日本には30万のお祭りがあると言われています。全国各地の多種多様なお祭りの魅力を知っていただき、ぜひ旅行を通じて全国の町に行っていただきたい、そんな思いから「祭りで日本を盛り上げる」をテーマに活動をする株式会社オマツリジャパンとクラブツーリズムが連携し、全国のお祭り情報を発信していくこととなりました。
今回取り上げるのは8月3日より開催される秋田の「竿燈まつり」。秋田を代表するお祭りともいわれるこの祭りの歴史から現在に至るまでの発展過程について、全3回の記事で紹介していきたいと思います。ナビゲーターは株式会社オマツリジャパンの大山 勝廣(おおやま かつひろ)、そしてゲストは秋田市竿燈会の加賀屋 政人(かがや まさと)さんです。
また、この記事の模様は動画でも視聴することができますので、ぜひこちらもチェックしてみてください! 第2回目以降の動画は、クラブツーリズムPASS会員限定コンテンツとなっておりますので、これを機にぜひ入会をしてみてはいかがでしょうか!?
※第1回目の動画はどなたでも無料で視聴可能です。無料公開期間が過ぎますと視聴にはクラブツーリズムPASSへの入会が必要となりますので、あらかじめご了承ください。
町中にあふれる「竿燈まつり」のモチーフ
大山:第1回目では竿燈まつりの成り立ちとかの歴史、特徴についていろいろお伺いしたんですけれども、この秋田竿燈まつりというお祭りが、どういった日程で開催されるのかなど、概要についてまずお伺いできますか。
加賀屋:毎年8月の3日から6日までの4日間、曜日には関係なく行われるお祭りです。
大山:竿燈まつりは「竿燈大通り」という通りで開催されるということなのですが、まさにそのお祭りのために作られた大通りということなんでしょうか。
加賀屋:元々ですね、竿燈はあちこちの場所で行われていたんですけれども、電線を切ってしまいクレームがついたりと、竿燈の本数が増えてきたこともあり、昭和47年から「竿燈大通り」というところで行われるようになりました。片側3車線で、長さが800mある、中心部にある道路です。
大山:駅から歩いて5分ぐらいで、そこからずっと市役所の方までずっと続いている道路ですよね。そこを4日間、すべて通行止めにして開催されるのが、秋田竿燈まつりということですね。
前回の記事でも伺いましたが、秋田竿燈まつりはずっと外町で開催されていたんでしょうか。
加賀屋:そうなんです、旭川という川を挟んで、西側にある町を外町というのですが、秋田竿燈まつりはここで始まったお祭りなので、外町でしかやらないというのはこだわってるんです。
大山:なるほど。前回のお話の中で、実際には1回だけ外町じゃないところでも開催をしたことがあるというお話が出てきたのですが、それはどういう経緯だったのでしょうか。
加賀屋:電線が丈夫でなかった頃に、電線に引っ掛けて切らしてしまいました。あとは街灯にですね、竿燈をぶつけて燃やしちゃった。行政からかなり怒られたらしいです(笑)。それで、この辺でお祭りをやっちゃ駄目だというふうに言われて、内町に追いやられたということです。
大山:なるほど。
加賀屋:でも、やっぱり(祭りの担い手が)職人気質なので、自分ところの土地でやらないといけないということで、また外町に戻ってきたんです。
大山:ということですね。それにしても、本当にこの秋田の街中を歩いても、いたるところに竿燈をモチーフにしたものがいっぱいあるんです、やっぱりそれは市民の皆さんがもう愛してやまないからそういうことになってるんでしょうか?
加賀屋:はい。例えばですね、竿燈大通りには竿燈の提灯に見立てた街灯があります。さらにマンホールもですね、竿燈が刻み込まれていて、あれが実はですね、オークションにかけられて売り出される場合もあるんですよ。
大山:行政が経年変化で劣化してしまったマンホールの蓋を、記念として販売をされているそうですね。
加賀屋:なかには、カラフルに色付けされたマンホールもありますよ。
大山:なるほど。祭りの前に、そういったものを探して町歩きをするのも一つの楽しみですね。
自慢の技を競い合う「妙技会」にも注目!
