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「かみのやま温泉の加勢鳥」わら蓑かぶった寒空の肌に祝い水|観光経済新聞

2019/9/21
2020/6/6
「かみのやま温泉の加勢鳥」わら蓑かぶった寒空の肌に祝い水|観光経済新聞

観光経済新聞のコラム記事連載が、2019年9月14号からスタートしました!「お祭り」をフックに旅情あふれる記事を、オマツリジャパンライターの皆さんに書いていただき、毎週掲載して行きます。普段のマツログ記事とは一味違う表現で書いていただいていますので、ぜひお楽しみください。(オマツリジャパン編集部)

かみのやま温泉の加勢鳥(山形県上山市)

私は「奇祭ハンター」として全国の奇祭を訪ねている。今回の目的地は山形県、かみのやま温泉。かみのやま温泉は、郷土資料館として再建された上山城の城下にある昔ながらの温泉街だ。ここでは毎年2月11日、若者がわら蓑(みの)をまとって、火伏せ(火の用心)や商売繁盛を祈願する「加勢鳥(かせどり)」という奇習が行われている。一時中断したが、1959年に復活したという。ちなみに加勢鳥の名前は「稼ぎ鳥」または「火勢鳥」に由来し、加勢鳥は神様そのものではなく、神の使いという位置付けだ。

かみのやま温泉駅に早朝に着き、時間を持て余した私は、祭りが始まるまでの間、下大湯公衆浴場と月岡ホテルの日帰り温泉の二つをしっかり堪能させてもらった。

朝10時。雪景色が残る上山城前の広場に加勢鳥を務める約30人が勢ぞろいしていた。白い短パンにさらし、ほっかむりという姿でいかにも寒そうだ。わら蓑を着ても寒いだろう。地元民だけでなく、東京から20回以上参加しているという猛者もいた。そう。加勢鳥は若干名だが、一般参加も可能なのだ。

「加勢鳥様のお出ましだ~!」と宣言した後、加勢鳥たちは「カッカッカーのカッカッカ、五穀豊穣・火の用心、カッカッカーのカッカッカ」などと歌いながらピョンピョン跳ね回る演舞を始めた。この後、広場から移動して加勢鳥は町の各所へと散っていった。行く先々で人々はバケツに水をためて待ち構えている。極寒の中、加勢鳥には容赦なく水が浴びせられるのだ。もちろんこれは祝い水で、商売繁盛を祈願してのことだ。また、加勢鳥から抜け落ちたわらで髪を結うと将来、黒髪の豊かな美人になると言われており、抜け落ちたわらを拾う子どもたちの姿もチラホラ見られた。

かつては上山市だけではなく、小正月にわらをかぶって民家を訪ね、祝儀をもらう風習はそれこそ日本全国にあったというから驚きだ。温泉もお城も奇祭も一度に楽しめる、かみのやま温泉街の「加勢鳥」。ぜひ一度体験していただきたい。

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