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シリーズ【インバウンド集客の秘訣、話します!】  ②旅マエ・旅ナカ・旅アトのプロモーション戦略

株式会社オマツリジャパン
2024/8/8
2024/8/7
シリーズ【インバウンド集客の秘訣、話します!】  ②旅マエ・旅ナカ・旅アトのプロモーション戦略

コロナ禍が明け、円安の影響も受けて、外国人観光客が大挙して日本を訪れています。これを商機と見た国や自治体でも、さまざまな補助金で外国人観光客向けの旅行・体験商品の造成を促しています。魅力的なコンテンツを、より多くの外国人に認知し、実際に体験してもらうには、どのようなプロモーションを行えばいいのでしょうか。皆様のお悩みに、オマツリジャパンのインバウンド集客スペシャリスト、田中がお答えします。

「旅ナカ」の効果的なプロモーション

菅原:皆様、こんにちは。株式会社オマツリジャパンの菅原と申します。そして、もう1名は当社の営業部長・田中でございます。

田中:どうぞよろしくお願いいたします。

菅原:今回はシリーズ「インバウンド集客の秘訣、話します!」第2弾です。

前回は、旅行商品や観光コンテンツを造成した際、実際それをどう販売するか、特に「販路」としてどういうチャネルを活用していけばいいのかについて伺いました。今回は、「その後」に焦点を当てます。つまり、商品を外国の方々に認知してもらい、購入に至ってもらうかというプロセスを、いかに効果的に行っていくかという点について田中さんに聞いていきます。

効果的な認知を得るための第一歩

田中:はい。前回もお話ししましたが、良いものを作っても、それが認知されなければないのと同じ。しっかりお客様に届けるのが大事です。OTA(オンライン旅行代理店)に商品を載せるということは、お店に例えると看板を掲げて店の入口を作りましたということですね。もちろん、OTAには手数料を支払いますので、特定顧客層での表示やある程度のPRはしてくれるのですが、こんな商品がここの店で買えますという宣伝はしてくれません。

じゃあどうやってプロモーションするのか。その第一歩は、自分たちの商品が、どの時点で外国人に認知されれば売れるのか考えることです。

インバウンド旅行業では旅マエ(旅行前)・旅ナカ(旅行中)・旅アト(旅行後)というプロモーションの考え方があります。例えば、地方におけるコンテンツ、交通が不便な場所にあるコンテンツ、体験するのに丸1日かかるとか時間を要するコンテンツは、「旅マエ」に予定に組み込んでおいていただかないといけないわけです。海外からやってくるお客様っていうのは、東京で何泊、京都で何泊、そこから大阪へ、といった予定が決まっていますので、その中には当てはまらないと来ていただけないのです。一方、お客さんが滞在中の余剰時間で行けるようなコンテンツは「旅ナカ」のプロモーションでも有効です。

加えて、旅行者の最初の到着地になりやすい東京・大阪・京都で新しい商品を作って販売するのと、地方で行われる商品は、戦い方、戦略が全く違うといえます。ただそれは、東京だから有利、地方にあるから不利だ、ということではありません。東京都内にしても、新宿区にあるコンテンツと港区、あるいは足立区にあるコンテンツでは当然戦い方が違いますし、地方でも日光など人気のスポット周辺にあるコンテンツと、その他地域コンテンツではとるべき戦略が大きく違うのです。

そこで私が一番参考にするのは、付近に既存のどんな人気観光スポットがあるのか、そしてそのスポットにはどのぐらい集客力があるのかです。つまり、そこからどのように自分たちのコンテンツへ観光客を引っ張ってくるのかを考えるわけです。

菅原:なるほど。

近隣地域と協業して相互に利益を得る

田中:具体的には新宿や港区などお客様が滞在するホテルが多くある地域では、お客様がホテルのコンシェルジュを利用して「この近くで食べるところはありますか?」や「遊びに行くところはありますか?」と尋ねるケースがあります。そのような地域では、案内所やホテルのコンシェルジュにチラシやポスターなど紙媒体でコンテンツ情報を提供することは非常に有効です。近場でなくとも、猿と一緒に入れるという温泉の情報を伝えたお客様が、東京からタクシーで3万〜5万円を使って直行した例もあったと、あるホテルのコンシェルジュから聞いたことがあります。