大山:実際に8月3日から6日までの4日間は、どういったスケジュールで祭りが進んでいくんでしょうか。
加賀屋:まず8月3日は、4日間の祭りの安全を祈願します。千秋公園の上にある八幡秋田神社というところ、実はここ佐竹の殿様に非常にゆかりのある神社でして、佐竹義宣公を祀っている神社なんです。この神社に朝6時に集まって、4日間の祭りの安全と五穀豊穣を祈願します。
そして竿燈の一番上に付ける御幣というものがあるんですけど、神の宿る御幣ですね、それをいただいていきます。そして各町内に戻っていって、竿燈の先端に御幣をくくりつけます。この御幣に病魔や邪気を吸い取ってもらって、竿燈祭が終わった後に御幣流しといいまして、最終的には川に流します。
大山:御幣流しは8月7日に行うんですよね。
加賀屋:旭川の刈穂橋というところから、御幣を流します。
大山:「かりほ」ですか?
加賀屋:稲を刈ると書いて「刈穂」です。竿燈そのものも、稲穂がしなって頭(こうべ)を垂れる稲穂に見立ててますから、稲を刈り取った後に、御幣を川に流すというわけです。
大山:なるほど、まさに8月7日(旧例7月7日)は、竿燈まつりの起源となっている「ねぶり流し」としての行事が行われる日ですし、それも含めて、竿燈まつりは五穀豊穣の思いも込めたお祭りになっているということですか。
加賀屋:そうですね。そして御幣をもらいに行く8月3日はですね、夜の本番のお祭りまでに日中は何もやることはありません。まあ準備しているわけですね。そして、2日目、8月4日からはですね、日中は各町内が技を競い合うコンクール、「妙技会」といいますけど、昼竿燈と称して、「エリアなかいちにぎわい広場」という場所で技を競い合う妙技会行われています。
大山:第1回でも紹介させていただいた、5つの技を各町会ごとに競い合う大会がそこで行われると。
加賀屋:5人1組になって行う団体戦には、指定演技と自由演技があって、自由演技は、どんどん継ぎ竹を足していって、花笠をつけたり、役物をつけたりち、もうハラハラドキドキ、折れそうなぐらいいっぱい継ぎ足していきます。また個人戦もあります。個人戦では、1人で4つの技を、平手、額、肩、腰、これを全部こなしていきます。
いずれの競技してもですね、直径6メーターの円の中心部にバッテンがありまして、そこから出ないようにする演技をします。審査員がいまして、できるだけ動かないで演技してる人の点数が伸びます。一旦円から出ても、また真ん中に戻してこようという、その技量を見たりもします。倒してしまった場合はそれでおしまいです。これとまた別に、子だちたちがやる、子若の競技もあります。小若は五人一組でやる「小若団体規定」、これだけです。
大山:なるほど。ちなみに個人演技で優勝されるとどうなるんですか。
加賀屋:やっぱり、その年のヒーローになれますよね。新聞紙上に載りますし、テレビからも追っかけられるし、いろんな雑誌からも出てくれと取材依頼がくる、取材攻撃です。
大山:本当に晴れ姿といいますか、優勝できると町のヒーローになっていろんな人から注目されるということで、若い人たちは気合を入れて妙技会への準備をするということですね。
加賀屋:その年のチャンピオンというネーミングが付くので、次の年からはプレッシャーがかかります。自分の技に磨きをかけていかないと、あの人、過去のチャンピオンだったのに変だねって言われたくないでしょ?(笑)
あとはお祭りにつきもののお囃子妙技会もあります。
大山:そうなんですね。
加賀屋:三人一組でやるお囃子なんですけど、下太鼓と上太鼓、それと笛。この3人でお囃子の演奏をします。秒数が決まっていて、その秒数の中で流し囃子と、本囃子を演奏します。竿燈ではですね、本番が始まる前、町を練り歩くときに演奏する「流し囃子」、それから本番の演技が始まってから行う「本囃子」の2つがあるんです。それぞれを決まった時間内で演奏して、ちゃんとリズムに変化がないか、抑揚があるか、音が鳴ってるかなど、そういったところを審査員が見て、ジャッジする。
大山:前回の記事でも、38の町会があるというのをお伺いしましたが、基本は同じ曲、演目を演奏されていても、町会ごとに濃淡といいますか、抑揚の違いがあるのでしょうか。
加賀屋:そうですね。例えば、昔からの町内であれば、独自の節回し、太鼓の叩き具合もちょっと違ってて、「ああこれ昔ながらの竿燈囃子だな」っていうのがありますね。
