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日本三大陶器祭りとは?いつ開催?佐賀の有田、愛知の瀬戸、もう一つはどこ?

2023/4/26
2024/3/5
日本三大陶器祭りとは?いつ開催?佐賀の有田、愛知の瀬戸、もう一つはどこ?

私たちの暮らしに彩りを与えてくれる陶磁器。日本には各地に産地があり、大規模なお祭りや市が開かれています。なかでも、

◎有田陶器市(佐賀県有田町)
◎土岐(とき)美濃焼まつり(岐阜県土岐市、泉北山町)
◎せともの祭(愛知県瀬戸市)

の3つの産地で行われるお祭りは「日本三大陶器祭り」と称されています。
この記事では、陶器と磁器の違いやそれぞれの産地の特徴、陶器祭りの内容などについてご紹介します。

そもそも陶磁器とは?

陶磁器とは、原料である土や石の粉をこねて焼いたものの総称で「焼きもの」とも呼ばれます。広い意味では土器なども含まれますが、狭義には釉薬(ゆうやく。うわぐすりのこと)をかけて焼く陶器と磁器のことを指しています。

陶器は主に陶土(粘土)を練って成形したものを、800度から1250度で焼いたものです。目には見えない無数の空気穴があいていて、やや吸水性があります。そのため料理の雑味を吸着し味をまろやかにしてくれたり、空気が断熱層の役割をして熱い飲み物の熱を外に伝えにくいため、湯のみに使われたりします。日本では美濃焼や萩焼が有名です。

磁器は主に陶石(石粉)を練って成形したものを、1200度から1400度で焼いたものです。長石や珪石といったガラス質の石を多く含むため、ガラスのような滑らかな質感と透明感があることも特徴です。とても丈夫で割れにくいため薄く軽くつくることができ、吸水性もほとんどありません。日本では有田焼や九谷焼が有名です。

ではここからは、三大陶器祭りとそれぞれの陶磁器の特徴についてご紹介します。

有田陶器市(佐賀県有田町)

有田陶器市は、毎年4月29日から5月5日まで開催されるお祭りです。佐賀県有田町の町内一円に店舗が並び、全国から100万人を超える人たちが訪れます。
お祭りの起源となったのは明治29年(1896年)、深川栄左衛門と田代呈一の主催で開かれた陶磁器の品評会。その後に品評会と同時開催で蔵ざらえの大売出しが行われるようになり、これが陶器市のはじまりといわれています。

有田焼は日本国内で初めて作られた磁器。1616年頃、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れてこられた朝鮮の陶工・李参平が原料となる陶石を有田の泉山で発見し、磁器の焼成が始まります。当時は伊万里港から船で出荷されていたため「伊万里焼」と呼ばれ、1650年代には江戸や京阪のみならずアジア、ヨーロッパへと輸出され始め大変な人気を博しました。

有田焼には時代とともにいくつもの様式が生まれます。「柿右衛門様式」は初代酒井田柿右衛門が確立した作風で、赤色を基調に黄、緑、青、紫、金色などで描かれた鮮やかな色絵の美しさが特徴です。「鍋島様式」は鍋島藩の御用窯で幕府への献上品として作られ、精巧な技術が光る格調高い芸術品。「古伊万里様式」は染付と金襴手(きんらんで)という金彩文様で装飾する技法を用いた絢爛豪華さが魅力です。

これらの特徴は現代の有田焼にも脈々と受け継がれています。かつてヨーロッパの貴族から「白い金」とまで称賛された透き通るような白い磁肌と、呉須という藍色の顔料での染付、鮮やかな色絵に赤や金色の豪華な装飾技法で華やかな作風が有田焼の特徴です。

◎2023年の開催は?

今年2023年も、例年通り4月29日(土・祝)~5月5日(金・祝)まで行われます。有田国際陶磁展や伊万里・有田焼伝統工芸士展も同時期に開催されるほか、5月4日(木・祝)には陶山(すえやま)神社で、有田焼の祖である李参平に感謝する陶祖祭も行われます。

今年の目玉イベントは、4月29日のお祭りのオープニングを飾る佐賀県警察音楽隊よるパレード。そのほか、トンバイ堀の通りには期間中を通しておしゃれなカフェが登場し、有田焼の文様があしらわれた紙コップでひと息つくことができます。詳細な情報は有田陶器市 公式サイトでご確認ください。

土岐美濃焼まつり(岐阜県土岐市、泉北山町)

 

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岐阜県土岐市で毎年ゴールデンウイークに開催される土岐美濃焼まつり。土岐美濃焼卸商業団地から名を変えた織部ヒルズを会場とし、各社による倉庫開放や店舗販売のほか、歩行者天国となる道路には250もの露店が連なって廉売市も開かれます。

