夏は川や海など水辺のお祭りがグンと増える季節。水辺のお祭りに登場する主役級のものといえば?そう、「船」です。
飾り立てた船が出てくることが特徴のお祭りを「船祭り(ふなまつり)」と呼びます。船には神様を遷したお神輿を乗せ、川や海を渡っていく間に地域の安寧を見ていただくと同時に、人々に御神徳を授けてもらうのが最も一般的。全国各地で行われている船祭りの中でも、
◎真鶴貴船まつり(神奈川県真鶴町)
◎管絃祭(広島県廿日市市)
◎尾張津島天王祭(愛知県津島市)
を「日本三大船祭り」と称することが多いようです。というのも3つめには諸説あり、「天神祭」「塩竈みなと祭」「河内祭の御舟行事」などが挙げられることも。そこでこの記事では、日本三大船祭りのそれぞれについて、異説のお祭りも含めてご紹介します。
真鶴貴船まつり(神奈川県真鶴町)
この投稿をInstagramで見る
真鶴貴船(まなづるきぶね)まつりは、神奈川県真鶴町にある貴船神社の例大祭です。300年以上前の創建当初から、漁船や運送船の大漁や安全を祈って行われていた「船祈祷」が始まりとされています。
華やかな花飾りや吹き流しで飾られた小早船(こばやぶね)や神輿船などが、櫂伝馬(かいでんま)と呼ばれる手漕ぎの船に曳かれて海の上を渡っていく様子は荘厳です。
真鶴貴船まつりは、国の重要無形民俗文化財に指定され、毎年多くの観光客で賑わいます。
例年、7月28日・29日と日付を固定して行われていましたが、2023年からは7月の最終土曜日とその前日に変更となりました。2023年は7月28日(金)と29日(土)に開催されます。
管絃祭(広島県廿日市市)
この投稿をInstagramで見る
管絃祭(かんげんさい)は、広島県廿日市市の厳島神社で行われるお祭りです。舳先の左右にかがり火を焚き、4個の高張提灯と二十数個の飾り提灯に灯りを灯した御座船(ござぶね。管絃船ともいう)に厳島神社の御祭神を乗せ、対岸の地御前神社(じごぜんじんじゃ)まで海上を渡ります。
平安貴族が都で行った「管絃の遊び」を今に伝えるもので、厳島神社を造営した平清盛がこの遊びを厳島神社に移し、神様を慰める神事として執り行ったのが始まりとされています。灯火を海に映しながら、夜にかけて御座船が海を渡っていく様子は、まさに雄大で雅な平安絵巻のようです。
管絃祭は台風の季節を避け、大潮の時期である旧暦の6月17日に毎年開かれています。2023年は8月3日(木)に行われる予定です。
尾張津島天王祭(愛知県津島市)
この投稿をInstagramで見る
「日本三大川祭り」や「日本三大提灯祭り」の一つとも称される尾張津島天王祭(おわりつしまてんのうまつり)は、愛知県津島市にある津島神社の例祭です。
お祭りの始まりには諸説ありますが、南北朝時代に津島に逃れてきた南朝方の良王親王を守る武士たちが、北朝方の武士を舟遊びに事寄せて討ち取ったことが由来の一つとされています。
初日の「宵祭」では、二隻の舟をつないだ中心に真柱を立てて12個の提灯をつけ、その下に半円形に365個の提灯をつけます。提灯の灯りが川面に映え、揺らめきながら進むさまはとても幻想的。一転して翌日の「朝祭」では、能人形を飾った絢爛豪華な車楽船が登場し、雅な時代絵巻が目の前で繰り広げられます。
尾張津島天王祭は、毎年7月の第4土曜日と日曜日に行われます。2023年は、7月22日(土)、23日(日)に行われます。
天神祭(大阪府大阪市)
この投稿をInstagramで見る
「日本三大祭り」や「日本三大川祭り」の一つにも数えられている天神祭。大阪市にある大阪天満宮の例祭で、951年、疫病退散を祈願して社頭の浜から鉾を流してお祓いをしたのが祭りの起源とされています。
毎年6月下旬から7月25日まで約1か月間にわたって、市内各地で様々な行事が賑やかに開催されますが、本宮(本祭)である7月25日に行われるのが「船渡御(ふなとぎょ)」です。
御神霊を乗せた奉安船を中心に、約100隻を超える船団が花火とともに水面を彩るのが祭りのハイライト。「奉納花火」も打ち上げられ、大輪の花が輝く夜空と明るく照らされた水面の景色が圧巻です。
2023年も7月24日(月)に「宵宮(よみや)」が、25日(火)本宮(本祭)が行われます。
塩竈みなと祭(宮城県塩竈市)
この投稿をInstagramで見る
塩竈みなと祭は、宮城県塩竈市の塩釜港周辺で開催されるお祭りです。戦後まもない1948年に、港町塩釜の産業復興を願って始められました。
最大の見どころはお神輿の海上渡御です。志波彦神社・鹽竈神社の2基のお神輿をのせた豪華絢爛な御座船「龍鳳丸」と「鳳凰丸」が、約100隻もの供奉船を従えて、日本三景の松島湾内を巡行します。
塩竈みなと祭は、毎年7月第3月曜日の海の日に行われています。2023年は7月16日(日)に前夜祭の花火大会が、17日(月・祝)に本祭が行われます。
河内祭の御舟行事(和歌山県串本町)
この投稿をInstagramで見る
河内祭は和歌山県串本町にある河内神社の例祭で、その中で行われるのが御舟行事です。源平合戦に勝利した熊野水軍が凱旋した姿を伝えているといわれ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
行事は古座川の下流で行われ、飾りをつけた三隻の御船(みふね)とそれに続く屋形船、手漕ぎの船の櫂伝馬、獅子舞伝馬と呼ばれる船などからなる船団が、川を上っていきます。
毎年7月の第4土曜日と日曜日に行われており、2023年は7月22日(土)、23日(日)の予定です。
まとめ
今回は「日本三大船祭り」について、異説として挙げられるお祭りも合わせて、6つのお祭りを紹介しました。
海に四方を囲まれ、無数の川が流れる日本では、船は古来から使われ親しまれてきた乗り物。船祭りは、日本ならではの歴史が感じられるお祭りといえるでしょう。今年の夏は船祭りに参加して、非日常の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
・・・
トップ写真提供:宮城県観光プロモーション推進室