2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2022年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
集落の短い夏の祭り
岩手県八幡平市指定無形民俗文化財の兄川稲荷神社「兄川先祓い」(あにかわさきばらい)は、毎年7月の中旬に宵宮、本祭が行われる。短い夏の夜、太鼓と奉納踊りが行われ五穀豊穣を願う。
「先祓い」とは、祭典の神輿(みこし)行列の先頭にたち、神輿が通る道筋を祓い清めて舞うことに由来する。山伏神楽が変化したものと言われ、かつては田山地区のほとんどの集落で踊られていたが、現在では、岩手八幡平市兄川、曲田(まがた)、田山、折壁日泥(おりかべひどろ)の四つの地区で伝承している。
後継者不足に悩まされる祭りは全国各地にあり、兄川先祓い保存会でも同じ悩みを抱えている。現在の兄川地区は、30数世帯となり後継者問題が大きく地区にのしかかっている。
言い伝えによると地域の祖が兄川地域に宿場ができたことを記念して、兄川稲荷神社の祭典のときに先祓いと杵取り舞を踊ったのがこのお祭りの始まり。兄川先祓いは、刀を持って踊る勇壮なもので、8演目10種。ほとんどが、地元小中学生によって舞われる。
踊りの順序は、デンデコ、ダンジキ、ジャキスコジャン、ジャンジャンジャッキ、田の草取り、カッチョ、立ち車、ヨイサッサ。これは、種まきから稲刈りそして感謝と農作の作業を踊ったもので、響き渡る太鼓の音がなんとも勇壮かつ心に響くのである。
保存会の関貴之さんは「兄川先祓いという地域にある昔ながらの祭りがあることをたくさんの人に知ってもらいたい。そして力強い響きの『大太鼓のぶっこみ』と軽快な踊りをぜひ見てほしい」と語る。
兄川稲荷神社の例大祭は例年、境内での先祓い奉納、大太鼓のぶっこみ、神楽行列が行われる。あまり観光客は訪れない地域のお祭りだ。短い岩手の夏、踊りの物語を感じながら祭りを堪能してはいかがだろうか。