2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2022年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
1ヵ月にわたる親睦の儀式
岡山県加賀郡吉備中央町吉川の吉川八幡宮で開催される当番祭は、岡山県指定重要無形民俗文化財にも指定されているお祭りだ。当番祭とは「訪問する最初の祭り」という意味。氏子たちがお互いに訪問し合い、親睦を深めるこの祭りの魅力を紹介したいと思う。
毎年10月第4日曜日は「大祭」の日だ。早朝、「当番」と呼ばれる、地域の男子2人が、神人として着飾った馬に乗って、境内に設置された傅守(もり)と呼ばれる場所に入る。続いて、警固の供人が仮屋に入って行き、そして地域の方たちが順次あいさつに訪れる。
地域の方々がお祝いの品々をもってくるたびに、供人が「お當番・大太刀持・伝守・介添・お手振・脇立・何れもお礼申す」と独特のあいさつを返すのが見どころの一つだ。午後になると、独特な踊りの獅子舞たちが祭りを盛り上げて、どんどん盛り上がっていく。
大祭に先立ち、10月1日に行われる「当番」様を決める方法も独特で面白い。吉川八幡宮を中心に南と北で両親が健在で、10歳前後の健康な男子を選び、当番候補者を印したくじを、三方に置いて宮司さんが釣り上げる。
第3土曜日には「垢離(こり)とり」という儀式が行われる。塩垢離大明神を祭る洞窟の清流で当番以下「みそぎ」を行って潔斉し、両当番が縄を3回くぐる神事を行って、俗界から神界に入ることができるようになる。当番は、垢離とりから祭典終了まで、俗名を呼ばれず、当番様と呼ばれ神人としての役を務める。当番様と当主さんの頭に葉がついていたり、神人は足をついてはならないというルールから、傅守から出るときは肩車をしてもらい移動する。
話は戻って、大祭のクライマックスは、午後2時ごろ。御神幸に出発して、御旅所から当番様、傅守、介添、手振、脇立の順番に走り競べが行われる。境内に戻る時の砂地のカーブは迫力満点だ。
当家(当番に選ばれた家)には、波区芸(はくけ)といわれる、神が降臨する神聖な室があるので、祭りを訪れたら地区をいろいろ散策するのもお勧めだ。