2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
子どもが絶叫、ホラーすぎる奇祭
今回は「見た目がホラー過ぎる奇祭」、愛知県の長松寺で毎年12月に開かれる「どんき」祭りを紹介する。
「どんき」は、火伏の神様である「秋葉三尺大権現」の火防大祭の中で、祈祷の後に行われる行事。青天狗(てんぐ)、赤天狗、白狐の3者が子どもたちを追い回し、捕まえては撞木(しゅもく)という棒を使って顔を紅ガラで塗りたくるという奇祭だ。
紅ガラを塗られた人は、無病息災が得られるといわれている。紅ガラなのでもちろん無害だが、何しろ塗られる方は顔が真っ赤に染まるので、まるで返り血でも浴びたかのよう。
地元の人の話では、元々は火防の祭りの人寄せの余興として江戸時代ぐらいに始まったそうで、全国の秋葉大祭(通常は火渡り神事などを行う)の中でもこんな奇祭をやっているのはここ長松寺だけだとか。
無表情の狐(きつね)面の男たちに追いかけ回される子どもたちの反応もさまざま。狐をからかいつつ、全力疾走で逃げ、競争を挑む男子。狐の男に積極的に話しかけ、コミュニケーションを取ろうとする女子。そしてもちろん、狐たちに追いかけられるのを本気で怖がり、ギャンギャン大泣きする小さな子どもたち。そんな様子は、秋田のなまはげ行事にも似ているかもしれない。
ホラー過ぎるビジュアルに引かれて見に行った「どんき」祭りだが、その恐怖の見た目とは裏腹に、不思議な多幸感に満ちたお祭りだった。ギャン泣きする子どもたちを見守る大人たちの優しい笑顔と地域社会の温かみにあふれているというか。都会とは違い、子どもが好きなだけギャン泣きさせてもらえる空間やコミュニティって何だか豊かでいい。
まだそれほど全国的に知られていない奇祭だが、これから注目度が高まること間違いなし。なお、顔に紅ガラを塗られるのは子どもだけとは限らず、大人の見物客にも一切容赦がないので、その点はご注意を。