私たちがあまり知らない場所にも、外国人観光客が多い地域があります。例えば、埼玉県の横瀬町に「氷柱(ひょうちゅう)」という氷の景観を楽しむコンテンツがあります。実際に行ってみると日本人よりも外国人観光客が多い。このように、地域の皆さんが「なぜか外国人が多い」と不思議に感じている場所も点在しています。これらの場所をきちんとリサーチし、どこからお客様が来ているのかを分析し、地域で情報を共有することが重要です。

観光業は競争だけでなく、同じ地域にあるA地点とB地点が協力し合うことで、相互に利益を得ることができます。観光スポット同士でパンフレットを相互に置いておくことが大きな効果を発揮する場合もあります。

実際、旅ナカ利用できるコンテンツのプロモーションには、観光パンフレットが非常に効果的です。観光協会などが発行する地域紹介のパンフレットやウェブサイトは、ほとんどの地域で英語対応されています。これに具体的な情報を掲載してもらうことが重要です。

また、地域の観光情報を発信しているフリーペーパーや、宿泊施設が独自に作成しているような、手書きの観光案内も活用してください。これらは、コストをかけずに情報を提供できる手段です。そしてこういう手段は、即効性のある広告効果が期待できるのも魅力です。例えば、私がロボットレストランで集客していた際、観光案内所やホテルのコンシェルジュに情報を提供することで、翌日には営業結果が出ることがよくありました。

あとは、過日もお話ししたOTAですが、どのような体験型商材を提供しているかによって、OTAを選別することがポイントです。OTAの中には、航空券などの移動手段、宿泊などを複合的に提供するものや、体験型商材のみを扱うものがあります。これらのOTAはお客様が現地で体験を探す際に非常に役立ちます。旅ナカプロモーションでは、こういったOTAへの積極的な掲載も効果的です。

「旅マエ」プロモーションの考え方

菅原:ありがとうございます。それでは続いて「旅マエ」プロモーションについて教えてください。

田中:はい。自分たちの地域がまだ外国からのお客様がほとんど滞在していないとか、交通の便が悪い地域である場合は特に「旅マエ」に自分たちのコンテンツを知ってもらう工夫が必要です。先ほども話したOTAは一つの有効策。航空券や宿泊パッケージを提供するOTAを選び、例えばバスで回るようなパッケージツアーを掲載しているOTAに対して営業をかけることは有効です。

また、JNTO(日本政府観光局)との協力も有効です。JNTOは海外でのプロモーションを定期的に行っており、その中に自分の地域のコンテンツを含めてもらうことが可能です。こうしたプロモーションを通じて、外国のお客様が日本を訪れる際に自分の地域も選択肢に入るようにすることができます。

PRの参考に「都庁プロジェクションマッピング」の例

田中:海外のメディアでは、「日本で遊びたい10のこと」、「日本で行きたい20のスポット」という観光記事がよく見られます。こうした記事に自分たちの地域を掲載してもらうためには、ジャーナリストやインフルエンサーを招待したり、動画や画像の提供、名産品を送付したり、現地での体験を通じて良い評価を得ることが大切です。

例えば、今話題の東京都庁のプロジェクションマッピングは、そのプロモーションが大変参考になる事例でもあります。グーグル検索すると、多くの記事や広告が見つかり、関連する動画もたくさん公開されています。様々な意見もありますが、ことプロモーションのやり方では参考になる部分が多いと思います。特に「タイムアウト」や「ジャパンタイムス」などのメディアに記事広告を作成してもらうことは効果的です。私も以前、この方法を使い、結果としてかなり効果がありました。

