夏の風物詩であり、日本が誇る文化でもある盆踊り。2020大会に向け、今メディアからも大きな注目を集めています。
2018年夏、『EZ BONDACE』や『盆ジョヴィ』など、SNSにも大きな話題を提供した【中野駅前大盆踊り大会】の仕掛け人であり、数多くのTV CMでの振付や出演も行っている、日本民踊鳳蝶流(にほんみんようあげはりゅう)の家元師範・鳳蝶美成(あげはびじょう)さん。そして鳳蝶さんとともに盆踊りの新たな文化創出に向け活動する、日本盆踊り協会の代表理事である矢島友幸さん。
【前編】では、お二人の盆踊りとの出会いや、中野駅前大盆踊り大会に関する話を中心に伺いました。
【後編】では、これからの盆踊りに関して、新たな取り組みや目標などをお話しいただきます。
目次
7. 「遠征は自分自身のアップデート」「エコ盆踊り⁈」「中野生まれの民謡⁈」鳳蝶氏が目指す理想の盆踊りとは?
実はクラブで踊ることが大好きだったという鳳蝶さん。ご自身が考える理想の盆踊りについて語ります。
鳳蝶さん:「実は昔からケントス(銀座や新宿・六本木を中心に店を展開する、生演奏でのオールディーズやディスコサウンドを踊ることができるクラブ)が好きで、盆踊りで実現できないかな、と思ったことも【第6回中野駅前大盆踊り大会】のアイデアとして実現してみました。
また、毎年青森や鹿児島など、各地の民踊を学んで踊っているのですが、これは自分自身のアップデートでもあるんですよね。こうした自分の理想と経験を活かしつつ、東京の盆踊りを盛り上げていきたいと思っています。」
鳳蝶さん:「今やりたいと思っているのは『エコ盆踊り』ですかね。岐阜県・白鳥の拝殿踊りや、郡上八幡の昔おどりなどに通じるところもあるのですが、昔の人たちが楽しんでいたような、電気を使わずにかがり火を焚いて踊る、原点回帰の踊りが東京でもできたら、と思うんですよ。
また、新しく中野で民謡を作りたいと思い、実は動き始めました。あくまで『音頭でなく民謡』。作詞家が作った歌詞でなく、都々逸的な、昔ながらの七七七五調の歌詞で、作曲は中野区。中野生まれの新しい民謡です。踊りは『ドダレバチ』や郡上おどりの『春駒』のような少し激しめでノリやすい、アップテンポ調のものを考えていて、その内にお披露目できるかも知れません。
さらに、生の歌や踊りの要素はもちろん、盆踊りが世界の民俗舞踊と対等に肩を並べ、日本に観光客を誘致できるような観光資源に昇華させていきたい。着物業界も巻き込んで、一つの大きな文化として世界に発信していきたいですね。」
8. 「盆踊りを発展させていくことで、世代を超えた人と人のつながりを生み出したい」盆踊りが新たなコミュニケーションを生むきっかけとなる
「無音盆踊り」や「アニソン盆踊り」など、進化系盆踊りといわれるものを含め、現在様々な盆踊りが話題となっています。とはいえ、盆踊りの根底にあるものは、ある意味アナログともいえる、人の力に支えられる部分が大きいと語る矢島さん。
盆踊りを未来に繋ぐ思いについて伺ってみます。
矢島さん:「自分自身、世代的にはITやAIといったテクノロジーには肯定的な一方、人と人のコミュニケーション、世代間を超えたコミュニケーションというアナログな部分こそ大切にしていきたいと思っています。」
矢島さん:「盆踊りは北海道から沖縄まで、日本のどこでも行われている強力なコンテンツですし、理屈でなく、本能や感覚的にあるべくして生まれたコミュニケーションの手段だと思うんですよ。
お年寄りでも外国人でも誰でも始められる『体験型』のものですし、人との出会いも生まれ、横へのつながりも育むことができる。結果としてストレスのない社会を実現できる、潤滑油のような存在なのでしょうね。