大山:なるほど。昼間は、そういった皆さんの技を見て楽しむというのが一つの醍醐味なんですね。
笛の合図で一斉に立ち上がる竿燈の美しさ
大山:一方で、夜がまさに竿燈大通りで行事が行われると思うんですが、そちらの様子はどうなっているんですか。
加賀屋:桟敷席や沿道のお客さんが見守る中で、74団体による、合計で280本を超える竿燈が一斉に立ち上がります。
大山:用意スタートでみんなばあっとこう稲穂が立ち上がってくるように。
加賀屋:はい。会長の開始の笛が合図で、お城に向かって並んでいる竿燈が順々に立ち上がっていきます。我々、長年竿燈やってますけども、始まりの笛と同時に竿燈が一斉に立ち上がる瞬間が一番の見どころだと思います。
大山:そうすると今年はまさに加賀屋さんの笛の合図で一斉にお城に向かって稲穂が立ち上がってくるということですね。
加賀屋:はい。そして、2回目の笛で一気に演技が始まります。そこまでの若干のインターバルで、皆さん写真を撮ってます。
大山:なるほど、1回目の笛の合図がまさに写真好きな方にとっては一番の狙いどころ。
加賀屋:動いてない状態ですから。
大山:なるほどなるほど
加賀屋:2回目の笛で演技が始まると、一斉に風の具合で動き始めます。ゆらめいていきます。夜空を焦がす稲穂ですから、七夕の夜にばっちり合います。
大山:大体どのぐらいの時間、皆さん演技を行うんでしょう。
加賀屋:1人で持っていられるのが大体30秒ぐらいが限界ですね。50キロの重さの竿燈を片手で持ち上げるわけですから、いいところ30秒。なかには10秒でやめる人もいて、入れ替わり立ち替わり、町内の選手が交互交互に持ち変えてやるわけですね。大体15分ぐらいで、一旦演技を終了します。竿燈を下ろして、消えていた提灯のろうそくに火を灯して、移動が始まります。大体そうですね、50メーターぐらいも移動しますかね。そして次の町内が目の前にやってくる。
大山:では、桟敷席に座っていると、15分に1回ぐらいの頻度で町会だったり、団体の演武が見ることができるということですね。
加賀屋:全部で3回移動して、終了となります。
大山:夜の部というのは、何時から始まるんでしたっけ。
加賀屋:7時から始まって、8時に終わります。
大山:それを4日間やって、最終日の翌日、8月7日に御幣を先ほどの橋から流すというのが最後の行事ということですね。
加賀屋:そうですね、邪気を吸い取ってもらった御幣を、ありがとうございました、また来年も竿燈まつりができますようにという気持ちを込めて、橋から流します。昔は御幣をですね、麻縄のついた状態で流してたんですけど、今は環境問題がありますので、しっかりと御幣を水に溶ける封筒に入れて、切り刻んでちっちゃくして投げています。
大山:環境を意識しながら、持続的に続くようなお祭りの姿を目指すということですね。わかりました。第3回目の記事でももっともっと竿燈まつりの魅力を深ぼっていきたいんですけど、もう1ポイントほど、竿燈まつりで、ここを見てほしいというものがあれば最後にお伺いできますでしょうか。
加賀屋:そうですね、やはり妙技会の中でも見所となるのが、自由演技。団体規定演技とは違い、どんなことをやってもいいという、派手な技を競い合う競技です。極端な話、継ぎ竹を普通は3本、4本、今でこそ5本、6本が当たり前ですけども、7本、8本継ぎ足して、かなりの重さでしなってくるんですけど、それでも折らないように演技をするというハラハラドキドキ感。
そして、竿燈をおでこに乗せる場合、継ぎ竹の底のペタンとしたところが普通はおでこに乗るんですが、竿燈がそってくると継ぎ竹の角が、点で乗るんです。それをうまく操るのはやはり職人技。演技者のその技量に、もう惚れてしまうわけです。
大山:やはり、秋田竿燈まつりを楽しむのだったら、昼の妙技会と、夜の景色としての竿燈祭りの両方に参加して、一日中楽しむのがおすすめということですね。
加賀屋:夜の演技中は、竿燈同士がぶつかり合って、倒れる場合もあります。そうすると倒れた場合に提灯が燃える場合もあります。その場合はもうみんなで一斉に提灯を踏みつけて火を消すんですけど、そういったところも見どころじゃないかと思います。
大山:ありがとうございます。今年の開催がますます楽しみになってまいりました。第3回目の記事では、知るともっと楽しくなる竿燈まつりの職人技というテーマで、よりディープな祭りの楽しみ方について、また加賀屋さんにいろいろとお話をお伺いできればと思います。