自分たちのコンテンツが海外でどれだけ注目されているかを知るには、まずは、英語で検索してみると良いでしょう。体験動画などが検索結果に上がっていたり、日本の新聞社などが関連するコンテンツを報じたりしていることがあります。こうした情報を見て他のコンテンツがどんな広告費をかけているのかを把握することも大いに参考になります。

効果測定の重要性と実践例

田中:先ほど私は効果を実感したと言いましたが、実際には定量的な効果測定を行わないとその効果を確認するのは難しいですね。広告を出す際には効果測定が最も重要であり、どの広告がどれだけの成果を上げているのかを把握することが必要です。

ロボットレストランでは、全ての広告に一意のトラッキング番号を付けて、どこから顧客が流入してきたのかを把握できるようにしていました。例えば、OTAの場合は、彼らのデータから顧客の国籍や予約内容がわかりますが、紙の広告やウェブ広告など一般的な広告でもその効果が明確に見える工夫として、「タイムアウトを見ました」とか「メトロポリスを見ました」といったフィードバックを店頭で受けた場合に、特典を提供するなどの仕組みを設けました。紙の媒体では通し番号を使用して、携帯画面では提示されたら割引を行うなどの施策も取っています。これにより、どの広告媒体がどれだけの顧客を引き寄せているのか、さらに顧客の属性(国籍、性別、グループ数など)まで把握することができます。このような定量的な効果測定を基に、成果が出ないと判断した広告媒体を2ヶ月や3ヶ月で見極め、必要に応じて切り替えていくことで、最終的には効果的な広告戦略を構築していました。

最初は、本当に多くの広告を試しました。中国に向けたプロモーションから看板や電柱まで、ありとあらゆる方法で広告を展開しましたが、最終的に効果が高かったのはやはりフリーペーパーやパンフレットでした。実際にパンフレットを作成し、足を使って配布する方が、インフルエンサーよりも効果的だったのです。もちろん、これはロボットレストランの場合ですが。しっかり効果測定を行なって、効果のある戦略を着実に継続することが重要です。別の観点からも考えると、定量的なデータがあると広告会社との契約更新の際、価格調整を検討する場合にも調整が客観的に行えます。

菅原:必ず定量的なデータを収集し、それを基に戦略を進めていくことが大切ですね。

効果測定に基づく広告戦略の最適化

田中:初めて広告を打とう、という段階ではそういった数字がない場合もありますが、まずは現地でアンケートを取るといった手段も有効ですね。先ほど話に上がった都庁などでアンケート取れば非常に有意義な情報が得られるのではないでしょうか。オマツリジャパンも調査業務をやっているのでぜひご用命いただければと思います(笑)。 というのは冗談ですが、アンケートやレビューは実は非常に重要な要素です。

観光庁は、観光情報サイト「トリップアドバイザー」の登録方法まできちんと資料化し、広く配布して事業者に勧めています。トリップアドバイザーは実際に多くの人に閲覧されているサイトです。その理由はおそらくレビューを残すことができるからでしょう。やや手数料が高めに設定されてはいますが、お客様が体験したことをウェブ上で残してもらうことは非常に重要です。

なぜなら、このようなレビューで旅行前後の体験を共有することが、特に高付加価値商品の購入を決断するのに役立つからです。やはり、他の体験者の声がない商品は信頼性が低く、高額であればなおさら購入がためらわれるものです。したがって、商品の広告を作成する際には信頼できる情報や価格が提示されることが重要なのです。

Youtubeで簡単にできるトレンド調査

菅原:レビューによって、どんなコンテンツのどの部分が外国の方に受けていたのかもわかります。

田中:おっしゃる通りですね。やや余談になりますが、今、日本のフルーツが世界で大人気なのをご存知ですか?白いイチゴなど高級フルーツの値段や食べられる場所が紹介されています。例えば デコポン1個が13ドル。リンゴが1個21ドルと、今のレートですと相当に高額な商品が並んでいて、これが海外で大人気なのです。