何百年も前の音楽が現在の技術と融合して行われることも面白いですし、盆踊りを発展させていくことで、世代を超えた人と人のつながりを生み出したいって思います。」
9. 盆踊りで目指す未来、新たな時代
今後の活動が楽しみな日本盆踊り協会ですが、矢島さんが「盆踊りの未来」について目標を語ります。
矢島さん:「多くの自治体から、人や資金不足が原因で、盆踊りの継承が難しいという声をよく聞きます。伝統を大事にしつつ、いかに盆踊りに関わり、興味を持つ人を増やす盛り上げ方ができるか、ということが自分の課題だと思います。鳳蝶先生から『着物業界を巻き込む』というお話もありましたが、民俗舞踊としての魅力と、浴衣や着物文化の魅力、双方を巻き込むことで大きな経済効果も生み出せると思います。
北海道から沖縄まで、さらには海外の人も含め、同時に盆踊りができたら素晴らしいですね。例えば『東京音頭』をみんなで一緒に踊ること、ライブビューイングでもできるんじゃないかな。紅白歌合戦や年末年始のカウントダウンのようなイベントでも実現したい。まさに『盆と正月が一緒に来たような』盛り上がるイベントとして(笑)。
もはや盆踊りは夏だけのものでもなく、みんなで浴衣を着て踊るという、新たな文化になりつつあります。
2020はゴールでなくスタート地点。この年以降新たなブームになるべく、多くの業界や企業を巻き込んで、日本の新たな魅力として発信していこうと思います。」
10.盆踊りの基本は楽しむこと!まずは輪の中へ飛び込もう
鳳蝶さんと矢島さん、ともに盆踊りをきっかけとして、日本の伝統を守りつつ、一方では新たな文化を生み出す重要性について、熱い思いを伺いました。
最後にこれから盆踊りを始めようという方へのアドバイスを鳳蝶さんに尋ねます。
鳳蝶さん:「盆踊りの魅力について、一言で語るのはなかなか難しいのですが、まずは単純に『楽しむ』という気持ちが重要だと思います。最初は盆踊りの輪の中へ飛び込むことは勇気がいることかも知れませんが、いざ踊りに参加すると、汗を流しながら踊ることの楽しさに気づくと思いますよ。
鳳蝶さん:「本来盆踊りは民俗舞踊の一つ、人間の本能を呼び覚ますように、魂の赴くままに踊ってみること!
親切に踊りを教えてくれる人もいれば、中には『俺の踊りを見ろ!』というような人もいますが(笑)、上手い下手は関係なく、人に見られる羞恥心を捨てることです。踊りを覚えると次の曲が覚えたくなって、一箇所で踊ればその次の盆踊り、そしてまた他の盆踊り…と、きっと夢中になると思います。
そして東京の盆踊りを始め、ぜひ色々な地域の踊りを体験してみてください。きっと今まで見えなかった、新しい景色が見えてくると思いますよ。
ぜひ一緒に楽しく踊りましょう!」
鳳蝶美成さん、矢島友幸さん、ありがとうございました。
鳳蝶美成(あげはびじょう)
本名:瀧田哲成(たきたてつなり)
公益財団法人日本民謡協会教授、日本民踊・新舞踊協会指導員
日本民踊鳳蝶流 家元師範
6歳より母である石川流教授(当時)千桧香に民踊、舞踊を習う。
高校より演劇をはじめ、日本各地の民舞・盆踊りを指導する日本民踊『鳳蝶流』設立。
CM、TV出演・振付・指導と多方面に活躍。日本大学芸術学部卒。
日本民踊 鳳蝶流
http://ageharyu.com
矢島友幸(やじまともゆき)
一般社団法人日本盆踊り協会代表理事
2003年「東京高円寺阿波おどり」に出会い盆踊りに目覚め、その後「郡上おどり」や「おわら風の盆」等の世界を体験。2016年一般社団法人日本盆踊り協会代表理事就任。
日本の盆踊り文化を盛り上げるべく、公益法人日本民謡協会・鳳蝶美成教授と一緒に活動中。
一般社団法人日本盆踊り協会
http://bon-odori.net
取材・文章・写真:大ちゃん/佐藤智彦
(※印の写真、および鳳蝶美成氏のプロフィール画像:鳳蝶美成氏提供)