですので、賞をいただくほど多くの人に魅力が伝わったと受け止め、大変喜んでいます」と金子さん。「オマツリジャパンは、情報発信や補助金申請などの支援だけでなく、あまり知ることができない他地域での取り組みなど、私たちに新たな学びを提供してくれました。ぜひ今後も増え続けているインバウンド対応などで協業できればと期待しています」(金子さん)。
地域の観光施策で新たな取り組みをご検討の皆さま、ぜひオマツリジャパンにお問い合わせください。