他にもYouTubeなどで日本のサンドイッチがブームになっていて、 それは珍しくはないコンビニのサンドイッチだったりするのですが、外国人がコンビニのサンドイッチを食べ比べている動画がバズっていたりします。面白いところで牛肉とかも単なるA5ランクとかではなくて、 今は「オリーブ牛」。これは香川県で生産されている牛肉です。あるいは、最近高知県の「酔鯨」という日本酒も人気ですね。

日本のコンテンツ、特に「食」は大人気です。自分たちでも自分たちの地域の産品の価値っていうのは理解できていない部分が非常に多くあって、こういう動画や記事でリサーチをして、きちんとした広告媒体に掲載するのが重要だと思っています。

リサーチといっても、単純に知りたいことをグーグル翻訳で英語にして動画サイトに打ち込むだけでできます。最新の流行を調べ、自分たちがどこに当てはまるのか、あるいはこういったものが人気だというのを調査しながら、それを効果的に広告に生かしていただきたいです。

「リピーター」獲得のための「旅アト」戦略

菅原:旅マエ、旅ナカでどのような施策をするか、その施策の選び方を非常にわかりやすく解説いただきました。最後に、私の方から一つお伺いしたいのは、訪日外国人の方をターゲットにした時、リピーターをどう考えるかという点です。アジアなどの方で週末比較的簡単に来日される方もいらっしゃいますが、例えば欧米など物理的な距離がある時に、もう一回来るっていうお客様って実際どのくらいいるのだろうと思うのです。

田中:私がロボットレストランをやっていた時、実はリピートのお客様は大変多かったのです。全体の5%ぐらいがリピーターで、この種の観光施設の中ではかなり多い方です。

この状況を狙うために行なっていた施策というのは、例えば「このチケットの半券をもう一度持ってきてくれたら割引します」といったサービスを行っていました。これは訪日外国人旅行者を対象にはあまり考えられないことかもしれませんが、一つは、外国人の方が日本に滞在している期間中に何度か来てもらうという短期間のリピーターを狙ったものです。

一方で、チケットの半券に公演情報(日時や席の場所など)だけでなく、トリップアドバイザーのリンクや新宿周辺の地図を載せることで、その半券自体をお土産にするような戦略をとっていました。普通、多くの人がチケットの半券を捨ててしまいますが、海外旅行に行った際に情報やインフォメーションが載っていて、綺麗なチケットならば、お土産として持って帰りたくなると思います。その地域にいる間だけでなく、実際にチケットを持って帰ってもらい、再び日本に来てくれるような対策もしていたのです。その結果、実際に自分の国に戻ってそのチケットを持って再度日本を訪れたお客様も何人かいらっしゃいました。チケット自体が非常に良い広告となっていたのです。

菅原:それはすごいことですね!

田中:お客様の手によって、そのまま広告が海外に渡るということ自体が戦略として非常に面白い効果を生んだのです。1人のお客様が国に帰った時に「遊びに行って面白かった。絶対行った方がいいよ」と自分のコミュニティで2人、3人と口コミで広めていただける。ウェブだけでなく、友人など身近な人から勧められたら「行ってみようかな」と思いますからね。

菅原:新規の顧客獲得にどうしても目が行きがちですが、そんな中で、旅の後のプロモーション施策についても面白い話を伺いました。これはCRM(顧客関係管理)に関わる話になってきます。

田中:そうですね。

菅原:さて、今回は、第2回目ということで「プロモーション」をメインにお話しさせていただきました。旅マエ・旅ナカ、それぞれどのように海外にいらっしゃる方、そして日本にランディングしてから様々な情報を探されている方に自分たちの商品をプロモーションしていくべきなのか、また、実際に利用していただいた旅アトの方にも、いかに再度訪れていただくようにするのかについて伺いました。情報発信・拡散やあるいは 口コミで、いい形でさらなる新規客の獲得につながっていくサイクルを描けるかが重要です。

今後も、インバウンド向けのコンテンツの造成から販売までの様々な情報、 お届けしていきたいなと思っております。 引き続き、ご視聴ください。

田中:ありがとうございました。

【この記事は動画版もあります!】

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