 

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美濃焼とは、旧美濃国(現在の岐阜県)の土岐市、多治見市、瑞浪市一帯で生産される陶磁器の総称です。奈良時代に朝鮮半島から伝わった須恵器(すえき)が起源とされ、安土桃山時代に茶の湯と結びついて隆盛を極めました。

現在、国内の食器類生産量のうち美濃焼のシェアは50%以上。実は食卓やお店で知らぬ間に使っていることも多い、日本人には馴染み深い焼きものになりました。特に定まった特徴はないものの、長い歴史の中で様々な様式が生まれ、代表的なものには以下の4つがあります。

●黄瀬戸(きせど):微量の鉄分を含んだ釉薬によるあたたかい淡黄色が特徴
●瀬戸黒(せとぐろ):鉄釉をかけて高温で焼いている途中、窯内から引き出して急冷する技法で表面に現れる漆黒が特徴
●志野(しの):細やかで美しいひび模様と乳白色の肌が特徴。肌が白いため陶器には珍しく素地の上に直接絵が描けます
●織部(おりべ):安土桃山時代の武将であり茶人であった古田織部が、自分の好みに合わせて作らせたといわれています。ゆがみも良しとする大胆な造形、鉄絵による意匠や、鮮やかな緑色が特徴です

◎2023年の開催は?

今年2023年は、5月3日(水・祝)から5日(金・祝)まで行われます。美濃焼を代表する4つの様式の陶器はもちろん、磁器製品までありとあらゆる陶磁器が揃っています。

美濃焼のショッピングだけでなく、絵付けや陶芸の体験、スタンプラリー、大道芸人によるパフォーマンスなどのイベントも盛りだくさん。屋台広場では飲食のテントが豊富で、B級グルメからデザートまで楽しめます。詳細な情報は土岐美濃焼まつり2023公式サイトでご確認ください。

せともの祭(愛知県瀬戸市)

せともの祭は、愛知県瀬戸市で毎年9月の第2土曜日と翌日の日曜日に開催されるお祭りです。瀬戸川の両岸約800mの区間に瀬戸物問屋や窯元など200店舗が並ぶ廉売市が人気で、飲食業界などの専門家も買い付けに訪れるのだそう。

特に東日本では陶器のことを「瀬戸物(せともの)」と呼ぶほど、古くから絶大な認知度を誇る瀬戸焼。その起源は鎌倉初期まで遡りますが、江戸時代には有田焼などに押されて衰退してしまいます。そんな状況を脱して瀬戸焼を再興し、磁祖として親しまれるのが加藤民吉翁。彼を称える産業祭として昭和7年に開催されたのが、せともの祭の始まりといわれています。

瀬戸焼の大きな特徴は、中国の青磁や白磁を思わせる白く美しい素地にあります。
原料となる瀬戸の粘土は鉄分をほとんど含まないため、白くて綺麗な焼きものが作れます。白い素地は線や絵付けにも向き、紺色の顔料で絵付けをした上に釉薬をかけて焼き上げることで、多彩なデザインと優れた多様性が生まれています。

◎直近の開催は?

近年は、新型コロナウイルス感染症対策で実施見送りが続きましたが、昨年2022年は3年ぶりに、9月10日(土)と11日(日)の2日間、行われました。
廉価市だけでなく、瀬戸物でできた人形の展示、露天縁日、ご当地ヒーローのスペシャルショーなどもあり、親子でイベントを楽しめます。

他にもたくさん!2023年GWの陶器祭り

この記事では「日本三大陶器祭り」に数えられる3つのお祭とそれぞれの焼きものの特徴などをご紹介しました。
日本各地の焼きものの産地でも、特にゴールデンウイークにはお祭りが数多く開催されますので、その一部ご紹介しましょう。

◎笠間の陶炎祭(ひまつり)(茨城県) … 2023年4月29日(土・祝)~5月5日(金・祝)

◎益子陶器市(栃木県) … 2023年4月29日(土・祝)~5月7日(日)

◎九谷茶碗まつり(石川県) … 2023年5月3日(水・祝)~5月5日(金・祝)

◎信楽作家市(滋賀県) … 2023年5月2日(火)〜5月5日(金・祝)

◎萩焼まつり(山口県) … 2023年5月1日(月)〜5月5日(金・祝)

◎波佐見陶器まつり(長崎県) … 2023年5月3日(水・祝)~5月5日(金・祝)

◎唐津やきもん祭り(佐賀県) … 2023年4月29日(土・祝)~5月5日(金・祝)

陶磁器に興味を持っていた方も、この記事を読み興味を引かれた方も、お近くの陶器祭りに足を運んでみてはいかがでしょうか。

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トップ画像:2022年「せともの祭」より(撮影・高橋佑馬)

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